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研究員マツダの罪業


 さて。


 松田さんの情報により、唯ちゃんの父親が謎装置を携帯していることについては知ることが出来たが、その情報はぶっちゃけ今は必要なかった。それ持ってるからって見つけやすさ変わんないでしょ。


 てゆーか散々「もしも魔法が無力化されたら……」って考えてた私も私だけど、冷静に考えたらそのナンタラ装置は現在手放してる可能性も高いんだよね。どんな形状の装置かは知らないけれど、彼奴の白衣は現在私のアイテムボックス内に投棄されてる。あの白衣のポケットには入れてなかったので実はまだ持ってました〜、なんて可能性はどの程度あるのだろうか。


 まぁなんにせよ、まずは本人を確保しないことには始まらないのは確かである。


 上半身を突っ込んで適当に手を伸ばしてもダメ。唯ちゃんの超感覚でも見つからない。


 その上魔力にも頼れない……となれば、残るは正攻法によるゴリ押しのみ。

 具体的には、ロープを繋いで探索距離を稼いだ松田さんを世界の狭間に投じて目的の人物が見つかる(ヒットする)のを期待する、これ以上なく運頼みな一本釣り漁法である。


 ……何故松田さんを使うのかって? そこに松田さんがいたからさ。


「え? 俺が行くんですか?」


「そうだよ?」


 私がこの作戦概要を説明すると、松田さんは渋るような態度を見せた。意図的に省いた世界の狭間に投じられるという危険性について、持ち前の頭脳で気付いたのかもしれない。


 まあ気付いたところで私の言うことは変わらないんだけどね。


「まさかとは思いますけど……松田さんは私や唯ちゃんをあの中に放り込んで大変な作業を任せるつもりだったんですか? 唯一の大人なのに、可愛い女の子に危険なことをさせるんですか?」


「やっぱり危険なんだ……。ちなみにどの程度危険なのかな? なんて……」


「命綱が切れたらあの空間から二度と戻れなくなるくらいですかね」


「……………………」


「…………?」


 急に黙り込んだのを不審に思い顔を覗き込んで見ると、松田さんは白目の剥いた顔をアヘアヘさせてトリップしていた。そこまで怖いこと言ったつもりは無いんですけど?


「あの。そんなに怖がることですか?」


「そりゃ怖いよっ! あんなとこに一生閉じ込められるかもって考えただけで……うぅぅっ!」


 頭を抱えてブルブルと震えているけれど、それと似たようなことは既に唯ちゃんが経験済みだからね? しかもそれやったの、君たちの主任さんだからね? そこんとこきちんと理解してる??


「この白い世界に閉じ込められた現状と変わりなくありません?」


「ここには君たちがいるじゃないかっ!!」


 あー、もしかして私らがこの世界の住人だとでも思ってんの? 用が済んだらこんな何もない世界すぐに出てくよ、当たり前じゃん。


 目的を済ませたら私達も去る予定だということを伝えると、松田さんは「見捨てないでっ!」なんて言いながらどさくさに紛れて私の足にしがみつこうとしてきたので、容赦なく地面とのキスを強制してやった。全く、なんで人ってこうも調子に乗りやすいのかね。踏んづけたせいで靴の裏が汚れちゃったじゃん、《浄化》しなくちゃ。


 浄化ついでにポイポイと魔法を追加して松田さんの身体を拘束してみた。


 地面に這いつくばった松田さんは拘束から逃れようともがきながら「嫌だぁ、死にたくないぃ……。俺も天国に連れてってくれよぅ……」と鬱陶しく泣き喚いていた。だから私らは天界から来た天使じゃないっつーの。


「あ、あの、ソフィアさん……」


「なぁに?」


 返事をしただけで唯ちゃんにビクッとされてしまうのも全ては調子に乗った松田のせいである。コイツマジで世界の狭間に放り込んた後に挽肉にでもしてやろうかな。


「もしお父さんが見つからなくても、その人は助けてあげてくれませんか? 私にはその人が、どうしても悪い人には思えなくて……」


 ……あぁ、はい。成程ね。《読心》が無いとそういう風に感じちゃう訳だ。


 私だって松田さんは適度な悪意を持っただけの人間で、決して極悪人ではないことは承知している。でもね、その「普通の悪人」がどんな悪事を働いたかが私にはとても重要なんだ。


「唯ちゃんはこの人がいた研究室に女の人が飾られてたのは知ってるよね」


「それは……はい」


 女の人と言うか、私だ。元の世界で高校生になるまで生きてきた私の身体だ。それが素っ裸に剥かれて男共の巣にご丁寧に飾られていたんだ。ハーバリウムじゃないんだぞふざけんなクソ共と声を大にして言いたい。つーか見たやつの目ん玉揃えて焼き潰したい。……たとえそれ程の価値がある裸体でないとしてもだ!!


「この人もそれに加担していた一人です」


「え!?」


 加担というか、喜んで鑑賞していただけっぽいけど。


 囚われの少女を救い出そうともせず、役得として眺めていただけでも私にとっては同罪だ。約束通り日本に送り返した後に共犯者共々人体実験の刑に処するつもりでいた。


 四つん這いになった松田さんは一言の反論も出来ずに、ただ極度の緊張で心臓の鼓動を早めている。


 たとえ口には出さなくてもね。その余分な思考で、私にはぜーんぶ筒抜けなんだよ? 知りたかった復讐相手を教えてくれてありがとうねぇ?


 松田さんの思考から得た、下衆な視線で私の裸体を眺めていた面々。


 そいつらにも報復が出来る機会が近付いているかと思うと、私もついつい笑顔になっちゃう。一体どんな報復をしてあげようかなーって、考えてるだけでも楽しいよねー♪


ソフィアちゃんは小学生の時に借りパクされた百円を高校生になっても覚えているタイプです。

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