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最終日のピクニック


 軽い気持ちで私が毎朝してる訓練方法を教えたら、当たり前に乗ってきたミュラーと何故か乗り気だったエッテが化学反応を起こして大爆発した。私この船もう降りたいんだけど。


 だがしかし、エッテがいくら賢いとはいえ放置してミュラーの相手をさせるには不安が残る。


 エッテの飼い主は私なのでこの話は私が仲介するのが筋だろうし、言い出した責任だってあるだろう。そして何よりエッテとミュラーで追いかけっこをするには神殿の構造は狭すぎるという問題もある。放置したせいで神殿が半壊なんかしたら、私にかかる負担はどれだけ重くなることか。


 結論として、希望者全員を引き連れて私の魔法でもっと広い場所に移動することと相成りました。


 その際にミュラーから「ソフィア、存分に動ける場所を用意して頂戴」と脅され……げふんげふん。

 ミュラーに強制力のあるお願いをされたことはカイルやカレンちゃんの記憶にも新しいと思う。


 私が手段を用意したのは確かだけど、神殿を空っぽにしたのは私のせいじゃない。ミュラーのお願いが発端で、それを聞き入れただけの私にはあんまり責任は無いんじゃないかと思うんだよー!!


 だからもし神殿生活最終日という今日この日に、何かの間違いでも起こってお母様が空っぽになった神殿に来訪、誰もいないのを確認して瞬間沸騰湯沸かし器になるような事態があるとしたら、その時の全責任はミュラーが被ってくれることになっている。「なんでもいいから早くして」と脅された私が屈したわけでは決してないのだけど、なんでもいいならいざという時の保険くらいにはなってくれてもいいよねと思って。お母様は余所の子の前では割と猫かぶるタイプだからね。



 というわけで、転移魔法を使ってさくさくと移動を完了。


 私にカイル、ミュラーとカレンちゃんと唯ちゃんとリンゼちゃんも連れたフルメンバーでの遅めのピクニックを敢行した。


 転移先は記憶にある中で最も綺麗で見晴らしが良くて、なおかつすぐ人目が少ない場所で近くに森があるどっかの草原を選択した。いつか空飛んで外出した時に休憩した場所のひとつのはずだ。


 ぐーんと天に腕を伸ばして伸びをすれば、視界いっぱいに見渡す限りの大空が広がっている。


 んー♪ 周りになーんにも建物が無い場所って久々な感じ。吹き抜ける風が気持ちいいねー!


「おーい、ソフィア。ここ何処だ?」


 神殿騎士団の面子は既に私の転移魔法を経験済みとはいえ、長距離を一瞬で移動するというのはやはり常識が邪魔をして戸惑う事も多いらしい。


 ただその中で最も私のすることに慣れているカイルだけがいち早く現状に順応し、皆の戸惑いを晴らす役割を買って出てくれたみたいだった。流石は常識人担当、こういう時こそ役に立つよね!


「結構遠い街の近く。確か名前は……ロトットルとかいったかな。ほら、あっちの方に街が……見えないね」


「ロトットル? ロトットルって確か、農作物が色々と集まることで有名なところ……だったよね? ここは、ロトットルの近く、なの?」


 カレンちゃんの質問に頷きを返しながら《遠隔視》と《映写》を同時発動。上空から見えるロトットルの街の遠景を皆にも見えるように映し出した。


「そうだよー。王都とは気温が結構違うでしょ? 王都は広いから、街の外ってだけでも新鮮だよね」


 宙に浮かぶ映像を見ながら「へー」とか「ふーん、他の街って案外小さいのね」とか言ってる人達を尻目にリンゼちゃんを呼ぶ。


 リンゼちゃんにくっついて来た唯ちゃんと、ついでに近くにいたカレンちゃんにもお願いをして、アイテムボックスから取り出したシーツを三枚、重ねるようにして地面に敷いた。四隅に岩をドドドドンッと。


 よし、これで皆の休む場所が完成したね!


「シーツは本来、こんなことに使う為のものではないのだけど……」


 真面目な唯ちゃんが何やら煮え切らない様子で言ってるけども、どんな用途にせよ、道具は使ってなんぼだと思う。レジャーシートなんてこの世界では見たことないしね。


「そんなことよりお茶の準備お願い」と必要な道具を一通り、お盆と一緒にペイペイとアイテムボックスから取り出していくと、リンゼちゃんは呆れた様子で「あなたに常識を期待したのが間違いだったわね」なんて言葉を溜め息と共に吐き出していた。分かってるなら私好みのお茶の準備をよろしくねー。


 さて、これでこちらの準備はあらかた整ったと言っていいだろう。


 あえて付け加えるのなら……私も今日は魔法を使いすぎて、少し疲れが出ているといったところか。


 置き手紙は残してきたとはいえ、不測の事態で神殿に戻る時間が遅くなることも無いとはいえない。


 ここは念の為に気力を回復しておくべきかな。


「んー……カレンちゃん、こっちに」


「? なぁに?」


 ここは忙しなく働くリンゼちゃんではなく暇そうなカレンちゃんにお願いしよう。


 ちょいちょいと手招きすると、なんの疑いも持たずに寄ってくるカレンちゃん。座るよう手で促すと、首を傾げながらもシーツの上に腰を下ろす。


 私もシーツの上に横になり、女の子座りをしたその太ももの上に失礼して、と……。


「ふー」


「…………あ、あの、ソフィア? えっと、これ、どうすればいいの?」


「色々魔法使って疲れちゃった。ちょっとここで休ませて〜」


 ハッ! とした顔になるカレンちゃん。


 いや、そんな真面目に受け止められても困るんだけど。まあ続けさせて貰えるならそれでもいいかな。


 カレンちゃんの膝枕で休み始めた私に気付いてカイルがジト目を向けてくるのが見えたけど、そんな視線は屁でもないね。むしろドヤ顔を返してやった。


 へっへーん、羨ましいだろー。

 カイルがお願いしてもこんなことは絶対にしてもらえないだろうねっ!


魔力操作の指導をし、卓越した操作技術を見せたことによって、戦闘大好き組の間では自分の評価が爆上がりしていることをソフィアはまだ知らない。

確かな強敵としての地位が着々と固まりつつあることを、ソフィアはまだ自覚できていなかったのだ……。

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