カイル視点:ムカつくアイツ
俺は強い。
体を鍛えてるから当然だ。
物心が着く前から鍛錬は日常だった。
これからも父さんの指導を受けて、兄達との鍛錬を続ける。それだけでもっと強くなれる。
同世代に適うやつなんかいない。それが当たり前だって信じていた。
アイツに会うまでは。
◇
アイツに初めて会った時、俺はまだ子供だった。
どっかのパーティーで仲間たちと外で遊んでた時、一人で寂しそうにしてた女の子がアイツだった。仲間に入れてやろうとしたら、俺の手を抓りやがって!
なにすんだよ! って振り払ったら、アイツは転んで、俺が父さんに怒られる羽目になった。
ちょっと悪いことしたかなって見てみたら、さっきまで泣いてたのが嘘みたいにケロッとしてて、それで気付いたんだ。さっきのが嘘泣きだって。
なんだアイツは! ってムカついたさ。
ムカついたけど、父さんにしこたま怒られた後だったからその時は諦めた。
いつか仕返ししてやろうと名前だけは覚えたんだけどな。
名前は、ソフィア。
それがアイツとの初めての出会いだった。
◇
アイツを見る目が変わったのは、父さんと一緒にアイツの家に行った時だ。
その頃にはアイツとはもう何度も顔を合わせてて、普段なかなか見せない弱点を今日こそは見つけてやる! って意気込んでたんだ。
だけど、子供同士で遊んでなさい、って入ったアイツの部屋には、俺が鍛錬で使ってるやつよりもずっと使い込まれた木剣があった。
俺が木剣を見てるのに気づくと、使用人に古くなったのを貰ったんだってすました顔で言ってたけど、家で木剣を使ってる俺には分かる。
この木剣は、子供用だ。大人が持ってるやつじゃない。
そう言って何度も勝負しろ! って詰め寄ったけどシラを切り続けられたから、なら力試しだ! って無理やり力比べをした。
嫌々だったけどなんとか納得させて、勝負はもちろん俺の勝ち。
だけど、最初。初めの初めだけは、同じくらいの力だった。
それがだんだん弱くなって俺が勝った。勝たせてもらった。下の兄貴とやった時と同じ。
手加減されたのだ。
それからは夢中で鍛え続けた。
アイツが、ソフィアが俺より強いかもしれないなんて話は、誰に話しても笑い飛ばされるだけだった。
なら俺が、アイツの化けの皮を剥いでやる。
アイツはみんなが言うような綺麗で賢いお嬢様なんかじゃない。俺は嘘なんか言ってない。
それを証明してやる。そのために、鍛錬を続けた。
◇
その後もしつこく勝負を挑んで、性格が悪いのを暴いたし剣が使えるのを認めさせることもできた。
けど、まだ足りない。俺はアイツに本気を出させることも、余裕を崩すことさえ一度だってできなかった。
学院の入学を前に何故かソフィアの家で魔法対決なんてすることになったけど、今だってアイツは興味なさそうにぐーすか寝てやがる。
俺の魔法なんて見る価値もないって言われてるみたいだ。本当にムカつく奴。
なんて、イライラしてたら負けた。くそっ。
また弱みを見せたかって思ったのに、起きたアイツはこっちなんか眼中にもないって顔で、家族と仲良くしてるし。
それは俺と話してる時には見せたことの無い満面の笑顔で、楽しそうにしてるアイツを見てるとそれだけでムカムカしてくる。
猫っ被りめ、今に見てろ。
すぐにお前の本性をみんなの前に引きずり出してやるからな!
ソフィアの舐めプに激おこプンプン丸なカイルくん。
やれ!そこだ!ヤツの化けの皮を剥がすんだ!
家族には殆どバレてるけどね!




