表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1322/1407

次なる段階へ突き進め


 ここ最近、学院に来る度カレンちゃんをカイルの元に差し向けていたら、遂にカイルから取り調べを受ける羽目になってしまいましたとさ。


 そこは普通お礼じゃないのかなって、ソフィアさんは思うんだけどなー?


「いい加減、カレンをけしかけてくるのをやめろ。お前今度はなに企んでるんだ?」


「企むだなんて人聞きの悪い。もちろんカレンの幸せを考えてるよ?」


 それ以外に何かあるかなぁ? と小首を傾げて見せるも、カイルはものすんごく胡散臭い目になって沈黙するのみ。欠片も信用してないみたいだった。


 うーん、確かに私の信用が無いから信じて貰えないのは分かるんだけど、あれだけ照れ照れカレンちゃんに構われてるのにまるで好意を感じ取れないってのはどうなんだろう。カイルも最近は随分と塩対応するようになってきたよね。頑張ってるカレンちゃんが健気すぎて泣きそうになるよ。


 傍から見てると完全に「好きな男の子に頑張ってアピールする女子」なんだけど、なんでカイルはほんの少しも靡かないんだろ。


 ……やっぱり私か? 私の存在が問題なのか?


 男同士で話してる時に「カイルばっかりモテてずりぃいいい!!」ってカレンちゃんの行動が話題に上がることもあったけれど、「あれはソフィアの遊びに巻き込まれてるだけだ」って軽く一蹴してたからね。クールなフリして、内心では大喜び……ってパターンもあるかと思ってたんだけど、この様子を見るに完全に私の策略であると頭から疑ってかかってるみたい。この誤解をとかないとこれ以上の進展は望めないか。


「んー……、ここから先はカレンの承諾がないと話せないから、続きはお昼の時でいい?」


「……分かった。それでいい」


 お? 今ホッとしたね? 今あからさまにホッとしたよね?


 それってつまりカイルにとって、カレンちゃんにくっつかれまくる現状は緊張することだという認識でいいんですよね? なるほどなるほど、なるほどなー。


 これは次の段階に入る時が来たのかもしれない。


 次なる展開を頭の中に思い浮かべ、私は密かに笑みを浮かべる。


 ……が、どうやらその姿を見られていたようで。これみよがしな大きな溜め息がカイルの口から吐き出されたのだった。


 あいや失敬。でも別に悪いこと考えてたわけじゃないんですよ?


 心配しなくても悪いようにはしないから安心しなって!! むしろ昼には私に感謝することになるんじゃないかな!?



◇◇◇◇◇



 ということで、やって来ましたヘレナさんの研究室。


 前もってお知らせしていた為に着いた時には既にお茶に軽食とお昼の準備が万端全て整っていた。これだからシャルマさん大好きなんだよ……!


「ようこそお越しくださいました。本日は場所を提供して欲しいとのことでしたので、ヘレナ様には外食をお願いしておきました。どうぞ気兼ねなくこの部屋をお使いください」


「お気遣いありがとうございます。今度お礼の品を持ってきますね」


「シャルマさんお手製のご飯だわーい」と有頂天になってた私は、返事をする頃にはすっかり普段の調子に戻っていた。もしかしたら普段より冷静まであるかもしれない。事前の連絡をしていたとはいえ、正直ここまでしてくれてるとは思ってなかった。


 これってもしや、私のせいでヘレナさんが自分の研究室を追い出されたってこと? いやいや、ヘレナさん大好きなシャルマさんに限ってそんなことは……偶々外食の気分だっただけだよ、きっとそうだ、うん、多分そのはず……!


 表向き冷静さを保っていた私にカイルから「お前マジで自分の発言力自覚しろよな……!」とマジ目に叱られてしまったが、過ぎてしまったことは仕方ない。ここは好意をありがたく受け取るのが正解だと思う。


「さあ、せっかく用意してもらったんだからご飯を頂きながら話をしようよ。カイルもカレンの行動の謎、知りたかったんでしょ?」


「どーせお前が余計なこと言っただけだろ……」


 本当に信用がないね。

 まあ忠義心の厚いシャルマさんに、主を追い出してまで研究室を提供させてしまった私が信用云々(うんぬん)と言える立場でもないんだけどね。


 それでもこれだけ「何もかもソフィアが悪い」と決めつけられていると、私からの言葉は何も聞きいれて貰えない可能性もある。


 まずはカイルの接待から始める必要があるかなーと時間の使い方を計算していると、思わぬ人物から声が上がった。


「あああ、あのっ、カイルくんっ!」


「ん?」


 カレンちゃんだ。カレンちゃんが自らの意思で行動を起こした。まさかここで一気に決めちゃうつもりなのか……!?


 強く引き締められた唇。緊張のあまり震える身体。


 身体ごとカイルの方へと向き直ったその姿は、私の目には、もう告白する決意を固めた乙女のようにしか見えなかった。


「ソフィアは何も悪くないのっ。私がお願いっ、を、……してっ! えと……そ、そのっ!」


 つっかえつっかえ、しかしその分だけ真剣さが伝わる声音で、必死に何かを言おうとしている。


 カイルも表情を真面目なものにして、聞き入る体勢に入ったところで――カレンちゃんの勇気が炸裂した。


「わっ、私は! カイルくんのことが、好きです!! 私を人生の伴侶に選んでくれっ、くれませんか!?」


「……なんで私が、自分の居場所を追い出されないといけないの?」

「なんでと申されましても……まさかソフィア様にどれだけの恩があるのか覚えていないなどとは言いませんよね?ただでさえソフィア様には一族をあげても返しきれない程の多大なる恩があるというのに、ヘレナ様はソフィア様の持ち込んでくる希少な素材を何も考えずに受け取ってしまう為に更なる――」

「なんだか急に外で食事をしたくなってきたわね!」

というような会話があったみたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ