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お泊まり、お風呂とくれば、当然……?


 ついでだからアネット商会の商品説明会でもしてあげようかと思い立った私は、皆を連れて神殿の居住区に位置する沐浴場へと移動していた。


 家に常備されているものと同じシャンプーリンスにコンディショナー。それに加えてトリートメントまでもがキチンと用意されてるのを確認し、それらの用途と効果、適切な使い方等をエッテを生贄に一通り実演。


 全てを説明し終えた頃には、あの戦闘狂たるミュラーまでもが目の色を変えていたことに若干の恐怖を覚えた。……が。


 ――その説明の最中、私は気付いた。……気付いてしまったのだ。


 ミュラーが「魔法の液体だわ!!」とコンディショナーを掲げ持つ面白楽しい光景以上に重大にして切実な問題が、私達のすぐ身近にまで迫ってきているという恐ろしい事実に。私は気が付いてしまったのだ……。


 その問題とは。


 実は。


 この沐浴場が。


 …………男女共用だという、ちょっと考えればすぐに分かる事実だった。



 ここで改めて確認しよう。今日から神殿で暮らすのは私を含めて全部で八名。

 その内訳はお兄様とカイルだけが男性。他は全員が女性という一種のハーレム状態と呼んでも差し支えないようなものとなっている。


 この場合のハーレム主人公は、口惜しいがカイルをおいて他にいないだろう。まさかお兄様のハーレムにしちゃうわけにもいかないからね。


 カイルが男の娘化してお兄様のハーレム加わることには何ら問題はないが、リンゼちゃんと唯ちゃんまでもがお兄様のハーレム入りを果たすのは私的にちょっと厳しいものがある。お兄様がロリコンというのはあまり嬉しくないものだし、なによりお兄様をお兄様と呼ぶのは私だけで充分という切実なキャラ被りの問題もあるからね。


 その点カイルが主人公枠ならば私は恐らく準主役級の重要人物。

 カイルの人格形成に影響を与えた悪女として……もとい、幼馴染みの可愛らしい少女として唯一無二の地位を築いていることだろう。


 ……いや、ごめん。言いすぎた。

 流石にカイルから「可愛い」と思われてる可能性は低そうに思う。


 メインヒロイン級ということも考えられなくはないのだけども、どちらかといえばギリギリ女友達くらいの認識が妥当じゃないかと。女友達の「女」すら外れて、ただの悪友扱いという可能性が私の中では濃厚だけどね。


 ともかく、そんな漫画の主人公みたいな立ち位置にいるカイルから見たら、この神殿暮らしは正に主人公として鉄板な王道中の王道イベントではないかと思うのだ。


 いいかい? 要素を取り出してよく考えてみるんだ。




 ――友達みんなで別荘(神殿)に泊まることになりました。参加者はその殆どが女の子です。


 メインヒロインのカレンちゃん、同僚にして女友達のミュラー、悪友兼幼馴染み(私)とその家族。


 そしてそして、今回から登場した新ヒロインたる唯ちゃんは、なんと現世に降り立った創造神様だというではありませんか。


 この国では見慣れない黒髪黒目。

 彼女が幼い見た目からは想像もつかない凄絶な過去に縛られていることを知ってしまったカイルは、気付けば彼女のことを目で追うようになっていて……。


『私は、神だから。誰かに頼るなんて出来ない』


『神様だって誰かに頼ってもいいんじゃないか』


 ある日の深夜。月光の下で交わされる神と人の相容れない会話。


 けれど、擦れ違う言葉を重ねていくうちに、彼女が本心では救われたいと願っていることに気付いてしまう。


『お前は神なんかじゃない! これ以上世界に縛られる必要なんて無いんだ!!』


『でも、私に任されたことなの! 私がこの世界を管理しないといけないの!!』


 激しく言い争う二人。

 熱の入った会話に、カイルは思わず彼女のことを抱きしめてしまう。


『なら俺が一緒に背負ってやる。一人じゃ重すぎる荷物でも、二人で分ければどうってことない』


『……そんな、こと。本当にできると思ってるの?』


『ああ、きっとできるさ』


 抱き合うような格好のまま、じっと互いの瞳を見つめ合う二人。



 ――神は堕落した。人に頼る弱さを知ってしまった。


「任せろ」と叫ぶ彼に、助けて欲しいと願ってしまった――



 涙を流す唯ちゃんの瞳を、優しく指先で拭うカイル。


 そんなただならぬ関係を思わせる二人の様子を、偶然通りかかったカレンちゃんが見てしまった。


『もしかしてカイルくんは、唯ちゃんのことが好きなの……?』



 混迷を増す恋愛模様。日に日に近づく神殿生活の期日。


 創造神という重すぎる宿命を背負った彼女に、凡人でしかないカイルに一体何が出来るのか。


 悩むカイルに、距離の近付いた二人の関係に危機感を募らせたカレンちゃんが取った驚きの行動とは。


 神という宿業を背負った少女。共に強くなると誓った騎士仲間の少女。


 カイルはどちらを選ぶのか。あるいは、第三の選択肢を選び取るのか。


 彼らの歩む未来は、まだ、何も定まってはいない――。




 みたいな。


 長々と妄想してしまったけど、要はそんな物語でも勝手に始めてそうな主人公属性野郎と同じ屋根の下で暮らしたりなんかしたら、まず間違いなくアレがあるよねって話。お風呂乱入イベント的なアレですよアレ。


 私一人のとこにお兄様が来るならそりゃもう大歓迎だけど、みんなで入ってるトコにカイルが入ってきたらギルティだからね。ボコボコに殴って記憶とか飛ばすよ。


 でもそもそも見られないのが最善なんだから、やっぱり対策は必要だよね。


 どうしよう、定番の罠とか仕掛けるべきかな? もしくは私達の入浴中はカイルの意識を飛ばしておくとか?


 うーむ、やりようは色々あるけどどれがいいかな。


 後でお兄様に相談しよっと。


ソフィアは幼少期のカイルを「自分の理想の男性像」となるように調教した為、割と好感度は高いです。

が、調教の過程で無茶なことをしていた自覚もあるので、カイルからの好感度は表面的な態度以上に激低だと思い込んでいます。

ソフィアは自分の思い込んだ世界の中だけで生きているので、ソフィアにとっては、それが紛れもない真実なのです。

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