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小さくたって女の子


 ミュラーとカレンちゃんの女の子組は、魔力が尽きるまで魔力操作の練習を続けた後にはおやつ休憩を挟んで剣術の訓練に戻って行った。


 魔力が少ないと身体がダルく感じるはずなんだけど、ミュラー曰く、その疲労感すらも訓練には丁度いい負荷とのこと。相変わらず自分を追い詰めるようなことばっかりしていて、ミュラーがその厳しすぎる訓練を周りにも課そうとしない人で良かったと心から思った。



 ――さて、そんな剣術大好き組が中庭へと去った今。突然だがここで簡単な算数をしようと思う。


 五から二を引けば三が残る。そこに一が加われば四になる。四を二で割れば二が二組出来上がる。


 あまりにも解が簡単に導き出せる問題ではあるけど、私としては四を二で割った時に、一と三に分かれるのが理想だったなと思わなくもない。


 まあ、つまりさ。

 気を張る必要のない休憩時間。今日もアネット商会から届けられた美味しいおやつを味わった余韻に浸っていた私が、現状に際して何を感じていたかと言うとですよ。


 女の子って、小さく見えてもやっぱり女の子なんだなぁとか、そんなことで。


 ろくに聞き耳立てなくても耳に入ってくる二人分の会話が、そりゃもう全身をゾワゾワと苛んでくるんですよね。


「唯の言う通り、あの二人は確かに仲が良いわよ。屋敷にも彼の父親と一緒にそれなりの頻度で来ていたりするし、本人達も言っている通り、あれが幼馴染みという関係なんでしょうね。それがどうかした?」


「どうかした、というか……。…………二人が実はこっそり付き合ってる、なんて可能性はないの?」


「……なるほど、そういうことね。意外ね、唯もそういう話が好きだったなんて。……むしろ私としては、互いに相手への好意を自覚してない可能性を推すわ」


「!!」


 ミュラーとカレンちゃんが去り、唯ちゃんとリンゼちゃんがキャッキャウフフしてる食堂の中で。


 対面に座るカイルのうんざりしたような顔を見て。私達の心は今、ひとつになっていることを確信した。


 ――純真な小さい子に邪推されるのってめんどくさぁあああ!!


 これに尽きると思う。ホント、もうね……これに尽きる。いやマジで。


 私とカイルは付き合ってない。好き合ってもいない。


 友人としての好意はあるし、邪推されるような行動をしてしまっている自覚もあるが、私の愛はお兄様にのみ注がれるもの。他の男にかける余剰分とかそもそもあるわけが無いんですよね。


 かわいい男の子や女の子に向ける慈愛の心だかいう例外もあるけど、私の恋愛感情に関してはお兄様のハートにオールインしてるから。ここが奴隷制度のあるファンタジー異世界だったらとっくの昔に奴隷申請してるから。それくらいの純愛度だからね。


 私ももう人の倍くらいは女の子歴あるから、恋に恋する唯ちゃん達の気持ちも分かるんだけどさ。所詮は現実ってこんなものよ。


 唯ちゃんは素直な良い子。リンゼちゃんもある意味で素直な良い子だからこそ、二人でキャイキャイやってる姿は尊くて、出来ることならその見てるだけでも幸せ空間を維持する為に全力を賭したいところではあるんだけど、その為にカイルと好き合ってるフリみたいなことはしたくない。万が一カレンちゃんでも戻ってきた時に致命傷にもなりかねん。


 っていうかリンゼちゃんは、私が小声での会話も完全に拾えちゃうこと知ってるでしょうに。何故わざわざ唯ちゃんに合わせて後半を小声で話したのか。


 ……普通に考えて、その事実に気付いてない唯ちゃんひとりに恥をかかせない為?


 あー、やっぱりリンゼちゃんも、もんのっすごい良い子なんだよなぁ!!


「……なぁ、ソフィア」


「……いや、なんでカイルまで小声で話すの」


 答えつつ、私も小声で返してしまった。反射的な行動だった。


 あー、確かに。これ小声で話されると小声で返さなきゃって心理になるね。


 新たな学びを得ていると、唯ちゃんの瞳が期待に輝きを放つのが見えた。そんな期待されても何も起きんよ?


「いや、なんかこういう注目のされ方慣れてなくてさ。どうしたらいいのか分からないっつーか」


「分かるけど、普通で良くない? こんなことしてたら益々期待の目で見られちゃうよ」


「そうか? ……それもそうだな」


 前のめりになっていた姿勢を二人して戻す。


 てか前提条件として、この食卓にも使ってる幅のあるテーブルで向かい側に座った相手との内緒話とか成り立たないでしょ。カイルのサービス精神かとも思ったけど、本人にその気は無いみたいだし。


 ……まさかちっちゃい子に注目されて照れてるとか? だとしたら結構面白いんだがね。


「なら普通に話すけどさ。ミュラー達を見送る流れでなんとなく俺達も残ったけど、別にここに残ってる必要なんてないんだよな? 神殿での生活も今日で最終日だし、時間が余ったなら部屋に戻って帰る支度でもしたいんだけど……」


 チラ、と動いたカイルの視線を追っていくと、そこには「そんなぁ!」と言わんばかりの顔をした唯ちゃんがいた。私達のくだらない会話程度にはどれだけの期待をかけてたんだろ。ぎゃんかわ(ものすごくかわいい)


 このままカイルの提案に乗るのも良し。焦らして唯ちゃんの表情を眺め続けるも良し。


 おやつの幸福から続く余暇の時間。


 私はまだまだ楽しい時間を過ごせそうだった。


小さくて可愛い女の子の笑顔が大好きなソフィアと、「女の子には優しくしなきゃダメだよ!」と幼少期のソフィアに調教されながら育ったカイル。

二人に期待の篭った瞳を無視するという選択肢は無かったようです。

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