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うふふいひひひんふあはは


 洗いっこしながら聞いた話だと、やっぱりカレンちゃんが自分の身体を自分で洗えないのにはちゃんとしたわけがあったらしい。


 ほら、お風呂って身体を洗うじゃないですか。裸になるじゃないですか。

 そんでもって私が出会った頃のカレンちゃんって、全身に装身具をつけてたのよね。


 そう、カレンちゃんの「勝手に発動する身体強化魔法」を制限する為の魔道具である。


 まあその魔道具に実際の効力は(ほとん)どなかったのだけど、それはともかく。

 私がカレンちゃんの身体を治すまで、カレンちゃんは日常生活において大きなハンデを背負っていたということだ。


 さてさてここでクエスチョン。

 お風呂に一人で入る時、力を入れる場面は一体どれくらいあるでしょーか。


 答えはいっぱい。つまりリスクもいっぱい。


 身体を洗おうとして皮ごとゾリッと削れたり、髪を洗おうとして髪の毛がブチブチっとちぎれたりする危険性を考えたら、お風呂の時には本人に何もさせず、専属の使用人に洗わせるという判断は実に妥当なものだと言えるだろう。


 やはりカレンちゃんは純粋だった。

 私みたいに「可愛い子とお風呂場でイチャイチャしたら仲良くなれた感じがするよね!」なんて(よこしま)な理由で使用人と一緒にお風呂に入っているわけではなかったのである。


 ……だけどね、それはそれなんですよ。


 逼迫した事情故の合理的な判断の結果であったと理解は示そう。


 だからね。別にそこを羨んだりはしてないのよ。

 カレンちゃんも大変だったんだねとその境遇に同情することすら(やぶさ)かではない。


 ――でも、だからこそ。私は思ってしまうのだ。


 その事情――できることなら私の身体を洗う前に教えておいてくれれば、私も心の準備ができたのになぁ……と。



「あちょっ、ちょぁっんんんっ! わ、脇腹はくすぐったいからね? もっと力を入れてぃっひん!! に、握りこまないで!?!」


「あっ、ごめんなさい! え、えっと、こう? こんな感じ?」


「ん、んんんっ、んん……。……まあさっきよりはマシになった、んんっ!?」


「あれ……!? ご、ごめんね、ソフィア……!?」


 ……もうね。もう、さっきからこんな感じなの。


 もしかしてカレンさん、わざとやってます? ってくらいのソフトタッチで、洗われてるってよりくすぐられてるって言った方が適切なんじゃないかと思うくらいの惨状なの。ん、くふ……っ!


 ま、まぁね? 私がくすぐったがりだという問題も確かにあるよ。


 脇や足裏は言うに及ばず。

 首や背中、脇腹に太腿に腕に肩もと、わりとどこを触られても反応しちゃう敏感な身体だという自覚はあるよ。でもそれにしたってカレンちゃんの触り方が下手すぎるんだわ。


 もっとこう、ガバッと! ギュッと触って、ゴシゴシっ! ってしてくれるだけでいいのに。


 カレンちゃんも自分の力が暴発すれば大変なことになるという自覚があるのか、どうも力を入れる事に抵抗があるみたいなんだよね。


 ……まあ私だって防御魔法の強度をいつもよりも上げてるから、あんまり人のことは言えないんだけどさ。


 他人に触られても違和感を覚えさせない質感で、なおかつカレンちゃん相手にも有効な防御魔法ともなると、それなりに維持が大変だからさ。できれば早く洗い終わって欲しいところなのだけど……。


「んっしょ。んしょっ、と」


「ぅっん。んんっ、ん」


 洗う方も洗われる方も疲れるお風呂とか、なんだろうねコレ。


 お風呂ってもっと癒し力に溢れた空間であるべきだとソフィアちゃんは思うな〜。


「どう、ソフィア? 気持ちいい……?」


「うっん。今はすごく、いい感じ……っんひ!」


「あ、ごめんなさい!」


 う、ううぅ。油断する暇もなくくすぐられるよぅ……。


 これはあれか。カレンちゃんが使い慣れていないというタオルとボディーソープが用意してあったことこそが敗因なのか。


 ヌルヌルになったタオルが、ぬりゅんっ! と滑りさえしなければ、カレンちゃんもそれほど下手くそって程でもなぁっ、んひぃぃっ!


 ああああっ、もうっ!! 落ち着いて考え事すら出来やしない!!!


 シチュエーション自体は悪くないのに、なんだこの地獄みたいな状況は!!? せめて私がカレンちゃんを洗う側だったら良かったのに!!!


 ……ハッ!? まさかそれを見越して、ミュラーはカレンちゃんを洗っていた、のか……!?

 などと考えてはみたものの、実際に私がカレンちゃんを洗う役割だった場合、ミュラー以上のご立派なモノを洗わされて心がポッキリ折れてたかもしれない。ミュラーの手のひらサイズでさえ荒ぶる感情を抑えるのに苦慮したからね。


 で、洗う方も洗われる方も特に問題もなく一抜けしたミュラーさんは現在、何故かまだ湯船に浸かることなく私の隣に座っております。


 なんかね、カレンちゃんにくすぐられて身を捩る私をじーっと見てるの。


 えっちな目でも愉しげな目でもなく、真剣な瞳でじーーっと。特に私の内股のあたりを凝視してるの。


 変態さんなのかな?


「ミュラー、いい加減見すぎ。なんなの?」


「んー……? いえ……、んー?」


 なに? 私の玉のように滑らかな肌がそんなに気になるの?


 望むなら肌をツルンツルンにするくらいしてあげるから、私の股間を凝視するのはやめてくれないかなぁ……地味に恥ずかしいんですけど。


「ソフィアって……これ……」


「んひっ」


 伸ばされた人差し指が、つるんっ、と私の太腿の上で滑った。


 ……後ろからだけじゃ飽き足らず、横からもか!? 君らはそんなにも私をくすぐりたいのか!?


 これはもう脱出することも考えるべきかと画策し始めたその時。ミュラーは真面目なトーンで呟いた。


「こんな筋肉で、何であんなに早く動けるのよ?」


 筋肉? あんな? あんなっていつの話よ。


 よく分かんないけど、ソフィアちゃんはいつだって魔法依存度百パーセントのか弱き乙女さんなんだよ?


自分と違って、長い手足。

自分と違って、盛り上がった胸。

自分と違って、クビレのある腰。


ソフィアは無心でミュラーの身体を洗いました。

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