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不確かな真意


 結果的に軽く汗を流す程度にしか運動できなかったわけだけども、それはそれ。


 運動が終わったら一刻も早く汗を流したいと望むのは、女の子として当然の権利なのです。



 というわけで、入ってきました。お風呂。

 カイルと鉢合わせる危険性を考えて屋敷で入ったのだけど、この時間帯はいつもなら私が使ってる時間帯だからね。神殿に泊まりに行ってる期間中とはいえ、他に使用者がいなかったのは幸運だった。


 お陰様でたっぷりと唯ちゃんの身体をごほんごほん。


 いやそういうのは昨晩たっぷりと堪能したからちゃんと控えめに抑えましたとも。

 でも可愛いものが目の前に無防備のまま晒されてたら、ちょっかいかけたくなっちゃうのは自然な反応だと思うんですよね。


 そんなこんなで楽しく屋敷での時間を過ごした私たちは、アイテムボックスから取り出した服に着替えた後に唯ちゃんの部屋に転移。そのまま唯ちゃんのお着替えを眺め……たい欲求などおくびにも出さず、何事もなく素直に別れた。


 この後に唯ちゃんとまた会うのはおそらく朝食の席でのことになるだろうね。少し残念には思うけれども、それでいいのだ。たとえ好意だろうとあんまりガツガツ来られると腰が引けちゃうってのは私が身をもって知ってるからね。


 何事も引き際が肝心。

 そうとも、物事はちょっと足りないと感じるくらいがちょうど良いのだと昔から相場は決まっているのだ。


 そう考えれば、今日も朝から中々に良い時間を過ごせたのでは? と、ひとり満足してベッドに横たわった私は、夜は唯ちゃんの所に入り浸っているが為にあまり見慣れないままになっている自室の天井を眺めつつ、ふとこんなことを考えた。


 ――そういえば、なんで私達ってここに来ることになったんだろうな。


 説明は聞いた。納得も、一応。


 でも本当に私とお姉様に罰を与えるつもりだったのなら、ここで一緒に住むのはお母様でなければおかしい。お兄様が見張り役なんて、それじゃただのご褒美にしかならない。


 となれば、なにか別の理由があったと考えるのが自然だけどー……。


 少なくとも、私やお姉様にとって不幸な結末になる陰謀とかでは無いと思うね。そういうのだったら私、たとえお母様が相手だって見破る自信あるもん。


 まあお母様が本当に私を貶めようとしているのならともかく。

 たとえばお母様が「ソフィアの部屋に変な置物が増えすぎて皆が気味悪がっているから、しばらく他所に行かせている間に全部捨ててしまいましょう」とか考えていたのだとしたら、私の第六感も無反応で、呑気に騙されちゃう可能性もあるかなーとは思う。思うけども……。


 ……本当に、今の今までそんな可能性があるってことに全然気が付かなかったな。もしかして私って唯ちゃんのこと言えないくらいに危機意識薄過ぎ? いやでも、家族相手にそこまで警戒するのは過剰だよ、ね……?


 そんなことがあるはずないと思いつつも、部屋に残してきた貴重品について思いを巡らす。


 必要な物はアイテムボックスにとりあえず全部ぶちこんではいる。でもそれは、逆に言えば必要のないものは全部部屋に置いたままだということ。


 例えばそれは、目の届く範囲に置いて眺めるのを楽しむ思い出の品だったりとか。改めて思えば貰い物とかは殆ど部屋に置きっぱなしだった気がする。


 お兄様とお揃いの置物とか、お兄様から初めて貰った花かんむりとか。あ、あとお兄様が初めて描いた絵とかもあったな。あれは確か棚の奥に隠してたはずだけど、思い出したらなんだかじっくり見返してみたくなってきたかも。


 お母様に処分を検討されるような物なんてそんなに……と思ったけど、あるよね。ドでかいのが。扉の横にドドンと。しかも夜中に動かして使用人たちを驚かせたという前科持ち。


 乙女の寝室を護るに相応しい威容を備えた全身甲冑。戦乙女戦隊(ヴァルキリーシリーズ)の面々である。


 あれ眺めてると機能面でもデザイン面でも改良点が湧いてきていいんだけどな。リンゼちゃん以外のメイドの皆さんは、あれ見る度に「ビクゥっ!」って、一瞬怯えたような反応を見せるんだよね。


 部屋に置いてるのは魔石抜いてあるから動かないし、怯える必要なんてないんだけど、見ただけじゃ分からないもんね。それにしたって怖がりすぎな気がしないでもらいけど。


 まあ魔石が入ってたって登録してある魔力の人は襲わないように設定してるし、基本的には動かないんだけどね。考えようによっては十分な示威行為は果たせるとお墨付きを貰ったようなものかな? そう考えたらメイドの皆さんの驚きも無駄ではなかったと言えなくもないね。


 ただ、そこからお母様のところまで苦情が上がっているという可能性は……。ううむ、あるのかなぁ。ちょっとこじつけに近い想像な気がする。


 何よりあのお母様といえど、私の許可無く勝手に部屋のものを捨てたりはしないと思う……んだけどなぁ。どうかなぁ。

 思い出関係の物はまだしも、原材料が全て魔法産と知られてる戦乙女たんは少し危ない気がしないでもない。けど……うーむ。やっぱりよく分かんないや。


 疑わしきは罰せよ。但し冤罪のリスクが高い時は除く。


 状況を冷静に考えて、まだ決め付けで動くのは早いと判断した。ならば今はまだ、普段通りの行動を徹底しよう。


 そうと決まればさっそく服を着替えないとね。



 もそもそと動き出し、今日という一日を始める為の行動に移る。


 もののついでに「今日もいいことがたっくさんありますように!」と、なんとなく唯ちゃんの部屋の方向に向かって手を合わせてみたり。ご利益があったらこれも日課にしようかな。


神殿送りの真意はともかく。

徘徊甲冑の件は、幽霊が苦手な使用人に多大なるダメージを与えたことだけは確かなようです。

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