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気分は決戦前の休憩タイム


 荷物がパンパンに詰まった大量のレジ袋を抱えながら私は思った。


 もしかしたらサンタクロースって、こんな気分なのかもしれないな……ってね。


「本当に持てるんだ。凄いね」


「や、やっぱり持とうか? い、家まで運んであげようか? 女の子にそんな重いもの持たせるなんて……」


「それは本当に結構です」


 よっこいせと背中の上でバランスを整えるも、何度やってもいい感じにならない。早く人目の無いとこまで行ってアイテムボックスに仕舞いたいなー。


 なんならこの場で仕舞うのもアリかも? とかついつい楽な方へと考えちゃうけど、私の容姿は一度見たら忘れられないくらいには特徴的だ。世界の出入り口があの建物に繋がっている以上、最寄りのコンビニはこれから先も訪れる可能性がある。必要以上に目立つ行動は控えておきたい。


 ……こんだけ目立つ買い方しといて何を今更と思われるかもしれないけど、これはほら。私の理性を抑えとくために必要なリスクというかね。我慢し続けるコツは適度に発散することだから。今は発散のターンってことでひとつ。


 ともあれこれで私の欲望はひとまずの終息を得たと考えて良いだろう。


 次に考えるべきことは……約束の五分どころか、既に十分以上が経過しているってことかなぁ……。唯ちゃんに誠心誠意謝らなくちゃ。


「では私はもう行きますね。色々と無理を聞いてくれてありがとうございました」


「おー、気をつけて帰りなよー」


「まっ、またのご来店をお待ちしてますッッ!!」


 ぺこりと頭を下げると、またもバランスを崩した荷物の山からレジ袋がひとつ飛び出してきて見事顔面に直撃した。めんどくせぇ、もう普通に腕に引っ提げて持つわ。七袋もあったら背負ってようが引っ提げてようがどちらにせよ子供にあるまじき筋力なことには変わりないでしょ。


 後ろからの視線をなるたけ気にしないように自動ドアを抜けると、唯ちゃんは不満そうな顔など一切見せずに「お帰りなさい」と言ってくれた。単に大量の荷物に呆れていただけかもしれないけどね。


「ただいま。思ったよりも待たせることになっちゃってごめんね。すぐに行こっか」


「はい、分かりました。……ところで、なんで荷物を持ってるんですか?」


「アイテムボックスは使わないんですか?」との問いに「人前でそう簡単には――」と答えながら気がついた。この机と椅子、しまう時に絶対見られるじゃん。


 通行人は今は少ないから問題ないけど、店内からの目は……ふむ。まあ直接的見られなければ言い逃れはできる……か?


 どう考えても無理があるけど、もう色々考えるのが面倒くさい。あと荷物がめちゃくちゃ嵩張って邪魔くさい。


 それらの理由から、一切悩むことなく《アイテムボックス》を行使した。机も椅子も大量の荷物もぜーんぶまとめて片付けたら考えることが一気に減って楽になった。あとはさっさとこの場を立ち去るだけだね!


「よっし。じゃあいこっか!」


「はい」


 うむうむ、唯ちゃんも私のノリに慣れてきたようだね。


 あればあったで邪魔だったけど「両手でも持て余すほど大量のお菓子」というのはなかなか素敵な感覚だった。一気に両手が寂しくなったように感じたものの、こっちは唯ちゃんの手を掴むことで解決可能。


 さあ、元気出してもうひと仕事しに行こうか!



◇◇◇◇◇



 という訳で、戻って参りましたよ。悪の組織の本拠地に繋がる扉の前へと。


 ここが本拠地かどうかとか、本当にここにいた人達が悪の組織の構成員なのかとか、そーゆーのはホントどうでもいい。


 私にとって大切なのは、唯ちゃんをこの世界に置いていっても大丈夫だと安心出来る確証。それ以外は今は必要ないのだ。


 大量のお菓子を手に入れたことで、なんていうかな。だいぶ心の余裕を取り戻した感ある。たとえ唯ちゃんの件が望まない形で終わったとしても収穫はあったと思える精神の逃げ場が整った感じ? もちろん唯ちゃんにとって良い形で終われるように最大限の努力はするけれどね。


 でも正直なところ、もう結果は見えてるっていうかさー……。

 少なくとも唯ちゃんのお父さんが実は善人で、やむにやまれず唯ちゃんを異世界に隔離した――という可能性が無さそうなことはもうほぼ確定しちゃったも同然だよね。私達がこの世界に到着した時、明らかに「捕まえろー」って感じの人たちが待ち構えてたし。私の元の身体も美術品みたく飾られてたしね。


「悪いことをしていると天罰が落ちるぞ!」なんて馬鹿らしいと思うかもしれないけどさ。私はそーゆーのって実際あると思う……というより、あって欲しいって感じかな? 魔法が使えるようになってからは想いの強さの重要性を知ったし、そう荒唐無稽な話でもないと思うんだよね。


 だからまあ……唯ちゃんのお父さんも、既に天罰が下されてるのかも? なんて思ってたりする。


 異世界側の宇宙とか、魔力を吸い取られる白い世界とか、白い世界とこっちを繋ぐ謎空間とか。楽に死ねる天然トラップはわんさかあるしね。


 じゃ、それらの確認も含めてさっさと――と、扉を開けた瞬間に気がついた。コンビニに行く直前に仕掛けた罠が消えている。


 悪者の仲間が来ても決して扉が開かないようにと魔法で固定しといたはずが、何故か綺麗さっぱり消えている。まさかこの世界では既に魔法への対抗策が……じゃないな。これは私が迂闊だっただけだわ。


 ――どうやら魔力が存在しないこの世界では、持続型魔法は効果が短くなるみたいだった。


シリアスの予兆を感じ取ると一旦休憩を挟みたくなるのがソフィアの生き様。

ならならシリアスに関わる時だけ記憶をスキップしたいと思っているとか。

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