カイルと学院の話をしよう
マーレと学院の、というかヒース様の話で盛り上がった数日後。
何故かお姉様がカイルを連れてきた。
「屋敷に入りずらそうにしてたから連れてきちゃった。ソフィアのボーイフレンド?」
「「違います」」
思わず全力で否定したらカイルと被った。悲劇だ。
しかも今のでお姉様の目がキラーンと光った気がする。
今何か考えたでしょう? それ、勘違いですから。そんな顔で見ても楽しいことは何も起こりませんよお姉様。だから「私は全て分かっているから」って顔止めて。
ロバート様と上手くいってるのは喜ばしいけど、お姉様の恋愛経験値なんてお姉様が思ってるほど高くないですから。
「そうだ、折角だからソフィアの部屋で三人でお話ししない? ソフィアとカイルくんが普段どんなことを話してるのか知りたいわ」
えー、そうくる? マジで?
カイルの用事をさっさと済ませてお姉様とイチャイチャしたかったんだけど、お姉様がいる場だと話進まなそう。どうしたものかな。
「カイルくんもそれでいい?」
「はいっ」
おいなんだ今の良いお返事は。初めて聞いたぞ。
どういうことだと見てみればカイルのやつ、お姉様相手にめっちゃ照れてるじゃん。ぷぷっウケるー。
結婚して色気を増したお姉様に当てられたか。ウブだねえ。いやそれも当然かな?
お茶目で可愛かったお姉様に今や色気まで加わったわけで、お子様のカイルが見蕩れちゃうのはもはや自然の摂理というもの。私のお姉様の可愛さにひれ伏すがいい!
ほら、見ろお姉様を! あの愛らしいウインクを! 可愛いでしょう!
その意味が「お姉ちゃん、ナイスアシストでしょ?」なんて的外れなのも含めて可愛い! ズレてることに気づかない天然なお姉ちゃん可愛い! あぁ可愛い!
「じゃあ、はい。手を繋いで行きましょうね」
「はいっ」
はあヤバい。久々のお姉様ヤバい。可愛さが天元突破してる。ロバートさんと結婚させて良かった。会えない寂しさを吹き飛ばすほど良かった。ブライさんグッジョブ。私もグッジョブ。
「お前いつもと雰囲気違くねぇ?」
「アンタもでしょ」
カイルが小声で話しかけてきた。
あーもー、うるさいうるさい。私は今幸せに包まれてるんだ、邪魔をするでない小童が。
そもそもアンタがいなかったら今はお姉様との姉妹団欒タイムだったはずなんだからね! 今からでも帰りなさいよもう!
「あら、内緒話? 仲がいいのね。ほら、カイルくんも手、繋ぐ? それともソフィアと繋ぎたいかしら?」
「え!? いえ、いいですいいです! 一人で歩けますから!」
「そう? 残念ね」
なんかお姉様も機嫌いいね。
もしかして男の子好きだったりするのかな?
カイルも顔はいいし、お姉様の前では猫被ってるみたいだから好みだったりするのかもしれない。
もしそうなら、私、カイルをお姉様好みに人格矯正するのも吝かではないよ。カイルもお姉様が気になるみたいだし可愛がって貰えるなら文句もないでしょ。
そこまで考えた時、後ろを歩くカイルが露骨にビクってしてた。
「……なんか今、悪寒がした」
「あらあら、風邪かしら? 後で暖かい飲み物を用意するわね」
嘘でしょ、気付かれた?
この警戒された状態で無理に調教するのはちょっと大変そうだな。
チッ、勘のいいヤツめ。まぁ今回は許してやるとしよう。
カイルを見るとついイジメちゃうソフィアも男子小学生と大差ないことにいつ気付くのか。




