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その大船は自重を知らない


 私の考えをお母様に話したところ、「魔物を飼おうとする人など普通はいません」と呆れられてしまった。


 でもそれ以外に魔物が湧かなかった理由思いつかないし。いると思うんだけどなあ、魔物飼ってる人。


 少なくとも、「実は喪神病も意図的に引き起こされたもので、試験会場の地下では今も人知れず生み出された強大な魔物が秘密結社によって管理されているのだっ」な展開よりはよっぽど有り得ると思う。でも陰謀論っていいよね、夢があって。


 ともかく、ここでお母様と考えたところで真実が分かるでもなし。


 喪神病の副次効果のことはおいといて、私の関心はお兄様にあるわけです。


 いつも影から日向から、私を支えてくれるお兄様。

 そのお兄様が何かに思い悩んでいるというのなら、このソフィアが! お兄様の愛するソフィアがっ! 相談に乗ろうではありませんか。


 お兄様のためだったら自重してる魔法だって解禁しちゃうよ。全力サポートするから大船に乗ったつもりで任せてね!



 というわけで、お兄様の心の安寧を取り戻す策を練ってみた。


 可愛らしいお洋服で着飾り甘える。

 運動をして気を紛らわす。

 楽しくおしゃべり。

 一緒にお料理。

 添い寝。


 ううむ、どれもピンと来ない。というか私の願望が優先されてる気がする。


 お兄様は優しいから、私が喜ぶことを一緒に喜んでくれるんだよね。だから自然と私の趣味寄りになるというか。お姉様が家にいた頃は女比率も高かったわけだし。


 あれ、ひょっとして私、お兄様の趣味を知らない?

 いや待て、そんなはずは……。


 ええと、うーん………………私の観察かな! もしくは勉強!


 お友達と出かけたりもしてるみたいだけど、うきうきわくわくー! って感じでもないし。かといって嫌なら拒否する人だから、楽しんではいるんだろうけど。

 よくよく考えるとお兄様って結構謎が多い人なんじゃなかろうか。



 結局有効な策は思いつかなかったから、とりあえずお菓子焼いて少しだけ髪を弄ってみたりなんかして、「お兄様が心配なんです」って素直に打ち明けてみた。


 心配事があるなら聞くけど、身近な人が優しくしてくれるだけでも心が軽くなったりするからね。


 ツインテールな妹が心配してくれるなんて諸兄が血涙流すくらいの幸運なんだよ?

 だから、実はちょっぴり相談される自信あったのに。


「ありがとうソフィア。心配かけてごめんね」


 でも大丈夫だから。とやんわり拒否されてしまった。


 ……じ、地味にダメージ受けてるけど、我慢だ。


 今にも崩れ落ちそうな見事な反撃食らったけど、お兄様が平静さを取り繕う助けにはなれたんだから後悔はない。後悔はないけど心は痛む。


 私の目的はお兄様を普段のお兄さまに戻すこと。その観点から見ればミッションは無事に成功したといえる。少なくとも外見上は解決だ。そのために必要な痛みだったと思えば安いもんさ!


 腹案としてここでぶわっと泣き出して無理やり聞き出す手もあったんだけど、それは堪えた。


 ……だってお兄様が聞かせたくなかったみたいだからぁ! 聞けないじゃん!


 でも悩みの根本はお兄様の中に残ったまま。どうしよう、もう禁じ手使おうかな。でも知られたくないのを無理にというのも……でもでも、もし一人で抱え込んで家出とか、もしかしたらそれ以上の最悪の展開だって……!?


 ごめんなさいお兄様。ソフィアはこれからお兄様の望まぬことをします。できるなら、お許しになってくれると嬉しいです。


 心の中で謝って、自ら人にかけることを禁じた魔法《読心》を、お兄様に使った。

 お兄様の心の声が、頭の中に直接響いてくる――。


「(いざとなれば王子くらいどうとでもなるか。それでも王を抑える為には手駒が少し……いや、念のために姉さんにも連絡を取って――)」


 ……なんか、思ったのとは違う不穏さに思わず途中で切ってしまった。


 どうしようこれ。

 お兄様が黒い。こんなの知りたくなかった。そりゃこんなこと考えてるなんて言えるわけないよね。

 やっぱ《読心》は人になんて使うもんじゃないわ。


 ………………よし。禁呪には禁呪だ。


(五分前から今までの私の記憶、なくなーれ♪)


 不都合な現実を見なかったことにする魔法を使い、私は意識を失った。


恐るべき威力故に、自らも使うことを禁じた魔法、禁呪。

その禁はソフィアの気分次第で解かれる。

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― 新着の感想 ―
[一言] そして禁呪指定したことも忘れてしまうと。
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