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希望は面白い方のお母様で


 学院に着いてからも、私はいまいち集中出来ていない自覚があった。


 私はよく「肝が据わってる」とか「大胆だよね」とか言われるんだけど、自己評価としてはそんなことはなくて。むしろ自分のことは慎重派だと思ってるんですよね。


 どのくらい慎重派かっていうと、クラス内に魔力感知できるのがネムちゃんしかいないって分かってるのに授業中に《千里眼》を使えないくらいの慎重派。


 まあ要するに、授業を真面目に受けてないのを暴かれたくない小心者ということですよ。


 授業、大切だもんね。

 先生からの印象はそれよりもっと大切だもんね。


 我々学院生の為に授業をしてくださっている先生方の好意を(ないがし)ろにするだなんて言語道断。


 優等生のソフィアさんは、先生の発言は一言一句違うことなく覚えてるレベルで先生達のことをリスペクトしてますから。マジよりの真面目にそんけーしてますから。

 授業中に余所事を考えるだなんて……そんなの、バレない範疇を超えて実行するのには多大なる精神的苦痛を伴っちゃうんですよ。


 でもね。精神的苦痛って言うなら、ガマンも身体には良くないわけで。


 精神的苦痛と精神的苦痛を天秤に乗せたら、そりゃまあ、重さが釣り合ってない限りはどちらかに傾いてしまうのが道理なわけでして。


 でもでも天秤ってそんなにハッキリとした結果は出なかったりもするよね。

 いや結果自体は明確に出るんだけどさ。なんて言うのかな、観測者の意志が介入する揺らぎがあるというか?


 こう、ふわっと、「これくらいなら大した差じゃなくない?」的な。そんな思考が許されてしまいそうな寛容さが、あのフラフラと重石と重石の間で揺れ動く天秤にはある気がするんだよね。これ以上ないくらいに主観だけど。


 まあ、つまりですね。

 先生の授業はちゃんと聞くべきだけど、それと同時に家の様子も確認できる術はないかなーと、そんな都合の良い両取りの方法がないものかと私は頭を悩ませている訳であります。


 その解決策を考え始めていっとう最初に思いつくことが「屋敷に監視カメラを配置できたらな」という辺りが、もうね。流石は私ってところはあるんだけど。


 文明の利器って、本当に「ザ・文明の利器!!」と称えたくなるくらいに便利な道具が多いんだよね。私がこの世界に来てから何度「この世界にアレがあったら……」と嘆いたことか。無い物は作ろうの精神を発揮しちゃうのも仕方の無いことだと思うの。だって本当に、呆れるくらい不便のオンパレードなんだもの!


 で、そんな不便な生活の中から生まれた道具や製品がいくつもあって。


 それら便利な品々を生み出す過程では、当然、それらを上回る数の失敗作も生まれたわけだ。


 もちろん、部屋の片隅に失敗作をうずたかく積み上げていたりするわけではない。

 不要と判断した段階で廃棄用アイテムボックスに収納。なんならバラして再利用とかもしてた訳だけど、中には特定条件下では使用可能な準失敗作みたいな物もあってね。そんなのは持ち運ぶ意義も薄いから、部屋の特定の戸棚の中に纏めて……ええと、保管してあったりもするんだけどさ。


 そんな思い出深い品々が、私が神殿に追いやられている今、危難の時を迎えている可能性も無くはないんじゃないかと考えている所存。


 もちろん論理的に考えれば、お母様がわざわざそんなゴミ掃除……じゃなくて、危険物除去……でもなくて。


 ええと、そうだな……。敢えて言うなら宝探し、とか……?


 そうだね、私の部屋で宝探しをする為だけに私を追い出したというのは、イマイチ考えにくい答えではあるよねって話で。


 でも可能性として完全に切り捨てることもできないので、ちょろっと部屋を覗いて確かめればある程度は推察の補強になるかなと。そういった次第で授業に身が入ってなかったりするんです。


 はー、憂鬱ぅ。

 何が憂鬱かって、授業無視して部屋の様子を確認したところでどーせ何も出てこないだろうこと分かってるのがまた憂鬱さに拍車をかけてる。


 十中八九、私の予想は外れている。でも万が一当たってたらちょー面白い。


 あとはほら。たとえくだらないことだとしても、なにかしら想像はしておかないとね。お母様の行動が全く読めないのってそれだけでもう恐怖なので。


 やはり休み時間を使って確かめるべきか……。


 本当はもうひとつの可能性が浮かんでいたりもするんだけど、そっちはほら。私の担当じゃないしね? 多分。


 神殿に送られたのが私だけじゃなく、お兄様とお姉様も一緒だったことを考えれば、私の役目はむしろ餌役……だったらいいなぁという希望が入るから、予測の精度がまた下がっちゃうのよね。


 まあお兄様がそばに居てくれる限り、私にとってそこまで悪い結果にはならないでしょ。……というのも、希望的観測と言えないこともないのだけども。


 お母様の性格からして、むしろ私にとって酷いことをするときこそお兄様をそばに配置してくれそうだし。

 お母様ってお兄様のこと、私が暴れない為の首輪に最適だとか思ってそうな節があるよね。


 なんにせよ、想像だけじゃ限界がある。


 神殿生活もそろそろ折り返し地点。

 私もそろそろ、お母様の真意について知っておかないとね……。


標的は自分か。それとも姉か。

崇敬する兄に問題があるとは露ほども考えていないソフィアは、自然と兄が原因という可能性を除外していた。

だが恐らく、その想像は当たっている。

この姉妹には追放される心当たりが山のようにあるのだから……。

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