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作者は誰だ!?


 青天の霹靂ってこーゆーことをいうのかな。


 私は今、どうやら作った覚えのないエロ本の作者ということでお叱りを受ける立場になっていたらしい。わぁー、ソウダッタンダー。


 …………っていやいや。いやいやいやいや。


 えっ、私がこれを? このえっちっちな本を作ったと仰る??


 ハハハ、お母様ってばいつの間にそんな冗談を覚えたんですか? お母様に下ネタなんて似合いませんよはははー。


「これ私のじゃないです」


 ひとしきり笑った後、真顔になって否定する。


 いやだって、こんなもの(エロ本)がお母様の執務室に存在するってだけでそりゃ腹がよじれるほど面白いけどさ。その本の作者が私だと疑われるのは心外ってもんですよ。


 私が作るならお母様対策なんて前提も前提。

 たとえ万が一があろうとも、お母様に私が作ったものだとは絶対の絶対にバレないように何重にも保険をかけるし。ていうか自分で作るというのがまず有り得ない。

 もしもの可能性は常に考慮して、バレた時には私の責任にならないように言葉巧みに人を動かして…………動かし、て……。


 あ、もしかしてそれで私が疑われてるのかな? アネットを(そそのか)して作らせたんじゃないかって?


 なるほどなるほど、今になってようやく呼ばれた理由を納得しました。


 つまりお母様はそこまで読んだ上で私を呼んだと。お母様はどこまで私のことを理解しているんでしょうかね。


 ……私もさ、自分でも思うよ。

 今考えちゃった通り、確かに私ならそれくらいの事はやりそうだって。アネットに作らせて自分は無関係を装う。いざバレちゃってもアネットだったら庇ってくれる。


 なるほどなるほど? 今がその通りの状況というわけだね?


 確かに状況だけ見れば私が限りなく怪しいことには同意するけど、残念、この件に関してだけは私は本当に無罪なんだ。


 大体ね、絵の題材見て気付くでしょ。

 なんで私が「世界初のエロ本を作ろう!」ってなって最初の作品がお父様と執事の絡みなのよ。肉親モチーフのエロ本は結構キツいものがあるよ。


 その嗜好が悪いとは言わないけど、確かに鑑賞に耐えるだけの作品ではあったとは思うけれども、最初の作品はそれじゃないでしょ。もっと他に作るべきものがあったハズでしょ。


 例えば、ほら。お兄様の寝顔百選とか。物憂げな表情ライブラリとか?


 お兄様は神聖な存在だからね。邪な欲望で穢していい対象じゃないし、目をスっと細めただけでも充分エロ……んんっ!

 とにかく、そういうことなんで。


 私が制作に関わってたら記念すべき第一作目がおじさん×おじさんなのはありえないという話だね。


 せめてショタっ子とかさ。

 第一作目なら健全な男×女から始めるのが王道だよね。


 シャルマさんみたいな包容力満点のお姉さんがアーサーくんみたいな生意気ショタを(おっぱい)理解さ(わから)せちゃうような作品とか……いかん、想像してはいけない。現実の人を題材にするのは危険すぎるな。うん、色々と危険だ。


 所詮は絵でしかないとはいえ、デフォルメの概念がまだあまり浸透していないこちらの世界の絵は、だいぶ写実的なので……その、情景が簡単に想像できるというか。描かれているのが誰なのかが確実に判別できちゃうというか。


 ……まあでも、多少は簡略化して描かれてた気もしたかな……?


 アンジェ程ではなかったにせよ、私としてもだいぶ見易い作品だったような……。

 ちゃんとコマ割りとかもしてあって、漫画の形式にはなっていたし……。


 ……。


 …………。


 …………ペラッ。


「……本当に、それを見るのは初めてなのですか?」


「はいぃっ!?」


 うぉっほいびっくりしたぁ!

 ええと何だっけ? ああはい、私がこの本を見るのは初めてですよ! いや中身を見てはいないけどね!!?


 ああ、ちょっと興味が先行して視野狭窄に陥ってた。そうだよ、お母様が見てるんじゃん。


 お母様の見てる前でエロ本の検分とか、変な事しなくても糾弾されそうで怖いですよね。


 奇声をあげた私を未だ疑り深い眼差しで見つめていたお母様が、再度、確認するように問い掛けてきた。


「それは貴女が作らせたものではないのですね?」


「はい。私はこんなものが存在すること自体、今初めて知りました」


 これホント。

 信じられないかもだけど、これが紛れもない真実だからね。


 そーゆー意味ではこの本の存在をお母様が先に知ったのはむしろ良かった事なのかもしれない。


 私が先に知っていたら、私はきっとこの本を隠したことだろう。私が作ったわけでも作らせた訳でもないのに、謎の罪悪感とかいたたまれなさに耐えかねてね。


 で、隠してた本が見つかる。

 私のじゃないと主張しても信じて貰えず、「ならなぜ隠していたのですか」と問われても納得いく答えを示せない。


 詰み。おしまい。


 そんな絶望的な状況に比べたら、まだ現状は救いのある方なんじゃないですかね。


 ――そう思っていたのだけれど。


「しかし、この妙な絵本は以前にソフィアが作ったものと酷似しているでしょう。そのことはどう説明するつもりですか?」


「そんなこと言われても……」


 まあそーなるよね。でも本当に知らないんだもん、しょうがないじゃん。


 だからね。私としても、ほんっとーに信じ難いし、今でも信じられない思いなんだけどさ。


 ……本当に、真実を暴きたいと願うなら。

 さっきからずっと黙ったまま俯いているアネットに、事情を聞くしかないんじゃないかな?


嘘をついていないと伝わってはいる。

でも、嘘をついていないだけではないかと疑われてもいる。


ソフィアはとても信頼されていますね(棒)。

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