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無愛想なお母様が好き


 お母様との何ら意義の感じられない散歩は時間の流れがとーっても遅い。


 フェル達と遊んでたらあっという間に一時間くらいは余裕で経ってるってのに、お母様とは数十分歩いただけでもう疲労を感じてきた。私って精神的な疲労にめっちゃ弱いね。


「それで、治療自体はそれほど難しいことではないんですけど、人によって魔力の残ってる量が異なるのが問題で。長年眠っていた人はそれだけ魔力が減っているので、それを意識を取り戻す水準まで押し上げるのが大変といえば大変でしたねー」


「そうでしたか」


 ちなみに先程からお母様がちょくちょく昨日のことを聞いてくるんだけど、これって遠回しな尋問とかじゃないよね?


 昨日の患者さんの中に私の知らない超重要人物がいて「まさかソフィアが、あの御方にそんな失礼な態度を……!?」とか言われたら、私は二度と喪神病の治療依頼を受けない自信がある。やり方教えるから自分らでやれって思う。


 ゆーて現時点でもやる気なんてほぼ尽きかけてるんだけどね。


 お医者さんって凄いよね。私にはあの絶望感漂う空間とか高低差の激しい感情に晒されるのとかもろもろ含めて、二度とやりたくないと思ったわ。耐えられないこともないけど耐えるような環境にはいたくはないと強く実感してしまったね。


 たとえ後日お兄様を一日自由に出来る権利が貰えるお兄様ブーストがあったとしたって、精々が一日に十人程度が限界だろうな思ってしまった。


 あれはね、続けてたら間違いなく心が壊れる。私にはトコトン向いてないお仕事なのよねー。


 人によってはそんな環境にこそ「だからこそやりがいがある!!」とか思うのかもしれないけれど、私は楽して感謝されるようなお仕事がしたい。もっと言えばお仕事しなくても贅沢な暮らしがしたい。


 魔石を作っては売っての元手ゼロにして超高収入の濡れ手に粟なお仕事とかあったらそれこそ私向きで至高のお仕事だと思うのだけども、でっかい魔石って賊の皆様が管理する超貴重品で売買に許可とか証明書とかが必要になるアイテムなのよね。流石は神様の遺物認定受けてるアイテムって感じ。私マジ密造販売の犯罪者。


 悪意が存在しないこの世界で犯罪者とか、そもそもなろうとしたってそう簡単になれるもんじゃないんだけども、そーゆー話ではなくてね。そんな超貴重な特大魔石は購入先が大体国で、国は購入した魔石を研究者とかに支給するとかそーゆー話で。


 要はお母様は出土先不明の不審な魔石が市場に流れたらすぐに知れる地位にあるってことね。


 ついでに私が魔石を手のひらから生み出せるとこはもう見せちゃってるから、疑いの目を向けられるのは避けられないっていうか。どうやっても一発でバレそうっていうか。


 せめて例の読心術めいた洞察力が無ければ白を切り通すことも不可能ではないんだろうけど、私もほら、根は素直ないい子だからね。「正当な手段を用いずに得た魔石を売るのは悪いことである」と知っていながらにしてお母様の尋問を乗り切るのは実質不可能であると理解している。


 あーぁ、私も早く独立したいなぁ。


 確立した楽なお金稼ぎの手段を得て、カレンちゃんやリンゼちゃんみたいなかわいー子を集めてメイドにして、キャッキャウフフしながら生活したぁい。それでそれで、時折遊びに来たお兄様にみんな一緒に可愛がってもらうんだー、うふふ♪


 大人ソフィアちゃんの楽しい生活〜お金持ち編〜を夢想していた私はさぞだらしない顔をしていたんだろう。お母様に「ソフィア、顔をなおしなさい」と叱られてしまった。


 言われたから一応なおすけど、でもねお母様。正直私は、なおす必要があるほど酷い顔はしていなかったと思うんだよ?


 美少女はどんな顔してたって美少女だからね。

 むしろ私レベルの美少女のだらしない顔とか、それだけでお金が稼げると思う。ロリコン共がいくらでもお金を落としてくれるんじゃないかな。


 ……いや、流石に楽して稼げたとしてもそれは嫌だな。お兄様に顔向けできる私であることは私にとって必須事項だ。反省しよ。


 反省ついでにお母様を観察してて気付いたんだけど、この散歩ってもしかしたらお母様的には母娘コミュニケーションの一環なのかもしれない。なんだか私を気遣うような質問の割合が少しだけ高いよーな気がしなくもない。いや単に喪神病治療の仕方を探ってるだけかな。


 聞かれた分にはきちんと答えてるつもりなんだけど、如何せん魔法って感覚的な分野だからね。「ひょっとして意図的にやり方を隠しているのでは?」と疑われたら否定するのは難しい。


「お母様に隠し事が出来るなら私はもっとやりたい放題していますよ」と言うのは簡単だが、そんな事を言った日には「これ以上何をやらかすつもりですか、すぐに吐きなさい」と問い詰められるのは明らかだ。口を閉ざすのは身を守る手段。私はお母様との生活でそれを学んだ。


 ……学んだけど、でも気になることはやっぱり聞いちゃう。このままじゃ朝の日課の時間が無くなるからね!


「お母様って、もしかして私の事心配してます?」


「……子供たちの中で私に一番心労をかけているのは間違いなく貴女ですが、まさか自覚がなかったとでも?」


 ……おう、ちょっと聞き方を間違えたかもしれない。


 苦労させてる自覚はちょっぴりあるから、その作った笑顔引っ込めよ? ね?


 お母様はやっぱりいつもの凛と澄ましてる姿の方が美人に見えて私は好きだな!! ほらほら、いつものクールなお母様に戻ってください! お早く!!


「何考えてもバレちゃう」とソフィアは感じているようですが、母からすれば「未だに何を考えているのか分からない」筆頭こそがソフィアです。

分からないからこそ話をして、少しでも分かろうと努力する。

……しかしこの娘は、話せば話すほど謎が深まる特殊な思考回路をしているのです。母の悩みが解消されることは一生ないです。

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