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辱めには自傷ダメージがあります


 話の流れでお姉様と対戦することになった。


 カレンちゃんをより恥ずかしがらせた方が勝者というこの対戦。勝利の報酬は、カレンちゃんと一緒にお風呂に入る権利である。


 ぶっちゃけ明日以降に誘えば好きなだけ叶えられそうな報酬だけど、勝負となった以上負ける気はない。精々頑張らせてもらおうと思う。


「カレン」


「へ、ひゃいっ!」


 声を掛けただけでビクッて過剰なほど反応された。


 カレンちゃんで遊んでる私たちが言うのもなんだけど、ちょっと反応し過ぎだと思う。そんな可愛い反応するから弄ばれちゃうんだということを、カレンちゃんはもう少し理解した方がいいんじゃないかな。


「カレンは私のことを可愛いって言うけど、お兄様の手にかかれば誰だって同じ反応をしちゃうと思うよ。……想像してみて? もしもお兄様がカレンに手ずからチョコを食べさせてくれるとしたら……どう? 頬に手を置かれて、親指でそっと唇を開かれて。真っ直ぐに見つめる瞳が、お兄様の顔が、近づいてきて……」


「え、あぅ、そっそれはっ……!」


「チョコレートが唇に押し付けられてね? ちょっと無理やり、押し入るようにして口の中に……」


「ん……っ!? や……ぁっ」


 ――私の方が「いやぁ……っ」って感じですが。カレンちゃんの嫌がり方、ちょっと艶っぽすぎやしませんかね。


 なんだか変な気分になってきちゃいそう。具体的に言うとセクハラしたくなる。というか既にしてるか?

 まあいい、訴えられなければ無罪みたいなもんでしょ。


 問題は、この欲望の求めるままに更なる羞恥を煽っても良いのかという一点のみ。さてさてどうしたものでしょうかね。


「――指が、唇をそっと撫でるの。逃げられないように顔を押えられたまま、すり、すりって、唇を撫でられ続けて。その間もお兄様の瞳はずっと私を見つめていて――」


「はわ、はわわわ……」


「――そのくらいにしておきなさい」


 コツン、と軽く頭を叩かれた。


 そうね。そろそろカレンちゃんが目を回しちゃいそうだものね。


 ついでに私の羞恥心もそろそろ限界だったから丁度良かった。思い出しながら話してるだけで、私の顔も熱くなってきた気がする。


 離れていても私の心を掴んで離さないなんて、まったく、お兄様は罪な人だね。この昂奮は今日一日続くかもしれない。お兄様の指の感触が今でも鮮明に残ってる気がするよ……。


「まったくもう、慣れてないくせにムリしちゃって。ソフィア、その顔を男の子の前でしちゃダメよ? 男の子がみーんな野獣になっちゃうからね」


 ……その顔ってどんな顔だろう。え? もしかして私って今、人には見せられないような顔してるってこと? だらしなく緩んでたりとかしてます?


 まさか涎は垂れてないよね、とさりげなく確認してみたけどそこまで緩んではいなかったみたい。ついでにほっぺたも揉んで解しておこう。もーみもーみ、っとね。


 私がクールダウンしている間、カレンちゃんも同じように赤く染まったほっぺたを押さえている。私と視線が合えば、お互いに照れたように笑って――と思いきや、不意に恥じ入るように俯かれてしまった。


 ……え? 何その反応? ソフィアさんちょっぴりショックですよ……?


 ……もしかして私ってば、まだそんなにやばい顔をしてるんだろうか。見るに堪えないにやけ面とか晒してました……?


 ガーンガーンと脳内で鳴り響く絶望の音に軽く意識を飛ばしていたが、よくよく見ればカレンちゃんは恥ずかしがりながらもちらちらと私の方を確認している様子だった。具体的には、私の口元を注視していた。


 あー……なるほど? さっきの話を聞いてお兄様の指先とか妄想してました?


 お兄様の指先とか艶っぽすぎてそれ単体でもオカズになるもんね。えっちな妄想が捗っちゃうよね、分かる分かるぅ〜。


 お兄様はね〜、存在全てが女性特効みたいなところあるからね〜。

 存在しているだけで女性を発情させちゃうセクシャルモンスターみたいなものですよね〜。


 まあそれにしたって、第三者の唇を見て間接的にお兄様の指先を妄想できるってのは中々の剛の者って感じはする。カレンちゃんも意外と、夜はお盛んな方だったり……?


「ソフィア、今変なこと考えてるでしょ」


 っと、いけない。危うくえっちっちソフィアさんになるところだった。まだ夜の帳は降りていないよ!


 お姉様の声で我に返った私は、変な空気に染まりつつある部屋の雰囲気を一掃することにした。


「そうですね。少々冷静ではなかったかもしれません。ここは素敵すぎるお兄様の残滓を振り払うためにも――」


 ササッと周囲を確認。


 呆れたような声を上げながらも、楽しそうなお姉様。

 照れ度マックスを装いながらも、未だむっつり妄想を続けていそうなカレンちゃん。


 私はスススッと移動すると、お姉様の細い腰に抱きついた。


「――お姉様の匂いで上書きするしかありませんね!」


「そうね!!」


「えっ、そっ、そうなの……!?」


 なんと素晴らしい。カレンちゃんがツッコミ役に回りましたよ!?


 流石は私たち仲良し姉妹。純真な姉妹愛で淫靡な空気など一瞬にして吹き散らしてしまった。


 まあノリと勢いで押し切っただけとも言うけどね! はっはっは!


――恋愛において、男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがると言う。

ソフィアを取り巻く兄姉の三角関係は案外上手くいっているのかもしれない。

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