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ヒースクリフ、許すまじ


 王子様って、なんてゆーの、概念?


 アイドルとかと同じでさ?

 人としてじゃなく、そーゆー存在として生まれた別の生き物、みたいな?


 だからトイレにも行かないし、下品なこと言わないし、みんながキャーキャー言うのに笑顔で手を振ってるだけでみんな幸せーって感じじゃん?


 恋人が発覚した時にファンがすごく怒るのって、そういう幻想が壊されたからだと思うんだよね。


 うん、つまり何が言いたいかってことなんだけど。


 ファンが怖い。





「お兄様、お兄様お兄様ぁ」


「よしよし」


 あの後。


 王子様を何とか宥めて、試験の残りを終わらせて、帰路に着くまで。


 もうね、針のむしろ。


 流石は貴族のお嬢様方。

 暴力的な行為に訴えるわけでもなく、暴言を浴びせかけるでもなく、睨まれることすらなかった。


 ただ、ジーッと見てるだけ。

 数十人はいるお嬢様方が、誰も一言も発さず、感情の読めない瞳で、ただ、ジーーーーーッと見てるだけ。


 怖いなんてもんじゃなかった。

 帰って最初に、冷や汗やら脂汗やらでぐしょぐしょになった服を着替える為にお風呂に入ったくらいだからね。


 ちなみにお風呂で一人で泣いた。

 なんでこんなことに、って気が済むまで泣いた。


 帰った時に出迎えてくれたお兄様が心配してくれたのに、まともな言い訳が出ないくらいには辛かった。

 それでも、お兄様に泣き顔だけは見せるまいとお風呂で泣き尽くしたつもりだったのに、お風呂から上がってお兄様に抱きしめられたら、我慢できずにまた泣いた。


 今は大分落ち着いて甘えタイムだ。


 お風呂に入る時に見た自分の顔はこれから自殺でもしそうな程酷かったけど、お兄様は何も聞かず、私が落ち着くまで優しく抱きしめ続けてくれた。


 はああ、お兄様さいこう。


 あのクソ王子とは大違いだ。

 アレに比べたらカイルなんてじゃれてくる子犬も同然、可愛いもんだ。


 カイルは私に勝ちたいって目的がハッキリしてるし、誰かを味方につけて集団で絡んできたりしないし、場所を選ぶことも出来る賢い子犬だ。

 王子とか駄犬だわ駄犬。


 はああ。学院、これからどうしよう。


 新しい環境に新しい友達。歴史や魔法学の授業にも興味あったしヘレナさんと合同研究の約束だって楽しみにしてたのに、気が重すぎる。


 やっぱり王子なんかと関わるべきじゃなかった。

 

 ああもう、いやだ。暗い自分が嫌だ。楽しいことを考えようと思ってるのにネガネガしちゃう。


 とりあえずお兄様の香りに包まれよう。


 頭をグリグリ押し付けると頭をポンポンと撫でてくれるのが「大丈夫だよ」って言ってくれてるみたいですごく安心する。


 そんな素敵な感触を堪能しつつのんびり心の傷を癒されてたら、お母様が固い顔でやってきた。辛辣なお言葉付きで。


「ソフィア、今度は何をやったのですか?」


 その手には一通の手紙。


 今日の総評は「王子にもう関わりたくない」と断言出来るけど、手紙となるとヘレナさんかな。お母様に頼まれたって言ってたし。


「王妃様からの呼び出しです。私とソフィアを名指しされていますね」


 王妃様。

 お母様の言葉を聞いて震えだした身体が、強くお兄様に抱きしめられる。


 その力は痛みを感じる程なのに、ずっとこのまま包み込んで離さないで欲しい。そう思わせる、優しさに溢れていた。


 どこか甘い痺れを伴うその抱擁は。


 冷え込みそうな私の心を、蕩けるような熱さで、暖め続けてくれた。


甘えん坊な妹のお陰でロランドの甘やかしスキルがカンストしてそう。

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