そんな事実はなかった
サブタイトルの「〜よう」縛り辛くなったのでやめます。
さて、どのタイミングで調子に乗っちゃったのか反省しよう。
まず王子様が絡んできて自爆して、先生がお兄様が私を自慢の妹だと言っていたことを教えてくれて、ならお兄様の顔に泥を塗らないために相応しい成績を出そうとした。
ここまでに不備はない。
その後に、ちょっと歯応えのありそうな試験内容だったからつい訓練にしちゃったのが不味かったね。
だってあんなの、普通に揺らすだけとか温すぎてズルしてる気分になっちゃいそうだったし。
試験というからには少しくらい手応えが欲しいとゆーかなんとゆーか、ねぇ。結果はご覧の有様なんだけどさ。
遠くの火を揺らすだけでも優秀と言われるのに、揺らすどころか掻き消したりした日にはどうなることやら。
中心狙ったのがいけなかったのかな。少し外して、風圧で揺らす感じにした方が良かったかもしれないね。後の祭りだけど。
こうなった以上、解決策はひとつ。
火は消えていなかった作戦。
こそーりと、ロウソクの先に火を生み出した。
視認できる範囲なら遠距離で魔法の発動くらいわけない。なんなら視認できない背後にだって出せるからね。
生み出した火をしばらく維持したあと、徐々に小さくしていく。魔法で生み出した火の大きさを変えても見た目に変化がないことを確認したら、魔法を止める。火は無事に点いたようだ。よし、これで元通り。ロウソクの芯が吹き飛んでなくて良かった。
これなら、まあ、誤魔化せる。
はず。
多分……。
………………あとはヘレナ先生に頑張ってもらおう!
「一瞬、火が消えたのかと思った……」
「だ、だよな。びっくりした。ホント、びっくりした……」
安定しだした火を眺めてマーレとカイルが大きな溜め息を吐く。
その動きに呼応するように、周囲の人たちがざわめき始めた。
「すごい」「今の何?」「あんなに遠いのに」「同じ魔法とは思えない」
ふふ、もっと褒めて。お兄様の耳に入るくらいに広めてくれたまえ。
私の名はソフィア。お兄様の自慢の妹ぞ!
「すごい」
あれ、先生もなの。
お母様がここにいたら「また調子に乗って」とか言われてるタイミングだと思うんだけど。これ、私が自重しないと止めてくれる人いないね? これからの学園生活が無事に過ごせるか不安になってきた。
なんて言ってる傍から、ほら。なんか王子様が向かって来るし。いや来るかもとは思ってたけど、フラグ回収早すぎない?
うげ、しかも手まで握られた。なんなのこの人。
「ソフィア。先程の無礼な発言を撤回させて欲しい。君はやはり、聖女と呼ばれるに相応しい人物だ」
えー、嫌だあ。勘弁して下さい。
やっぱり誤魔化せなかったかなあ。ヘレナさんに指摘されるまでミスに気付かなかったのが痛かった。
てかそれ呼んでるの王子様だけだからね。聖女とか今日まで一度も聞いたことなかったからね?
「ヒースクリフ様にそう仰って頂けるのは光栄ですが、私などには過ぎた栄誉かと……」
「そんなことは無い。本当に、素晴らしい魔法だった。これが未来の賢者なのだと思わせる迫力があった。それと私のことは、親しみを込めてヒースと呼んで欲しい」
うわああああロックオンされてるううううう!!
ヤバい! この流れは良くない! どうする!? どうしたらいい!?
王子様に迫られるとかこんなのもう完全に乙女ゲーじゃん! 私はお兄様以外攻略する気ないのに! こんな時はどんな選択肢が正解だっけ!?
助けて智美ちゃん! 主食が乙女ゲーの女とか言ったの謝るからあ!
主食(のお金)が乙女ゲー(に消える)の智美ちゃん「ハーレムルート……行っちゃう?」