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その告白の行く末は


「わっ、私は! カイルくんのことが、好きです!! 私を人生の伴侶に選んでくれっ、くれませんか!?」


 万感の想いが込もった、カレンちゃんの告白。


 全人類が等しくノックアウトされるだろうその愛情を真正面からぶつけられたカイルは――あろうことか返事を待つカレンちゃんを華麗にスルーして、沈黙の支配する部屋の中、事の成り行きを見守っていただけの私の方へと顔を向けた。


「……もしかしてこれってマジのやつ?」


 そうだよ、マジのやつだよ。てめぇカイルまじふざけんなよ。


 一世一代の告白をスルーされたカレンちゃんは見ているだけで心が苦しくなるような顔で必死に涙を堪えている。カイルをぶちのめしたらその顔を笑顔に変えられるかな? 少なくとも私の気分は多少なりとも晴れるだろうね。


「私よりもまずはカレンちゃんに声をかけろ」と殺意に満(幼馴染み流ア)ちた視線(イコンタクト)で伝えると、カイルは今初めてカレンちゃんの表情に気付いたようで、慌てて私に助けを求めて……って、だからこっち見るなっつってんでしょ!? 自分の言葉で返事をしろよこのバカイル!!


 幼い頃、まだ純粋で可愛げがあった頃のショタカイルが「ソフィア〜、なぁソフィアってば〜!」とうろちょろ引っ付いてきた時のことを思い出して懐かしくなったが、今その感情を抱くのは間違っていると断言出来る。私が見たかった純粋なカイルとはカレンちゃん相手にオタオタしているカイルの姿だ、断じて私に縋る情けない男の姿ではない! 私に助けられたかったら最低でも見た目をあと五歳程若返らせてから出直してこいやー!!


「カ、イル、く……ひっく」


「げ」


 挙句泣いてる女の子を見て、その感想……?


 どうしよう、もう私の中でカイルの評価がだだ下がりなんだが。コイツってここまで無神経な奴だったっけ? もう魔法で無理やり人格矯正しちゃおうかな……。


 友人に性格を捻じ曲げるような魔法を使うつもりはなかったんだけど、カイルはもう、いいかな……なんて不穏な方向に思考が流れていたところで「ソフィア様」とひっそり声を掛けられた。いつの間にか傍に来ていたシャルマさんが視線だけで廊下に繋がる扉を示したことで私もその意図を理解した。


 こっくりと頷き、二人揃って忍び足での部屋からの脱出。


 扉が閉まる直前に見た光景は、カイルがカレンちゃんの肩に手を置いて、不器用ながらも慰めているところだった。





「助かりました」


「いえ、この程度のこと。メイドとして当然の嗜みです」


 え、そうなの? メイドさんってすごいね、流石は気遣いの達人さんだねぇ。


 なんて、場違いなことを考えつつ。廊下に出てカイルから離れたことで落ち着いた私は、今回の失敗についての思索を深めていた。


 ……今回の件は、明らかに私の存在が原因だよねぇ。


 カイルにとっての私が、私が認識していた以上に重く意味のある存在だった。そういうことになるんだと思う。


 ……やー、愛されすぎてて困っちゃうね! と、笑って済ませるものなら済ませたいところだけど、そういう訳にもいかないんだろうなぁ。笑ってる間に誰かが解決とかしてくれたら最高なんだけどなぁ、無理だろうなぁ。お兄様へるぷみー。


 思わずここにはいない完璧お兄様に助けを求めたい気分になってしまうけれど、現実はそこまで私に甘くはないと思う。


 ……いやでも、お兄様ならもしかしたら……いやいやいくらお兄様でもここまでの未来予測は……。……お兄様ならば、可能なのか……?


 ――いや、やっぱりナシだな。カイルなんかのことでお兄様に迷惑は掛けられない。


 私が本気で助けを求めたらすぐにでも駆けつけてくれると確信してるけど、だからこそ助けなんて求められない。私はお兄様に迷惑を掛けるだけの妹じゃないんだからね!


「シャルマさんはあの二人、上手くいくと思いますか?」


 こっそり室内の様子を把握する限りにおいて、思ったよりもかなりムードは良いように思う。なだめるカイルと慰められてるカレンちゃん。カイルがその気にさえなればこのまま間違いだって起こりそうな雰囲気。


 まあ流石にヘレナさんを追い出してまで提供してもらった部屋でそんなことまでさせるつもりはないけど、なら逆に、どこまでなら進ませてもいいのだろうか。キスまでならありかな? 多分そこが限界だよね?


「私はあのお二人の関係についてそれほど詳しいわけではありませんが、相性は良いように見えましたよ」


「ほう、ちなみにどんなところが?」


 うっかり突入した下世話な想像を思わず中断してしまうくらいにはシャルマさんの話に興味を引かれた。いい人聖人であるシャルマさんにあの二人はどんなふうに見えてたのだろうか。


 私が前のめりになって質問すると、楽しげに肩を揺らしながらそう感じた理由を話してくれた。


「ふふっ、そうですね。例えばあのお二方は、ソフィア様が突拍子もないお話をされた時などには同じような表情をされていることが多いように感じますね」


 クスクスと楽しそうに笑うシャルマさんが天使すぎる。っていうか、突拍子もない話ってどれのことだろ……?


 ……同じような顔、ねぇ。


 まあ気遣い上手のシャルマさんがこれだけ楽しそうにしてるんだから、最悪の事態になる可能性は低いと考えていても良さそう、なのかな……?


カイルへの怒りを募らせることで、カレンとの関係悪化の可能性に気付かないふりをするソフィアちゃん。

ソフィアがシャルマさんのことを「地上に舞い降りた天使かよ」と大絶賛している裏側で、シャルマさんもソフィアのことを「ただでさえ可愛らしい方なのに……ッ!」と悶える程の愛情を向けていたりするようですよ。

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