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娯楽本説、意外とニアピン


「いい加減、楽になろうよ。大丈夫、私たちはソフィアの味方だよ。だから……ね? 朝に何があったのかを教えて欲しいな?」


「そうよソフィア。男ってのは野獣なんだからね。普段はどれだけ優しく見えても、ちょっと気を許しただけで急変したりするんだから。私たちはソフィアを心配して言っているのよ?」


「早く白状する。焦らされる限界はとっくに過ぎた」


 …………なんで私、こんなフルボッコにされてるんだろ。なんか私悪いことでもした?


 ああ、普段の行いが悪いということなら納得できるかも。私ってほら、普段から本能には逆らわずに生きてるからね。


 ――そんなことを考えながら現実逃避していても、私を取り巻く環境は改善される見込みが全くない。大人しく情報を吐き出すしか逃れる方法はないと安易な逃げに走りたくなってしまう過酷さだ。


 集団で威圧し甘い言葉で自供を促す。

 これってさ、場所によっては有名な拷問方法だったりしそうだよね。飴と鞭みたいな感じ? 実際に結構心がぐらついてたりするよ、言わないけどね。


 果たして私の受けてる仕打ちは、カイルのものと比べてマシなのか、どうか。


 私が女子たちによる尋問を受けているのと同じように、少し離れた場所で、カイルもまた、男子たちによる尋問を受けていた。


「そんなに恥ずかしがることじゃないだろ。ヤったのか、ヤってないのか。それを聞いてるだけだ。簡単なことだろ?」


「やってないよな? やってないと言え。ソフィアがカイルとなんてそんなバカな嘘だイヤだ……」


「もしかしてあれか? 他人には言えない変態的なことを強要して嫌われたりとかしたのか? 大丈夫だ、安心しろ! 男なら誰だってそんな経験、一度や二度はしてるもんだ! 会う度に頭を下げてればそのうち許してくれるって!」


「……勃たなかったんなら、後でこっそり俺に言え。信頼出来る良い薬紹介してやるから」


 ……なんか、こうして聞いてるとあれだね。人間って本質的にバカなんじゃないかとか本気で思うね。いくら思春期とはいえみんな興味ありすぎじゃないかな。他人の性経験とかどうでもよくない?


 女子の関心の高さを間近に感じてると特にそう思う。

 男子の方は……あわよくば自分も狙おう、的な視線を感じるから、聞きたがる理由としては納得できる。狙われる方としては気分のいいものではないんだけどね。


 あと薬。小声での囁きもバッチリキャッチしちゃったけど、この年で薬に頼るってマジか。それ危ないクスリじゃないだろうな。


 技術の発展はエロと戦争からってよくいうけど、まさか戦争の起こらない世界だとエロ方面に特化したりとかするのかな。だとするとこの世界の若者がやたらと性に積極的なのもその影響? 変態がやけに多い理由もそこら辺に原因があると考えれば……どうしよう、今まで不思議に思っていたことの大半に辻褄が合ってしまう。


 つまりはなにか。私が美少女ロリになったから不躾な視線を多く感じていたのではなくて、この世界には元から変態が多かったと、本当にそれだけの話なのか。変態の絶対数が多かったから気持ちの悪い視線で見られることが多かったのか。


 そうか、この異世界は変態の巣窟だったのか……。


 そう考えてみれば、この世界の「人が悪意を持たない」という特異性に初めて気付いた時、私は確かに「気持ち悪い」と感じていた。

 そうだね、変態を見たら気持ち悪いと感じるのは普通の感性だったね。私が普通と言うのも烏滸(おこ)がましい話だけどね。


 あ、昔ついでに思い出した。そういえば漫画布教計画の構想を出した時に「既存の娯楽本とは違う」って話があったんだった。


 娯楽と名のつく本とか読むしかないでしょとどんな本なのか気になってたのに、あの時は何故かみんなに邪魔されまくって結局手に入れるのを諦めたんだよね。


「ソフィアが楽しめるような物じゃない」って言葉の意味が曖昧すぎてまるで納得いかなかったけど、成程ね。あれはきっとエロ関係の娯楽商品だったんだな。ひたすらに内容を教えてくれなかったのは要するに子供向けの娯楽本じゃなかったからだと。今深く納得したわ。


 ……あれ、でもそうなると、みんなは本の解禁より先に実践を経験してるってことにならないかな? いや実践を終えたあとだからこそ娯楽として楽しめるのか? ううむ、どうなんだろ。


 耳を塞いで石と化してるのもいい加減飽きてきたので、折角集まってくれてるみんなに聞いてみた。


「ねぇみんな。娯楽本って読んだことある?」


「「「それかー!!」」」


「どれ?」


 え、なによ。どうせ読んだことあるでしょ? ちなみに内容までは聞いてないからね。


 誰かしら嬉々として語り出すと思ったのにみんなの反応が想像と違う。みんな一体何の話を……と聞くまでもなく、耳に入ってくる会話から何が「それかー」なのかを理解した。


 つまり、みんなは――私とカイルの「朝の件」に「それ(娯楽本)」が関わっていると判断したのだ。


「えっと、違うよ?」


「はいはい、庇わなくていいから。ソフィアにそんなもの見せたカイルくんが悪い」


 いやマジで違うんだって。


 本当にそんなもの見せられてないから。

 なにせ見せられたのは二次元じゃなくて三次元の……っていやいや。誰が上手いことを言えと……。




 ――教訓。


 人の話を完全に聞き流すと、どうやらカイルが酷い目に遭うようです。


 まあ、なんというかね。悪気はなかったから許してくれると嬉しいかなぁ、なんて。あははー。


 ……ゴメンねカイル☆


 後でちゃんとお詫びするから、みんなの相手は君に任せた! 健闘を祈ってるよー!


「なるほど、娯楽本か」

「どんな変態的なの見られたんだ?」

「誤解だ……。全てアイツの陰謀なんだ……」

「ソフィアさんが嘘なんて言うわけないだろいい加減にしろ」

「なんでアイツ変な人望あんだよありえないだろ……」


その後カイルくんは、合流した女子たちを交えた「次にソフィアに見せるべき娯楽本を選ぶ会議」に無理やり参加させられましたとさ。

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