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見つけた手掛かり


 唯ちゃんの指し示す方向へと近付いてみれば唯ちゃんの感覚が確かだったことが証明された。誘導されるまま地表に近付くにつれ、白一色で構成された世界の違和感が徐々にハッキリと見えるようになった。


 ……唯ちゃんの視力パねぇー。


 魔法で強化してる私の上を行くとかすんごいよね。

 私は今、人が限界を超えた様を目の当たりにしたのかもしれない。


 私の注意力では違和感に気付くことは出来なかったが、ここまで来ればもう私にだって分かる。


 ――白だ。白い世界に生じた微かな違和感。埋め尽くされた白とは異なる白が、あそこにポツンと存在している。


 ……私ね。実はこのシチュエーションに覚えがあるんだ。あそこに落ちてる人間大の白が何か当てたげよっか? 白衣だよ。


 どーせまた手帳とかスマホとかがポケットの中に入っていて、そこには「北に五百歩、東に三百歩進め」とか書いてあるんだろ。そんで指定された場所には次のヒント付きの白衣が落ちてんだろ。おちょくってんじゃねぇ消し飛ばすぞ??


 唯ちゃんの父親のクソ外道っぷりに殺意をたっぷり募らせながら、切に願う。どうかこの想像が外れてますようにと。


 願うまでもなく私の想像って基本全く当たらないんだけどね。


「あ」


「あ……?」


 ほら、ほらぁ! 今あの白衣っぽいの、動いたんじゃね!? 動いたって多分きっとー!!


 実は白衣じゃなくて白い寝袋とか? ゴロンゴロン転がって今はうつ伏せで寝ていただけとか? なんて想像をしつつ目標の間近に着陸すると、いよいよ謎の白い物体の正体が判明した。それは紛うことなく白衣と呼ばれる衣服だった。大きく広げられた白衣だった。ただし中身入り。


 ……そう、中身が入っていたのだ。この白衣には厚みがあるのだ!! この下にいるの絶対人間でしょもう逃がさねぇ!!!!


 唯ちゃんと頷きあったのちにせーので白衣をひっぺがせば、その下からは私達の予想通り、枯れたオッサンの寝顔が現れた。これから自らに訪れる運命も知らず呑気な顔で寝こけている。……くぅ〜っ! 遂に見つけたぞ私の仇おらぁ!!!


 さぁさぁ楽しい天罰の時間じゃオラ! とルンルン気分で魔力を練ってたら、唯ちゃんに可愛らしく裾を引かれた。もちろん唯ちゃんとのお話をキチンと出来るように躾けるから、安心して任せてね、唯ちゃん!


「……この人、お父さんじゃないです」


「…………」


 ……どうやら人違いだったらしい。


 じゃあ誰だよコイツ。あのトルゴーだか言うなんちゃら組織の仲間の人? なんでコイツここで寝てんの??


 疑問があったら素直に聞くのが手っ取り早い。


 というわけで、またまた魔法で姿勢を固定して。《覚醒》をバチッと当ててあげれば「へんぐあっ!?」なんて奇怪な声を上げながら目覚めたようだ。


 美少女に起こされるなんてこの先の人生で一度も無いだろうから泣いて喜べ。そして従順に質問に答えてくれたら……まあ、この美少女様が優しく寝かしつけてあげてもいいかな。魔法でちょいっとやるだけだけど。


 そんなことを考えながら、《並列思考》《思考加速》《読心》等々の便利魔法をずららっと処理。不測の事態にも即時対応できる体制を整えた。……さぁて。


「目は覚めましたか? 真なる神(トゥルー・ゴッド)の構成員さん?」


 お前らの企みは知ってるんだぞ、と圧力を掛けながら声を掛ければ、白衣にくるまって寝ていたオッサンは「へ? は? え……、人!!?」などと、見てて面白いくらいパニクっていた。


「え、なに!? 構成員!? タオルケットが……なに? ってうわっ、美少女!?」


 ……あ、あれぇー? もしかして無関係の人……ってそんな訳あるかーい。


 このタイミングでこの場所にいて白衣まで着てる。これで無関係を装うのは流石に無理があり過ぎると思うよ。


 だが実際に、内心を読んでも混乱している以外の情報が読み取れない。


 このままでは埒が明かないので、弱めの《平静》をピピピッと当てた。コロコロ変わっていた表情が一瞬にして「スンッ……」ってなるのは魔法を使った私が見てもちょっと怖い現象だと思う。マホウッテベンリダナー。


「落ち着きましたか?」


「……そっか。ここは天界だったのか」


 死んでないから。そして私は天使でもないから。


「(ああ、やっぱり俺もあの時死んでたんだな)」じゃないよ。どうせならその「あの時」ってのをもっと強く思い浮かべなさいよ、使えないな。


 なんか拘束とか必要なさそう。軽く視たけど危険物も持ってないし、普通に聞いたら普通に答えてくれそうに思う。


 まあもちろん念の為に、拘束は続けさせてもらうんだけどね。


 自分が死んだものと思い込んでるオッサンを放置して《アイテムボックス》から例の白衣を取り出した。この白い世界に落ちていた、首元がやけに黄ばんでいる白衣だ。


「これ、先程拾ったんですが。見覚えとかありませんか?」


 広げながら聞いてみると、顔を上げたオッサンは「あ」と心当たりがありそうな反応を見せた。やはり唯ちゃんの父親は複数人でこの世界に来ていたのだろうか。


「それ、主任の白衣ですか? 俺のゲロを拭いた跡が――」


 ぶおん! っと聞き終わる前に放り捨てた。唯ちゃんとまとめて《浄化》、《浄化》ぁ!! なんちゅーもん持たせてくれとんじゃオンドレぁ!!!


「その主任さん、雛形さんというお名前ですよね? 私達その人を探してたんです。お話、聞かせて貰えませんか?」


 有無を言わせぬ笑顔の圧力で強要する。


 この私に汚物を持たせた罪、どう償わせてあげようかな……?


やっぱり汚っさんと関わるとろくな事がない!!

ソフィアの大人嫌い度が1上がった。

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