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Another視点:二人の去った教室で


「……行った?」


「行った行った」


「どんな感じ?」


「疲れ果てたカイルくんをソフィアが宥めてる感じ。いつもより少し優しい気もするけど、普段通りと言えなくもない範疇、かな」


「つまりはいつもどおりってこと?」


「その可能性は高そうだよね」


「いや待て待て! それならカイルが俺たちに言われるがままだったのはどう考えてもおかしい! あいつは自分に非がない時には『なに馬鹿なこと言ってんだコイツ』みたいな目で見下してくるんだ! それが無かったってことはカイルにはやましいことが絶対ある!! それだけは間違いない!」


「そうだそうだ! いつものカイルはもっと俺達のことを馬鹿にしてくるんだぞ! 俺の話を呆れもせずに聞いてるなんて明らかにおかしい!」


「あんたら友達なんだよね?」


「おう! 無二の親友、永遠に競い合うことを誓ったライバルだぜ!」


「最近は剣術でも勉強でも負け越してるけどな!」


「それはライバルとは言わない」


「どうせ自称でしょ」


「いやホントだって! 最近のアイツがおかしいんだって! お前らだって知ってるだろ? 俺だって一年前にはカイルとマジでいい勝負できてたんだよ。俺が弱くなったんじゃねぇ、ここ最近のカイルが異常に強くなってるだけなんだよー!!」


「いやあんたの腕前とか知るわけないでしょ」


「言い訳にしか聞こえませんわよ」


「ていうか誰もあんたのことなんて聞いてないわよ。カイルくん(ひが)みたいだけなら邪魔だからさっさとどっか行ってくれない?」


「え、何この扱い。みんなもっと俺に興味持ってくれても良くない!?」


「必要のない情報」


「嫌に決まってるでしょ。大体ね、下心が見え見えなのよあんたは」


「この間の剣術の時間、女子の胸に得意げに点数付けてたことみんな知ってるわよ」


「はぁ!? 嘘だろォ!?!」


「うーわ」


「やっちまいましたなぁ」


「お前……うちの女子を敵に回すとは勇気あるな……」


「正直ざまあと思っている」


「そんなゼロ点男放っておきなさい。今大事なのはソフィアとカイルくんに何があったかでしょ?」


「何かがあったのは確定。ソフィアもカイルも、態度がいつもと違っていた」


「ソフィアは久々に警戒心が全開だったねー。死んだフリする兎みたいで可愛かったー」


「なぜその喩えを選んだのか」


「カイルもやっぱ、何か隠してるのは確かだと思うが……。でもあれは娯楽本って感じじゃねーな。あいつ隠し事が下手だからさ、当たってたら絶対何かしらの反応したと思うんだよな」


「合体したわけでもない。娯楽本が発見されたわけでもない。……他に隠したくなることなんてあるの?」


「合体って……いや、そりゃまあ色々とあるでしょう。不慮の事故で唇が触れ合ったとか、お互いを意識する出来事が起こったとか。可能性なんていくらでも考えられるわよ」


「お互いの両親が真っ盛りなところに出くわしたとかな!」


「……さいってー」


「最悪」


「発想がクズのそれですわね」


「もう一生黙っててくれない?」


「冗談は顔だけにしとくべきだったねー」


「……お、俺が何をしたっていうんだ」


「最低の発言をしたんじゃないか?」


「ていうかお前、実は女子に罵られたくてわざとやってるところあるよな」


「ちちち違わい! そんなんじゃねーしっ!」


「隠す気ゼロかよ……」


「こいつの照れた顔ほど無価値なものもそうそうないよな」


「はいはい、馬鹿の妄言はともかく。とにかく、ソフィアとカイルくんの二人の間には何かがあった。それは私達には隠さなくてはいけないようなこと。ここまではいいわね?」


「いいでーす」


「異議なし」


「問題は、秘密にされてるその出来事をどうやって聞き出すかなんだけど……」


「放っておくって選択肢はないのね……」


「貴女は何を言っているの? ソフィアの健やかな成長を見守るのは私達の義務でしょう?」


「はーい、この子マジでーす。この子は本気でコレ言ってますからねー、注意してねー」


「純粋なものほど穢れやすいのです。保護するのは先人たる私達の役目でしょう」


「いやソフィア同い年だから」


「まあ確かに、ソフィアはびっくりするくらい純粋だからねー。危なっかしくて見てられないってのは同意かなー」


「でもそれを言ったらカイルくんも純粋じゃない?」


「確かに!」


「言えてる」


「つまり二人はちょーお似合いってこと?」


「何を今更」


「他にソフィア任せられそうな男なんていないもんねー」


「いやいや俺がいるでしょ。世界の誰よりソフィアを愛してる俺がいるでしょ。むしろ俺以外にソフィアを幸せにできる人間なんていないでしょ!!」


「能力以外の全てが不適格」


「ソフィアに何度フラれても諦めないその心意気だけは買ってるわよ」


「あたしソフィアに聞いた事あるんだけど、『あの好きって言い続けてればいつかは落ちるだろうと思ってそうな性格が無理』って言ってたわよ」


「それって何があっても無理ってことじゃない?」


「ソフィアはやっぱり愛されるより愛したいんじゃないの? それにほら、ソフィアの初恋って多分あのお兄さんだろうし」


「初恋のお相手には理想を見てしまうとは言いますが、あの方は……」


「理想の体現者。女性の理想がそのまま現実になったような存在。学院の全ての女性が彼の人を讃える例の組織に加盟しているという噂もあるほど。ちなみに私も加入している」


「びっくりするくらい喋ったわね」


「こいつがこんなに話すの初めて見たぞ」


「……それより、初恋があの人ってどうなの? あの人より上の男とかいるの?」


「いるわけないでしょ」


「ソフィアの恋愛観はあの人が基準なんでしょ? どうするの!?」


「どうにもならないでしょ」


「なんてこと……! この一大事はロランド様に相談するべき案件よね!!」


「なるほど、そこに着地させるのか」


「あの巨大組織を敵に回す覚悟があるなら止めないけど?」


「はい、やめます。どうもすみませんでした」


「よっっわ」


ソフィアはクラスのみんなから愛されています。

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