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記憶の消去はポポポポーン!


 うーん、キリがない。


 何度考えたって結論は変わらない。捜そうと思えばいつまでだって捜すことが出来る。


 ただこれ以上時間を掛けたところで事を成せると思えないことだけは事実だった。


 あからさまにしょんぼりしちゃった唯ちゃんの為に改めて考えてみたけど、やっぱり無理なんだよなぁ。方法が無い。


 三日も飲まず食わずでいればそろそろタイムリミットも近いだろうし、手当り次第でもなんとか……と思わないことも無いのだけれど、その手当り次第が有効でない可能性さえある。この事実に気づいた時は衝撃的だった。まるでダイスを振れば確実にゴールに近づくスゴロクをしていたと思ったら皆はビンゴゲームをしていた時くらいの衝撃を受けたね。もちろん、そんな経験をしたことなんて無いんだけどね。



 後ろ髪引かれるような感覚を無理やり抑え込み、なんとか撤収の準備を始める頃には唯ちゃんもある程度落ち着いたみたいだった。唯ちゃんの代わりにやけ食いしたのが功を奏したのかもしれない。


 久々に食べた様々なフレーバーのポテトチップスは、思わず感嘆の声をあげてしまうほどに美味しかったです。


「それじゃあ後片付けしてくるからここで少し待っててね」


 と唯ちゃんひとりを白い世界に残し、私と松田さんは日本へと帰還。


 未だ眠り続ける人達を前にしてしばし与える罪の重さを考えると、とりあえずこの建物内にいた人達全員の記憶をサクッと削除。直近の記憶だけは確実に消えるように丁寧さよりもスピードを重視した結果、数十人いた昏睡者の処理になんと十五分も掛からなかったのだから驚きだ。


 私って凄くね? いや、これは確実に凄いと言えるわ。ちょースゲー。


 時間掛けすぎると思い詰めた唯ちゃんが取り返しのつかないことを考えるかも……? なーんてことを考えちゃったから出来るだけ急いだ結果ではあるが、我ながら効率化が神がかってた。記憶の表層を探り当てるのに一人当たり三秒くらいしか掛からなかったもんね、うふふうふふ。


 まあその後の記憶処理もスピードのみを重視した結果、人によっては数年分くらいの記憶がまるっとトんじゃったかもしれないけれど、そんなのは私にとって些細な事だ。次回私達が来た時に余計な対策さえ立てられなければそれでいい。


 となれば残る問題は、世界間を繋げてるこの立派な穴なんだけどー……。


 これは正直、私の手には余るというか。

 魔力で隠してもどーせすぐに解けるっぽいし、白い世界の側から入り口塞いどけばとりあえずはそれでいいんじゃかな? 魔力と物理の混合で塞げばそう簡単には入れないでしょ。


 そんな軽い感じで日本でやることをちゃっちゃと済ませ、唯ちゃんの待つ白い世界へと戻ってきた。


 半ば予想していたことではあるが、テーブルの上に出しといたお菓子は何一つ減っていな……あ、ドーナツが減ってるかな? 食べる元気があるなら大丈夫そうだね。


「あとは入口を封鎖してっと」


 お菓子が山と積まれたテーブルからチョコデニッシュの入った袋を拝借しながら作業を進める。


 魔法の発動に必要なのは思考と魔力くらいなので、菓子パンを食べながらだって作業が出来ちゃう。私の無詠唱魔法はきっと別のことをしながらお菓子を食べる為に使えるようになったんだろうね。


 そんな阿呆なことを考えながら、魔法で生成した土でドサドサっと小山を作り魔法でガッチリ補強した。これで今度こそ向こうの世界からの侵入は出来ないと思う。……流石にミサイルとかぶちこまれたら壊れるけどね。


 向こうの世界と違ってこちらの世界は魔力自体は潤沢だ。《探査》や《千里眼》のような大気中の魔力を利用するもの以外であれば普通に発動させることが出来るし、何より適当に放出した魔力が拡散しないのが素晴らしい。魔力をたっぷり注ぎ込んで強化した小山なんてその柔らかそうな見た目に反してスコップを弾き返す強度すら得られただろう。その勇姿を見られないことが残念にすら思えてしまう。


 ……しかし、そうか。そうだったね。ここでは魔力が勝手に解けないのか。


 ここでなら《睡眠》の魔法を固定化して罠のように配置することも可能かもしれない。それどころか、魔法で作った壁や天井が半永久的に保てるかもしれない。


 やばい、この白の世界をダンジョン化出来ることに気付いてしまった。


 そういえば唯ちゃんも前に別の環境を構築したりとかしてたんだったか。

 あれは投影……幻覚のようなものだと思ってたけど、実は環境自体を変化させてたのかもしれない。そうか、ダンジョンの片鱗は既に初邂逅の時には見せてもらってたのか……。


 侵入者を撃退するダンジョンの作成とか、はたまた地形や環境を好きに変えられる空間の作成とか、ハチャメチャに心が躍るんだけど、今は唯ちゃんの心のケアが最優先だ。ここにはまた好きな時に来ればいい。焦る必要なんてどこにもないんだ。


「それじゃあ、帰ろっか。リンゼちゃんもきっと唯ちゃんが帰って来るのを待ってると思うよ」


 なんて言ってみたりして。


 湧き上がる欲望を捩じ伏せて唯ちゃんを促せば、唯ちゃんは可愛らしく私の手を掴んだまま「はい……」と控えめな反応を見せた。まだ落ち込んでる唯ちゃんには悪いんだけど、ぶっちゃけ滅茶苦茶可愛いでごわす。


ソフィアは真面目な顔をしている時ほど不真面目なことを考えています。もちろん不真面目な顔をしている時はより巫山戯たことを考えています。

……あれ?真面目の時間どこいった??

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