表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/1407

最後の試験を受けよう


 試験の結果は教えてくれなかったけど、褒められたからそこそこの評価は得られたと思う。


 さあ次の試験を、と思ったらカイルが待ってろってうるさいからカイルの試合見てたんだけど、これ試験じゃなくて試合だね? ってくらいには凄かった。


 特に先生が上手い。

 カイルの打ちやすいように打たせても崩れない安定感のある防御。なおかつ大きな隙にはすかさず叩き込まれるカウンター。

 それも相手を倒すことを目的としない、無理な攻めの機先を制するような、指導者としての完璧な剣術。カイルもよく動くし、全体的にレベルが高い。


 直前に戦った私たちがお子様以下に見えるから程々にして欲しいよね。ちょっと恥ずかしくなってきた。


 で、まあカイルはといえば、最後には攻めに回った先生に瞬殺されてたんだけど。

 負けたカイルがそれはもういい笑顔で若干引いた。マゾかな。


 友達になろうと狙ってたヴァレリーちゃんにはカイルを待っている間に逃げられちゃったけど、代わりにいいものを見られて良かった。

 自分で打ち合うのもいいけど他人のを見るのも参考になるね。見てて思いついた戦法をポールさんに早く試したくてうずうずしてきた。



 そして残るは魔法の試験。


 魔法は必修。新入生全員が受けるために結構な人数がいた。


 その中でも一際人が集まっている場所がある。

 場所というか、例の王子様軍団なんだけど。毎回この人数で移動するのめっちゃストレス溜まりそう。王子様ってすごいね。


「あ、ソフィア」


 群れからはぐれたマーレが寄ってきた。

 その顔は、ホクホクしている。テカテカしていると言ってもいいかもしれない。

 要は王子様自慢したい顔だ。


「はいはい、聞いてあげるから手短にね」


「ありがとうソフィア! さっきヒース様の横笛を聴いていたんだけどね……」


 横笛て。

 ヴァイオリンかハープでもやるのかと思ってたけど横笛なんだ。でも確かに、絵になりそうなくらい似合いそうではある。美形は何やっても似合うから得だね。


 マーレの話は大体「王子様の演奏が素晴らしかった。魔法の試験でもきっと素晴らしいお姿を見せて下さるに違いない」ってことだった。

 大部分を占める王子様分を除去してそれ以外の情報を要約すると、音楽の先生が王子様をさっさと帰すために一番に試験を受けさせたこと、王子様の演奏を前列で聴いた人は魔法の試験では後ろに回されたことは分かった。で、後ろじゃ意味が無いとマーレがこちらに戻ってきたのね。


 話は分かった。

 王子様が試験受け終わったら、自分の試験は後回しにしていたこの集団が瓦解して試験が混みそうなのも分かった。


 今日は帰れば家でお兄様が待ってるんだ。さっさと終わらせて帰ろう。


 王子様たちの方が早く着いてたけど、魔法試験の受付も一箇所だけじゃない。ヘレナさんのところが空いてたからそちらに行くことにした。


 てかね、王子様のいるトコだけ人集まりすぎだからね? 他の魔法の先生が人気無いみたいじゃん。

 そのお陰でヘレナさんのところで試験受けられるのは嬉しいけど、隣りってのがね。王子様の声は聞こえないのにファンの子達の声がもー、うるさい。


「いらっしゃい、メルクリスさん」


「こんにちわ、ヘレナ先生」


 少し大きめの声で話して、お互いに苦笑い。

 でもヘレナさんの後ろにあるものを見たら、隣の人たちのことなんか吹っ飛んだ。


 そこにあったのは、桶、ロウソク、木板、土の入ったプランター。


「あ、これって」


「うん。これらの道具を使って、貴方たちの魔法の試験をするからね」


 カイルの言葉ににこやかに返すヘレナさん。

 あのお父様とカイルがやった恥ずかしいやつを、こんな、公衆の面前で……?


 この試験、生半可な気持ちで乗り越えることはできなさそうだ。


マーレは気付いた。

後ろから見れないなら、横から見ればいいのだと!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ