表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1320/1407

小さい方が良いって言ったよね?


「そっかそっかー。カレンが遂に頑張るのかぁー、ようやくかぁー。……で、ソフィアはそれを応援してるの? え、なんで?」


「むしろソフィアこそ頑張んないとでしょ。なんで応援する側に回ってるわけ?」


 ノリよくカレンちゃんの恋愛話に釣られて来たはずの友人達が、次の瞬間には何故か私をターゲティングしていた。そんなん私が応援したいからに決まってるよね。


「何が言いたいかは分かるけど、私は誰とも結婚する気ないから。ならカイルの相手はカレンが一番お似合いかなって」


「いい子ちゃんか! いやソフィアはいい子ちゃんだったわ!!」


「……それ本気で言っているの? 誰とも結婚するつもりが無いって……何の為にそんなに可愛く産まれてきたと思ってるの!? 使わないならその可愛さを私に頂戴!?」


 なんか滅茶苦茶なこと言われてるんだけど、なんだろうこれ。ツッコミ役が自分の役割放棄しちゃめーでしょ、誰もツッコミ役がいなくなくなるじゃん。


 僅かな期待を抱いて周囲を見回したものの、彼女を止めるに足る人物はいなかった。結局謎の突っかかり方をされてる私自身が止めるしかないらしい。


 ……普通の言い方で止まるかなぁこれ。


 悩んだ末に、話に乗っかりつつ落ち着かせる方法を考えてみた。


「それって私みたいになりたいってこと? 数年前から身長も体形も変わってないけど、本当に私みたいになりたいの? 本当に?」


「女の子なんて小さい方が可愛いに決まってるじゃない!」


 念押しまでしたのに興奮した彼女には正しく意図が伝わらなかったようだ。


「小さい」という言葉にイラッとした訳では決してないが、充分以上に可憐な容姿と年齢に見合わない豊かな肉体を併せ持ったハイブリッドお嬢様の無自覚さにはヘドが……こほん。自分がどれほど恵まれているのかを全く自覚していない言葉を耳にして、羨む気持ちが勢い余って漏れちゃったらしい。自分でも「失敗した」と思ってしまう程度には、確認の言葉に暗い感情乗ってしまったことを自覚していた。


「――本当に?」


「っ、!? ……」


 いや待って、違うの。違くないけどそうじゃないの。


 今のは胸を見ていた訳じゃなくて、こんな負の感情を込めた視線を向けるのは良くないかなーって避けた先に偶々胸があっただけなの。決して「さぞかし自慢だろうその豊満な胸が私みたいなぺたんこになっても本当に後悔しないのか?」って意味で言ったんじゃないの、私にだって胸くらいあるから。限りなく薄いだけでゼロじゃないから。限りなくなだらかではあるけどこれでもちゃんと傾斜があって山頂だってあるんだからねッ!?


 内に引っ込めた感情が「黙ってないで何とか言えやオラァーッ!」と叫んでいるが、なんとか言われたら私が間違いなく傷付くのでどうか落ち着くまで待っててもらいたい。

 というか本当にそう勘違いをされてたとして、判断を悩むように急に沈黙したのが何よりも解せない。女の子は小さい方がかわいいに決まってるんじゃなかったの? その理論で言えばソフィアちゃんは文句なくかわいいだろうが、おおん?


 相方さんもさ、いつもはもっと元気だよね? あることないこと騒ぎ立てちゃうくらい元気いっぱいだよね? なんで私が顔を向けると視線逸らすの? あと今、私の身体のどの部分を見ていたのかなあ? どんな意図を持って見つめてたのかなぁ? ねぇ??


 カレンちゃんに至っては「フォローしなくちゃ!」って気配をビンビンに感じるんだけど、別に私、フォローされなくちゃいけないようなことなんて一切ないからね。


 私はただ「本当に私みたいになりたいの?」って聞いただけだから。そりゃ私は自分のことが大好きだけど、だからといって「私以外の女の子はみんなクズ!」とか思ってるわけじゃないから。人には人の良さがあるよね。


 だからね? 私は別に、なにかに怒っているわけではないんだ。


 それなのになんで目の前の彼女は「失言した……っ!」みたいな顔してるのかな? 私にはそれが不思議でならない。


「ねぇ、何で黙ってるの?」


 改めて問うと、何故か一歩後退りされた。


 なんでや、ソフィアちゃんの上目遣いはかわいいでしょ?

 その反応は地味に傷つくんですけど。


「…………小さい方が好きって人も、世の中にはいるから。諦めるにはまだ早いと思うわよ?」


「相手がいないから結婚しないんじゃなくて、結婚したくないから結婚しないって言ってるだけなんだけど。諦めるってどういう意味?」


 ………………。


 異様な沈黙が場を支配する。


 気付けば周囲の喧騒すらもいつの間に聞こえなくなっていた。うーん、空気が重い。


「あちゃ〜、やっちゃいましたなぁ」


 やっちゃいましたなぁじゃないよ、やっちゃいましたなぁじゃ。こんなん晒し者じゃん。私の薄い胸が痛んじゃうよ?


 自虐してみたものの、そんなことで気分が晴れるはずも無く。


 微妙な空気が漂う教室の中で、私は一人、大きく溜息を吐くのだった。


「カイル。お前あれどうにかして来いよ」

「嫌に決まってんだろ……。なんで俺が」

「小さい方が好きなんだろ?」

「おいバカやめろ。お前そういう事ばっかり言うからソフィアに嫌われてるんだぞ!?」

「何焦ってんだよ……。この距離で聞こえるわけないだろ?」

「いや間違いなく聞こえてるから。おいソフィア、俺は何も言ってないからな。報復するならコイツだけにしろよ」

「な、なんだよ急に……。そんな冗談……え?まじなの?……いや、嘘だろ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ