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お姉様と突発バトル


 目が覚めると、見知らぬ天井が視界に映った。


 何処だここ。


「ソフィア? 目が覚めた? ……うん? まだ寝惚けてるの? ここは神殿のあなたの部屋よ?」


 ベッド脇で本を読んでいたお姉様の言葉を聞いてようやく理解が追いついた。


 ああ、そうか。今日から私、神殿で暮らすんだっけ。

 そんでもってお兄様とイチャついてたら過剰攻撃食らって撃沈したのよね。うん、ちゃんと覚えてる。


 状況を理解した私は、未だ胸に残っていたドキドキの余韻を楽しみつつ、半ば答えの予想できる問いをお姉様に返した。


「ちなみになんですけど。私がどうやって部屋にまで戻ってきたか分かりますか?」


 ――過去は変わらない。何より意識が無い時の記憶は保持できないという厳然たる自然の理がある。


 どうか想像よ外れていておくれと願う私の願望は、いとも容易く打ち砕かれた。


「そんなのロランドが運んだに決まってるじゃない。屋敷にいた頃だってソフィアを運ぶのはロランドの役目だったでしょ?」


「ああああーーッ!!」


 なぜ私は意識を失ってしまったんだァァー!!


 お兄様ならきっと!! まず間違いなくお姫様抱っこで宝物を扱うが如く丁寧に運んでくれたに違いないのに!! その気遣いを一片足りとも感じていないなんて何のために気絶したか分からないじゃんん!!?


 ああ、私はなんて愚かな事をしてしまったんだ……。どうせならお兄様に抱き締められた状態で目を覚ましたかった……。


 絶望に歪んだ視界から後悔の涙がほろほろと零れ落ちる。

 涙を受け止めるついでにそっと衣服の匂いを嗅いでみても、お兄様の残り香は殆ど感じられなかった……ぐすん。


「……私は何故、お兄様の腕の感触を覚えていないのでしょうか……?」


「寝てたからよね?」


 そうだけど。その通りなんだけどぉ!


 私くらいお兄様への敬愛があれば、寝ててもワンチャンあったんじゃないかと思うんだよね!?


 だというのに、現実は非情である。お兄様に甲斐甲斐しく面倒を見てもらったにも関わらずお兄様が出てくる夢すら見ていないとは。これはお兄様への裏切りではあるまいか。


 ……ちょっと寝てる間の魔法行使を練習するべきかもしれない。


 今もたまにやってる並列思考の熟練度を上げて。こう……魚みたいに、寝てても起きてる状態を維持する練習というか。


 魔法はずっと切れてない。意識は失っても魔法自体は維持出来ている。

 後はその状態でも、意識の覚醒率を自在に引き上げる方法さえあれば……なんなら唯ちゃんと夜中に話しながら意図して練習でもすれば、あるいは……?


「ん?」


 と、その時。廊下をパタパタと駆け近付いてくる足音が聞こえた。


 この足音は唯ちゃんかな?


 推察からたっぷり数秒後。無造作に開かれた扉からは予想通りの人物が顔を出した。


「ソフィア、どうしたの……!?」


 どうしたの……? どうしたのとはなんだろうか。私は一体どうしたと言うのだろう……って、ああアレか。


 どうやらカレンちゃんは、先程私が上げた慟哭の声を聞いて駆けつけてくれたみたいだった。ホントにカレンちゃんは優しい子だね〜。


 しかし、そうか。どうやらこの建物は家より更に防音性能が低いらしい。これはちょっと……ううむ、やっぱり夜はずっと起きてた方が無難かもしれない。夜のひとり遊びのリスクがあまりにも高すぎる。


 ――今のうちにその危険性を知れたのは僥倖でしかない。


 その感謝の気持ちと心配してくれた嬉しさから、思わず「ありがとう」と答えてしまった私に対して、カレンちゃんはきょとんとした顔で「……ふえ?」なんて可愛らしい声を上げていた。


 お姉様、どうしましょう。この子可愛すぎて神殿生活終わってもずっと傍に置きたいんですけど。

 あ、ダメ? お姉様も欲しい? なるほど、ならば戦争ですね。


 お姉様と無言の笑顔で会話する。

 戸惑うカレンちゃんを放置して無言のまま進められた協議の結果、よりカレンちゃんの可愛い面を引き出せた方が今日カレンちゃんと一緒のお風呂に入れることになった。無論、カレンちゃんの許可など得ていない。


 先攻はお姉様から始まった。


「カレンさん。妹を心配してくれてありがとう。この子ったらロランドにチョコを食べさせてもらっただけで倒れちゃったみたいでね〜?」


「え、いえ、そのぅ……へ、チョコ? 食べさせ……ええ?」


「ロランドがこうやって、『あ〜ん』ってしたら、恥ずかしさのあまり倒れちゃったみたいなのよ〜。可愛らしいと思わない〜?」


「そ、そう、です、ね……? ソ、ソフィアは、とても可愛らしいと、思います…………うぅ」


 ――カレンちゃん。私は今のカレンちゃんこそが最も可愛らしいと思います。


 成程、動作の再現まで入れて恥ずかしがらせるのは実に良い手ですね。何故お姉様が私たちの甘いやり取りを知っているのかは今は触れないでおきましょう。


 ……しかし、これを超えるカレンちゃんの可愛さを引き出さないといけないのか。


 うんむむ。これは中々の難問ですね……!


なお、その頃。

他のメンバーは唯一メイドリンゼさんの夕食作りの手伝いをしていた。

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