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教育的指導


「えーこんなことも出来ないのカイルぅー? さっきまでの自信はどこにいったのー?」


「ぐっ、このっ……くそっ!」


 カイルのドヤった顔があまりにもウザかったので、とりあえず全力で凹ますことにしました。私の真似が出来なくて悔しがってるカイルは最高の見世物だと思いましたあははー、あースッキリした。


 いくらカイルの成長が予想外の速度だとしても、それはあくまでも「カイルがまさかこんなに出来るとは思わなかった」ってだけの話。私に勝ったみたいな態度取るには百年早いっての。マジ寄りのマジめに身の程を知れやって感じですよねぷぷぷのぷー。


 魔力を集めて浮かべられる? へー凄いね、たしかに凄いよ。


 でもね、今の私はそんな低次元の領域にはいないんだわ。


 地道に毎日魔力を弄くり回して遊んでた私はね、魔力の制御なんてカイル以上に完璧で魔力のロスなんて常に一パーセント未満どころかほぼほぼゼロだし。魔力球だって五個くらいは余裕で操れる。身体の周りにだって自在にギュンギュン飛ばせちゃうんだよ? カイルなんかとは格が違うの。


 そんな簡単なことすら理解せずにまーー偉そうな態度とってくれちゃってさあ……。これは教育的指導を行うしか無いでしょって話にもなるよね。


 ――実力の差を思い知るのも勉強の内だよ?


 そんな詭弁と共に自慢気に魔力球を浮かべるカイルの前で、これみよがしに魔力球を生み出した。広げた手の指の先にそれぞれ一つずつ、距離も大きさもバラバラで合計五つ。いやー、驚いたカイルの顔は見物だったね!


 で、それらをふわりと宙に浮かべて自由自在に動かして見せた。


 大きさの異なる魔力球が、時に連なりながら、時に交差しながら舞い踊る。


 大きさもコロコロ変える。見るのが忙しいくらいにドンドン変える。

 小さかったのが大きくなって、大きかったのは小さくしたり。複数の魔力球がぶつかって一つになったり、逆に分裂して二つにも三つにもなったり。


 中でも大きい二つの魔力球をくっつけて小さな一つの魔力球にした時は目を剥いて驚いてたね。カイルってば本当にいい反応をしてくれるよ。


 魔力の還元に魔力の圧縮。不可視化といった例外的な方法を覗いてもいくつかのやり方があるんだけど、そんなこと想像もつかないくらいに驚いてて実に良かった。いやー、あれは胸がスカっとしたね。ざまみろって感じ。


 たかが魔力球ひとつ作れた程度で見事なドヤ顔を見せてくれたお礼に「どう? 本当に凄いっていうのがどういうものか、分かったかな?」とドヤ顔返しを決めてやれば、カイルは憮然とした顔で練習に戻った。そして今なお失敗に失敗を重ねているのだ!!


 ふはーっはっはっはぁ!! いきなりそんなに制御出来るわけないじゃん! やっぱカイルはバカだなー! やーいやーいアホバカマヌケー!


 制御する魔力球が二個になったとたん、安定しなくなったでしょ? 身体からの距離を離すなんて以ての外でしょ? そーゆー苦労を最初からして欲しかったんだよねー! そして堪らず私に泣きついて来るのを待ってたんだよ私はさあー!


 あー気持ちいい。今の私、過去最高に機嫌いいかもしれない。もちろんお兄様関係を除いての話だけど。


 ムカつく相手にざまあする。

 この世界に来てから飢えてた感情がみるみる満たされてゆくのを感じる。私が求めてたのはこれだよこれぇー!!


「こんのやろ……ッ!」


 ニヤニヤが止まらない私を見兼ねたのか、カイルが魔力球を私に向かって飛ばしてきた。……が、辿り着く前に霧散する。距離が離れれば制御が効きづらくなるのは当然のことだ。


 ……でも、今のは流石に見逃せないね。


「――カイル?」


「……な、なんだよ」


 興奮に昂っていた熱が一瞬にして引いていった。急に真顔になって冷たい視線を向ける私の意図を測りかねるように、カイルが警戒して構えをとる。


 いや今はもうふざけてもいい場面終わってるから。マジでコイツ、自覚ないな?


 カイルが今、私にしようとしたこと。その意味をまるで理解していない顔をしてる。


 軽い気持ちで起こした行動の結果が、どのような結末に行き着く可能性があったのか。今からじっくり指導してやる。


 ――魔力を操る力を得ることの意味、ちゃんとその足りない頭で理解しろよ?


「魔力を人に向けて放ってはいけません。この意味、理解できる? 何でだか分かる? カイルが思ってる以上に魔力ってのは危険なものだよ。それを今から実演して教えてあげる」


 再度ご登場願うは先程一部を破壊した岩。《アイテムボックス》にしまった時と同じく一部の形は崩れつつも、まだまだ標的としての役割は果たせる状態にある。


 その岩に向けて、カイルが私に放ったのと同じ大きさの魔力球を作り――カイルがきちんと見ているのを確認して――放った。


 岩の中に完全に魔力球が吸い込まれるのと同時――バゴンッ!! と大きな音がして岩が壊れる。


 大小様々の石片と化した岩の残骸。

 それらに手を向けて、よく見るようにと促しながら、カイルにニッコリと微笑んでやった。


「自分が何をしようとしてたか――理解した?」


 天才美少女ソフィアちゃんのエンジェリックスマイルを真正面から向けられたカイルはというと――顔面を真っ青に染め、一人だけ震源地に立ってるかの如く震えまくっていた。


 ……んー、ちょっとばかし脅しすぎたか? ガキんちょには刺激が強すぎたかなー。


 でも危険なことは事実なんだし、初めにガツンとやっとくのは大事だよね。ちゃんと深ぁく反省しろー?


流石は散々人に向かって魔力を飛ばしまくってるソフィアさん。説得力が違いますわ。

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