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尊敬の眼差し


「おい、どうした?」


「なんだ、何が起こ……って……――」


 ドサッ。バタリ。通路の先で人が次々に倒れていく。


 この怪奇現象は一人の少女によって引き起こされている。


 そう、魔法美少女ソフィアちゃんの必殺技「悪い人はみーんな眠っちゃえ☆光線!(Not光線)」による粛清の嵐が今、この悪の巣窟にて炸裂しているのだ!!



「――なんちゃってね」


「何が『なんちゃって』なんですか?」


 のんびりと手を繋いだまま歩いていると、唯ちゃんが可愛らしく首を傾げて聞いてきた。《身体強化》を使えない唯ちゃんにはこの阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえないらしい。


 まあ聞こえないように眠らせてるところはあるんだけどね。


 全員を眠らせる関係上、下手に大声を上げられて逃げられでもしてしまっては堪らない。異常に気づける距離にいる人は漏れなく睡眠魔法の範囲内だ。


「んー? 悪人を倒すなんて、我ながら正義の魔法少女っぽいことしてるなーと思ってさ」


「魔法少女ですか」


「そ。魔法少女ー」


 姿を見せず、ろくに対戦もせずに次々と悪人をバタンキューさせる少女。あれ、これって魔法少女というより暗殺者向きの内容かな?


 なんにせよ、悪人を成敗するという部分だけを聞いたら「それやりたい!!」とネムちゃんが参加表明してくること請け合いのシチュエーションだと思う。「眠らせるだけなんてつまんない」ってすぐに飽きられちゃうかもしれないけどね。


「ソフィアさんなら魔法少女の衣装も似合いそうですね」


「えー、唯ちゃんだって似合うと思うよ?」


 いや真面目に。唯ちゃんの魔法少女化した姿は切実に見たい。

 要はお互いに可愛らしい服装が似合う子供っぽい容姿ってことなんだろうね。


 ……なんだろう、自分でも恐ろしく似合うだろうことを自覚してるからか絶望感が半端ないな。魔法少女の姿が似合うメリットって何かないかな? この容姿があれば女の子達の憧れにはなれるかもだけど玉石混交の女の子達を侍らせても楽しくなさそう。それならテレビにでも出てお金を稼いだ方が私向きなのかな。


 芸能界なら可愛い女の子や可愛い男の子は揃ってるだろうけど、煽てられるだけの環境にいた子供って基本的に性格が可愛くないんだよね。それなら一般人の可愛い子探す方が楽な気がする。


 ……って、いやいや。この世界で可愛い子探してどうする気だ。あっちの世界には絶対連れて行けないんだよ? 好感度が上げられないのに性格ドンピシャな子なんかいたら絶対無駄に苦悩しちゃう。合法的に世界を超えさせる方法とか真剣に考えたりしちゃいそうだ。


 あー、ただこっちの世界の可愛い子に魔法を見せて「すごーい!!」ってチヤホヤされるのはちょっとやってみたい気がしないでもない。


 私って褒められるの大好きだからね。お兄様に「ソフィアは本当に凄いね」と心からの言葉を贈られるのも大好きだし全身が発熱するような悦びに震えるんだけど、それはそれとして子供から贈られる純粋な賞賛というのも良いものだ。良いものはいくらだって欲しい、あればあるだけ良いに決まってる。


 ……ふむ。そういう意味で言えば、やっぱり唯ちゃんからの賞賛も欲しいとこだな。


 唯ちゃんからすれば謎に人の倒れてる通路を歩いてるだけに感じてるのかもしれないけど、その安全は私が身を粉にして働いているからこそ得られたものだ。もうちょっとこう、尊敬の念というか、感謝の念というか。そーゆーのがあればお姉ちゃんもっと頑張れるんだけどなー。


「……ふぅ。これだけ人が多いと一々眠らせて歩くのも面倒だね」


 だからまぁ、時にはこんな言葉で仄かに期待してしまうのも仕方ないというかね。


 ……実際結構疲れてるんですよう! コンビニでチャージした元気とかもう六割方は削れてますし! 全員大人しく眠ってればいいのに!!


 なんていうかな、例えるなら動物園の特設コーナー?


「キモカワな生き物の寝てる姿を鑑賞出来ます〜」って触れ込みだったはずが、実際にその場に行ったら起きて動いて奇声あげてて、全然落ち着いて見られない感じっていうか。そもそもキモカワですら無かったりとかね。


 寝てる人起こしてゴーモンするだけの簡単なお仕事のはずがどーしてこーなったんだろ。調子乗ってコンビニまで足伸ばしたせいかな? そのせいだろうね。


 結局いつもどおりの自業自得だと結論づけたところで唯ちゃんからの反応が返ってきた。


「……もしかしてこの人たち、全員起きていたんですか?」


「そうだよ?」


 あれ、もしかして初めに寝かしつけた時のままだと思ってた? 確かに上の人達は寝たままだったけど……そういえば唯ちゃんは起きてる人にはまだ会ってないのか。なるほど、でも寝てる人の位置は変わってるんだけどな。


 まあどのオッサンが何処でどんな体勢で寝てたかとか普通は気にしないし覚えてもないよね。


 私だって覚えようとして覚えてたわけじゃない。ただこの身体のスペックが高すぎて無駄に記憶していただけだ。


「今のトコこの階層の人はみんな起きてたね。最初の部屋の数人以外は全員起きてるんじゃないかな? それを逐一眠らせてました」


 改めて説明すると、唯ちゃんは目をパチクリと瞬かせた。


「それは……、……流石ですね。……私ってもしかして、すごい人に守ってもらえてます、よね……?」


「……そうかもね!」


 折角の機会だったので、ふふんとふんぞり返ってみた。


 唯ちゃんの尊敬の眼差し、ちょーきもちいー!!


ソフィアのやる気がぐぐーんとあがった!

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