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研究者って戦ったら弱そう


 しばらく粘っていた唯ちゃんだったが、今回は超感覚は発揮されなかったらしい。何も手掛かりが見つからなかったことにしょんぼりしていた。


 落ち込んでる唯ちゃんも可愛いんだよなぁ……ではなくて。


「松田さん。彼女の父親と別れた時の状況をもう一度詳しく教えてください」


 たとえ最終的には見つからないにしても、少しでも見つけられる確率を上げるために努力すべしと発した質問に、松田研究員はまさかまさかの驚きの返答を吐いてよこした。


「……え、ええぇえっ!? そっちの子、主任の娘さんだったんですか!?」


「……言ってませんでしたっけ」


「聞いてませんよォ!!」


 そうだったか。でもそれを知らなかったからって質問の答え変わらなくない? はよ答えぃ。


「松田さんって本当に役に立たないんですね」という感情をたっぷりと込めた視線で見つめ続けていると、何かを察した松田さんはうーんうーんとこれ見よがしに思い出しているアピールを始めた。日本人のこーゆー空気読む能力って素晴らしいと思う。


「うー、詳しくって言われてもなぁ……あの時はオレも必死だったし……」


 何故かちらっと私の方を見てきたので、変わらずに冷めた視線で見つめ続けてあげた。「役に立たないなら捨てちゃおうかな……」という思念を送ることも一瞬考えたけれど、それは考えるだけでやめてあげた。


 だが私が不穏な考えを起こしたことだけは伝わったようで、松田さんは怯えたようにより必死さを増して記憶を漁るのに没頭し始めた。その様子を見ていた唯ちゃんに私が責められるような視線を向けられたけど、待って、違うの。私は別に強制してないから。これは松田さんが唯ちゃんの為に自主的に頑張ってくれてるだけなんだよ?


 だから唯ちゃんからもお願いすると、ひょっとしたら何か思い出してくれるかもね? というようなことを伝えると、唯ちゃんは控えめに「あの……お願いします。あなただけが頼りなんです」なんてことを言い始めた。私が勧めたこととはいえ、それはちょっとサービスが過ぎるのではないかと思う。


 唯ちゃんに可愛らしく頼られた松田は案の定、鼻の下を伸ばしてデヘデヘしていた。これで有益な情報がゼロだったら記憶がトぶまでビリビリしてやる。覚悟しろよ。


 ビクッと振り向いた松田さんの視線と私の視線がぶつかり合う。探るような視線に微笑みを返してあげると「ひっ!?」なんて悲鳴をあげて逃げやがった。失礼なヤツ。


「あっ、あーー! 思い出しましたよ!! あの日は主任、たしか『魔力分析装置』を持ってたはずです!! それを探してみるのはどうでしょうか!?」


「魔力……」


「分析装置?」


 図らずも唯ちゃんとの共同作業を成し遂げてしまった。気分がほっこりと急上昇した。


「なんですかそれ?」


「なんでも魔力の構成を解き明かして代替エネルギーに変換できる装置とか言ってましたよ。変換効率は最悪だー、みたいなことも言ってましたけど、そもそも魔力? の存在さえ証明出来ていなかったので、みんなで主任の戯言(たわごと)扱いしてましたね」


「へー」


 部下からの信頼ゼロなのか。流石は異世界に実の娘を送り込む狂人ってところなのかな。


 私としてもその装置は戯言で済ませて欲しいところだけど、何かに突出した人物ほど優れた才能を有していることは経験則から知っている。その魔力分析装置なるものも、きっと玩具では済まない影響力があるに違いあるまい。


 ……この白い世界と地球との間に置いといた魔力塊。


 あれが無くなってたのがその魔力分析装置のせいだとしたら、私達の魔力も無力化される可能性があるとみていた方がいいだろうね。パクっておいた拳銃の使い所かな? いや、慣れない武器を使うくらいなら扱い慣れた木剣を使った方がまだ勝率は高いかもしれない。視覚的な威嚇効果は比べるまでもないだろうがね。


「松田さんは私が木剣持ってたらどう思います?」


 念の為に手頃な大人に確認すると、予想と大差ない反応が返ってきた。


「へ? 急になに? 木剣? 女の子は木刀とか興味無いと思ってたけど、なに、ソフィアちゃんはそういうの好きなの?」


 いや別に。むしろ木剣を向けられることには嫌悪感すらある。これは完全にミュラーのせいだろうね。


「じゃあ拳銃持ってたらどう思います?」


 先程と同じようなトーンで聞いてみたら、今度は「え、拳銃!?」と目をひん剥いて驚かれた。やっぱりこのくらいの差は出るよなぁ、どうしたものか。


「拳銃かぁ……。いやぁ、小さな女の子がそういうのを持つのは……あ、ひょっとして女優に憧れてるとか? 俺もセクシーな怪盗とか好きだったなぁ……」


 一緒にすんなと言いたいところだけど、悲しきかな、私もそーゆークールな女優さんは好きな方だ。悪人ぶちのめすのがスカッとするよね。


 ……そっか。よくよく考えたら多少魔力が抑制されたところで大した問題は無いのかもしれない。


 魔法が使えなくなる不安は大きいけれど、相手も戦闘のプロじゃないしね。研究室のボスってそれもやしのボスはもやしってことでしょ。非魔力依存条件下での持久走でも普通に私が勝つんじゃないかな。


 そう考えると、なんか急に楽勝な相手だって気がしてきた。


 唯ちゃんの父親に会ったらとりあえず魔力が使えなくなる可能性に気をつけながら、抵抗の意志を無くすまでボコそうと思う。


 心ゆくまで勧善懲悪する為にも、まずは悪人を見つけることから始めないとね。いったい何処に消えたのやら……。


新たな情報を聞いて「よし、それを手掛かりに捜索しよう」ではなく「その武装に対抗するにはどうしたらいいか……」を考えるあたり、ソフィアも戦闘民族の思考に侵食されている兆候が見られますね。

そんなだから喜んで戦いを挑まれるんでしょうね。

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