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剣術の試験を受けよう


「ようし、それじゃあ試験を始めるか! 力量の近いもの同士で組んでみろ!」


 あれ、いつの間にか試験が始まってる? というか私の参加が決定してる? まだ了承した覚えないんですけど!


「ソフィア、組もうぜ」


 で、やっぱりカイルは私と戦いたかったのね。


 なんて好戦的なのか。

 私は綺麗な花に囲まれて音楽でも奏でていたいよ。そっちのが乙女っぽいし。


「何を言っているんだ。力量の近い者同士でと言っただろう?」


 あれ、もはやカイルの相手するしかないと諦めてたのに意外なところから救いの手が。

 ありがとう先生。素直に感謝できないけど。


 まあ止めるのも分かる。


 普通、女は剣なんて嗜まない。

 そんな女に、武門の優等生が剣で挑む。認められるわけがなかった。

 ざまみろカイルめ!


「カイル君だったな。君の相手は俺だ。彼女の相手は……むう、残っている女子はヴァレリーだけか」


 激減してもはや二人だけとなった女子。

 ものすごーく所在なさげにしてるその気持ちはよく分かるよ。ていうかめっちゃ震えてるし。大丈夫なのかなこの子。


「仕方あるまい。ではメルクリスとヴァレリー、両者前へ! これより試験を始める! 他の者は見学だ!」


 名前呼ばれただけでビックゥ! てしてるの可愛いんだけど、オロオロしすぎてて不憫に思えてきた。


 私はもうカイルに仕返しするために剣術受ける腹は決まったけど、ヴァレリーちゃんは明らかに剣術って柄じゃないよね。

 ものすごく気弱そうだし、さっき逃げ遅れちゃったんだね。


「あの、もし良かったら私から先生に言ってあげましょうか? 本当は音楽を受けるつもりだったんでしょう?」


 声をかけるために近づくと、可憐な素顔がよく分かる。

 でもその顔は常に何かに怯えているようで、せっかくの魅力が損なわれているのは勿体ないなと思った。


「あ、あの……ごめんなさい。あの、私、間違いじゃない、です。剣術、受けます」


「そうだったの? 勘違いしてごめんなさいね」


 マジかー。この子ヤバいわ。


 なんかもう、姿といい声といい、いじめてオーラがヤバい。私のドS心にキュンキュンくる。

 こんな小動物ちゃんが男子だらけの剣術取るとか猛獣の檻に兎放り込むようなもんじゃないのこれ? 生還できないでしょ。薄い本なら間違いなく性奴隷コースだよ。


 カイルにハメられて剣術で試験受けることになったけど、入学してからも剣術やることになりそう。

 こんな危なっかしい子ほっとけないよ。



「はじめっ!」


 距離を取って向かい合った状態で、先生からの開始の合図を聞く。


 私の剣の師は庭師のポールさんだ。

 日課の運動は部屋の中で一人でやるから誰にもバレない。なんてわけがない。

 窓の外から見てるポールさんと数人のお手伝いさんにはバレバレだった。特に窓枠で懸垂してたのが決め手だったらしい。カーテンを信用しすぎた私のミスである。

 まぁその後なんやかやあって、剣に覚えがあるというポールさんから剣を教わったのだ。


 合図と同時に走り出す相手の挙動を視界に収めながら、普段使いの身体強化の魔法を気持ち強めにするのも忘れずに。


 やああという掛け声とともにおおきく振りかぶられる試験用の木剣。女の子にしては思い切りがいいと思ったけど、目を瞑っている時点で色々察した。


 下手に防いで相手が怪我をしないよう、右前に大きく踏み出すことで躱す。それだけで、目標を見失った剣は地面に叩きつけられた。


 がら空きの背中にポンと剣を乗せれば試合終了。

 ここでの勝利条件は「有効な一打」と聞いてはいるけど、これだけ力の差があれば試合を続行する意味が無いことは先生にも分かるだろう。

 だってこんなチャンバラより低レベルなの、試験になるのか疑問ですらある。なんだろうねこれ。


「そこまで!」


 終了の合図を聞いて背中に乗せていた剣を引く振りをしつつ、剣先で脇腹をちょんとつついてみる。


「ひうぅっ!?」


 ああ、ヤバい。

 私、この子をいじめるの、我慢出来ない気がする。


ソフィアの生贄、追加。

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