次の試験を受けよう
わはーは、危なかったー。
久々のテストに舞い上がって全問解答の上に見直しまで済ませてから「全問正解しちゃダメじゃん!」と気付いた。
消しゴムとかないからね、そもそも鉛筆じゃないからね。
解答欄ぐちゃってしといた。
いやー気付いてよかった。
歴史と算術、それぞれの一番難しいのから三つずつ間違いになれば首席にもならず、特別クラスの圏内から外れることもないでしょ。
筆記の試験が終われば、残り二つの実技の試験を終えた者から順次帰宅していいそうだ。
あ、ちなみに試験が終わった時にはいつの間にか王子様を囲う会が再集結してた。
マーレぇ。
そんなわけで、最初は剣術。
とはいえ剣術は必修ではない。
それを知ったのは剣術試験の説明聞いてる時だったんだけどね。
先生が「試験始めるぞー」って声上げててみんな並んでたら普通並んじゃうよね?
あれ、これって日本人的な思考かな?
道理で女の子が少ないと思った。
マーレが戻ってないから女の子はまだ王子様のとこだと勝手に思い込んでたけど、男は剣術、女は音楽で受けるのが多いみたい。
言われてみれば別の場所に女の子の集団が見える。
引率はもちろん女の先生。こっちは男の先生、しかも体育会系。
まあ、声でかいよね。バッチリ集客された。
そして私と同じように間違えて来た女の子達が先生と言葉を交わしながら次々に集団から抜けていく。
先生がむさ苦しい笑顔で「女の子だって剣術やってもいいんだぞう!?」とか言って引き留めようとしてるけど、言われた子はビクッと震えて逃げ出すばかり。明らかに逆効果だね。
いや、効果はあるのかもしれない。
見てれば分かるけど、先生に断りを入れると暑苦しい顔でズイっと迫って来るのだ。それを見た後続の子達が止まった。
気持ちはよく分かる。
でもこのままだと望んでない剣術の試験受けさせられそうだし、離脱したいのにできずに困ってるのは明らかだから、ここはひとつ、女の子たちの為に私が力を貸しましょうかね。
「先生、私たちも間違えてこちらに並んでしまったのです。本当は音楽の方を受けるつもりでしたので、私達はこれで、失礼させて頂きますね」
先生の前に割り込んで、辞退の言葉を述べる。
女の子たちの方を振り向いて微笑めば、意図を察してくれた子が距離を取ったまま先生に挨拶し、それを見た子が同じように挨拶しては離脱していく。
その間、私は先生が女の子の方に詰め寄らないよう塞き止める役だ。
ニッコリニコニコ、空気読めティーチャー。
笑顔攻撃が効いたかは知らないが無事にみんな離脱できたみたいなので私も続こうとしたら、カイルとね、目が合うじゃないですか。
何故か立ち上がって、悪い顔してこっちを見てるじゃないですか。
悪い予感しかしないよね。
「先生! ソイツ、剣使えます!」
やめろバカ、お前私と戦いたいだけだろ。
「なに? メルクリスは剣が使えたのか!」
ほらあああ先生の目輝いちゃったじゃん! 止めてよね! 余計なこと言うの!
視線で抗議してもカイルは何処吹く風。
やっぱりコイツ、一回ビシッとシメておいた方がいいんじゃなかろうか。
「そうかそうか、先生もそうじゃないかと思っていたんだ。メルクリスは中々良い体つきをしているからな!」
おぅふ、今ゾワっとしましたヨ?
身体を鍛えてるって意味だろうけど、先生それセクハラですから!
メルクリス家のソフィアちゃんは剣術のせんせーにロックオンされたようです。