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勝利の報酬はさらっと流そう


 ゆらゆらと揺れていた。


 聞こえるのは、お姉様の優しい声。


 ああ、眠っていたんだなと、寝ぼけたままの瞳を開いて――。


「お、起きたか愛娘よ! 父は見事に勝利をもぎとって来たぞ!」


 ――そのまま夢の世界にUターンしたくなった。



 そうだったね、魔法の勝負してたんだっけ。あれを魔法の勝負と呼ぶならだけど。


 いつの間にか寝落ちてたみたいだ。


 既に勝負は終わったようで、勝ち誇るお父様と地面を叩いて悔しがるカイルという大人気ない光景が繰り広げられていた。


「お父様、おめでとうございます」


 とりあえず褒めとこう。

 祝福の言葉は自分でもビックリするくらいさらりと出た。一眠りしたことで気分がリセットされたのかもしれない。ただ寝惚けているだけの可能性の方が高そうだけど。


「やはり勝利は良いものだな! ふはははは!」


「くっ……!」


 調子に乗って高笑いを上げるお父様に敗者のカイルは顔を上げることも出来ない様子。

 這いつくばって敗者アピールなんてサービス精神に溢れてるなーとは思うけど、そろそろお父様の高笑いが耳につくからやめてもいいんじゃないかな。でないと向こう一週間は食卓でお父様のニヤニヤ顔と対面する羽目になりそうだ。

 調子に乗ると長いから滅多に褒めないんだ。さっきのは軽率だった。


「ソフィアが父の勝利を確信してくれたからには結果を出さんとなあっ!」


 あっ、既にノってますねえー。調子にノリノリですねえー。


 とゆーか勝手に私の気持ち捏造しないで欲しい。

 勝敗なんかどうでもいいと思った記憶しかないんですが? 変な寝言でも言ってたのかな、だとしたら恥ずかしすぎる。


「お姉様、お父様はああ言ってますが、私が寝てる間に何かありました?」


 まあお姉様とお母様がいて、カイルの前で無様な姿を晒させないとは思う……って、既に寝顔晒してるんじゃないかな?

 なんか急に恥ずかしくなってきた。二人とも起こしてくれればいいのに……。


「ソフィアが眠っちゃった後にね、起こそうとしたらお父様に止められたのよ」


 もう諸悪の根源は全てお父様なんじゃないかな?

 私がカイルに恥ずかしい姿を晒し続けたのもお父様のせい。あーそうですか。褒めて損した。


「お父様が言うには『これはソフィアからの信頼の証。寝ている間に全てカタがつくと、私の勝利を確信しているからこその行動だろう』ってことなんだけど……」


「違いますね」


 頭ハッピーセットなの? なんでそんなに信頼されてると思えるのか不思議でならない。

 しかもお父様、初戦負けてたじゃん。むしろ負けると思ってたわ、よく勝てたね。


「やっぱりそうよね」


 そうですとも。

 お姉様もお父様の娘なら、お父様の残念さは身に染みてるはずだ。

 特にあの、何かするたびに褒めて欲しそうな視線を向けてくるあれ。

 ドヤ顔でこっち見て、んふふって笑うんだよ。ウザさがよくわかると思う。


「お母様は『ソフィアの寝顔を見ていたいだけでしょう』と言っていたのだけど」


 あ、それ。それっぽい心当たりある。きっとそれだよ。


 前に居間で『眠いのなら寝たらどうだ』的なことを言われて部屋に戻ろうとしたら微妙な顔されたからどうするのが正解だったんだろうと思ってたんだよね。

 あれ寝顔を見せてってことだったのか。今すごく納得した。てゆーか分かるかそんなの。


「私はもちろん、ソフィアの可愛い寝顔に癒されていたわよ?」


 うふふ、と悪戯っぽく笑うお姉様。

 ああ、その笑顔に私も癒されますう〜。


 視界の端で何故かカイルが睨んでた気がするけど、きっと気の所為だよね。


 今日の面倒ごとは終わったみたいだし、後はもうずっとお姉様とイチャイチャしよ。ごろにゃ〜ん。


なお桶に溜まった水は庭園の水遣りに。

一度火をつけたロウソクは使用人の私室に配られるなど無駄なく利用されました。

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