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テンションの高い仲間たち


 天啓を得たとは、正にこういう時に使う言葉だろう。


 多すぎる人数。限られた席。

 フェルとエッテという愛玩生物の存在や、外出先という普段とは勝手の異なる条件を含めたこの状況であれば、無理なく唯ちゃんを膝の上へと乗せられると確信していた私は、その慧眼通り無事に――唯ちゃんの隣りの席をゲットしていた。


 しかも反対側の隣りはリンゼちゃんだ。やったね!


 じゃないんですよおおおォオオオ!!!


 嬉しい。唯ちゃんの隣りで仲良く手なんか握れちゃうのはそれはそれで嬉しいのよ? でも違うの! 私が求めていた理想では今よりももっと嬉しい状況になれてたはずなの! そのはずなのにィ!


 ……全てはカイルの余計な一言のせいだ。


 あの言葉さえ無ければ、今頃はきっと……っ、くぅっ!


 キッ! と怨みを込めた視線で睨みつければ、カイルは一人立ったまま、これ見よがしな溜め息を吐いた。


「……いや、そんな睨まれてもな。恨むなら成長してない自分の身体を恨むしか無いんじゃないか? お菓子ばっか食べてるからそういうことになるんだぞ」


 ちゃんとご飯も食べてますぅー!

 私の身体が小さいのは無理な魔法の影響で、お菓子とは一切因果関係はありませーんー!! 知ったふうな口を聞くんじゃないよっ!


 全く全く、なんて失礼な男だろうか。推測でここまで人を馬鹿にするこんなにも失礼なやつはカイル以外に見たことないねっ!


 そりゃ確かに、私の膝に唯ちゃんを乗せるというのはちょーっと物理的に問題があったかもしれない。

 私が良くても見た目は多少シュールなことになるだろうし、何より「恥ずかしい」と唯ちゃん本人に言われてしまったら引き下がる他ないというのも理解している。


 でもあれは間違いなく押せばいける雰囲気だったんだよぉ!!


 唯ちゃんはリンゼちゃんよろしく一見クールに見えるけども、その内心ではびっくりするくらい甘えん坊な本心が潜んでいるのだ。何だかんだで人肌にめっちゃくちゃ飢えてる可愛い子なのだ。


 だからこーゆーくっつく系のお願いはぐいぐい押せば割と通るの。お風呂だってそれで一緒に入れるようになったの。


 膝上くらい拝み倒せば「そんなに言うなら……」って渋々受け入れてくれる、そのはずだったのに!!!


 カイルが「いやなんでそうなるんだよ。せめてアリシアさんの膝の上だろ」とか言いつつ「まあ今回は俺が立ってるから普通に座れば?」なんて席譲っちゃうから!! 唯ちゃん恥ずかしがって普通に座っちゃったじゃないのさああぁぁあ!!!


 もうホント、カイルマジ無能。無能の神かよ。


 せめてその紳士ムーブを私の前でも発動しろよと。何故私にはその気遣いができないのかと小一時間問い詰めたい。


 本当に問い詰めたら生意気な反論されることが目に見えてるからしないけどね! けっ!!


「あの、ソフィアさん……? 手をそんなに動かされると、くすぐったいのですけど……」


「んー? こうしてると仲良しな感じがしない? もみもみ〜」


「唯。嫌なことは嫌だとハッキリ言わないと、ソフィアはどこまでも増長するわよ」


 まっ、リンゼちゃんも失礼だね。どこまでも増長なんてする訳ないじゃん。


 ……ただ、まあ。どこまでなら許されるか試すことはあるかもしれない。


 我慢の限界って人によって違うからね。

 限界を知ることによって、私はその人のことをより深く理解することが出来るのだ。言わばこれは、仲良しになるのに必要な私流の儀式なのだ。もみもみもーみっ。


 唯ちゃんがリンゼちゃんの言葉にどう返すのか、手遊びを継続しながら見守っていると。


「…………嫌、というわけでは、ないので」


 それだけ言って、ぷい、とそっぽを向いてしまった。揉み込んでいた手に微かな、しかし確かな感触をそっと残して。


 ……この子私を萌え殺す気かな? ちょっとさあ……唯ちゃんが可愛すぎて鼻血噴きそう。


 思わずだらしなく笑み崩れると、それを偶々見ていたカイルが「うっわ」とでも言いたげな顔をした。思わず魔力で攻撃するも、不可視なハズのその攻撃は首を曲げただけでひょいと軽く避けられてしまった。カイルのくせに生意気なぁあ!!


「ちょっと、二人で何楽しそうなことしてるのよ? ソフィア、今のどうやったの? 私にも教えてくれない?」


「えっ、いや……普通に魔力飛ばしただけだよ?」


 うっかり戦闘行動を取った私がミュラーに絡まれているのを見て、カイルがにやにやとしているのが心底気に入らない。気に入らないが、今はそれよりもミュラーを優先しなければならない事情がある。だってミュラーは――


「んー……こんな感じ?」


「神殿に帰ってから練習しようね!?」


 飛ばすな飛ばすな! 腕を振るうな、部屋が壊れる!! というかなんで私に向かって撃ってくるの!?


 無秩序に放たれた魔力を無力化する。もしかしたら「ソフィアなら受け止めてくれる」という信頼の証なのかも知れないけど、そんな信頼は熨斗を付けてお返ししたい。


「落ち着いてミュラー。ここ、お店。壊してはいけない」


「ソフィアが受け止めれば壊れないでしょう?」


 壊そうとするなって言ってるんですけど!!?


 なんとか説得できないかと悪戦苦闘している私の耳に、お姉様とカレンちゃんの会話が聞こえてきた。


「あなた達っていつもこんな感じなの? 元気が有り余ってるわね〜」


「えっと……あはは」


 お姉様。一見一番大人しそうに見えるでしょうが、私達の中で一番体力あるの多分その子だと思いますよ。


 ――とかなんとかやってる内に扉の向こうに気配を感じた。


 良かった。これできっとミュラーも止まることだろう。


 ……え? 止まるよね? ……止まる、よねぇ?


 …………本当に頼むよ??


ちゃんと止まりました。なにせ同級生組は、きちんと社会通念を持ち合わせた一般人ですので。

……まあ「ただしソフィアを除く」という注釈はつきますけどね。

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