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急募、誤解の根絶法


 授業は基本的にクラス単位で行われるし、他クラスと合同になったとしてもせいぜい三倍が限界だ。


 それに比べて食堂はひとつしか無く、食事の為に用意された時間は全学年共通。

 当然、学院中の全ての生徒が集まることを見越した座席数が確保されているとはいえ、人が多いことに変わりはない。


 ――学院の中で最も生徒が集まる場所は食堂。


 それは学院に通う全生徒が認識する、絶対普遍の常識である。


 故に、食堂は学年の垣根を超えた、唯一の社交場という一面も兼ね備えていて――。



「――だからソフィアがお昼になると姿を消すのは誰かと密会しているからじゃないかとか、そういう噂は当然出たんだけど。でも食堂で誰かと話している姿を見た人が誰もいなかったから『これはもしかして密会以上のことを……!?』なんて面白おかしい話が――」


「何も面白くないよね。それ、何も面白い要素ないよね!?」


 むしろ恐怖しかない。


 学院でそういう行為に及んでる人達がいることは知っているけど、私でその妄想を満たされるのは恐怖でしかない。

 先生方はちゃんと構内の見回りして! そして不純異性交遊を取り締まって!


 ――学院生活においてもっとも自由で、それ故に時間の使い方に個人差が出る時間、お昼休み。


 ヘレナさんの研究室に向かおうとしていた私とカイルには、新たに二名の同行者が同伴していた。


「二人で何処へ行くの?」と深い意味もなく聞いてきたミュラーに悪意が無いのは分かっている。しかし、教室でそれ以上の質問を許すことに恐怖を覚えた私は、周囲にも聞こえるように「良かったら二人も行く?」と彼女たちを巻き込むことにしたのだった。


 結果、女三人にカイル一人といういつものメンツでヘレナさんの元へと向かうことに。


 教室に居残るよりは遥かにマシなんだけど、それにしたって、ミュラーも最近私で遊ぶことが増えてきた気がする。


 遊ばれるような隙を作るのが悪いと言われればそれはその通りとしか言えないんだけど。

 あんまり変な遊びは覚えないでいて欲しいものだよね。


「私は、ソフィアは先生の所に行ってるのかなって、思ってた。勉強もすごくできるし、授業のことを聞いたりとか、してるのかなって。……学ぶことへの意欲が、ソフィアは強いから」


「……!」


 やはり弄られる対象から脱するためには身長が不可欠か、なんてことを思っていたら、予想外に嬉しい言葉が脳の奥へと飛び込んできた。


 今のカレンちゃんの発言を聞きまして? ミュラーさん。これが心の綺麗な子から見た公正なる私の評価ですのよ。おほほほほ!


 やっぱり見てる人はちゃんと見てるんだよねぇ、うんうん!


 そうとも、私は学びを得る為にヘレナさんの研究室に通い詰め、魔法の勉強だとか魔法陣学の勉強だとかを推し進めていたのですよ。遊び呆けていたわけでは断じてない!


 しかもその遊びの内容が男遊びだなんて……あるわけないよね。

 ヘレナさんの研究室は、多分この世界の中でそういうことにもっとも縁遠い……いや、これ以上は何も言うまい。


 ヘレナさんは素敵な女性。

 シャルマさんそれを上回る素敵さと素晴らしさを兼ね備えたパーフェクト美人。


 とりあえずそういう事でいいんじゃないかな。


 そんな会話を三人で交わしつつ、楽しく歩みを進めていたら、あっという間に目的地へと到着していた。その途端に今まで蚊帳の外だったカイルが急に元気に叫び出す。


「おい、お前ら着いたぞ。あんまり失礼なことするなよ。……特にソフィア!!」


 ズビシッ! と指を突きつけられたので、片眉を上げることで不快感を示しておいた。


 てゆーかカイルの中では部屋の真ん前で大声出す行為は失礼に当たらないんですかね。指突きつけるのも普通、大概失礼な行為だと思うんですけど。


 失礼を禁じた本人により失礼が量産されるとい喜劇じみた現象に、しかしミュラーは別の感想を抱いたようだ。


「なんでソフィアだけ?」


「入れば分かる」


 なんだその説明。私はいつ何処でだって超絶可愛い愛の天使ソフィアちゃんですよ。


 …………いや、愛の天使は、ちょっと、言い過ぎたかもしれない。


 訂正。私は見た目の愛らしさで見るものを癒す、クラスのマスコット的少女ソフィアちゃんである。

 ちっちゃくてもちゃんと同級生だから安心してね! でもエッチな話だけは勘弁な!!


 心の中で謎の自己紹介を終わらせた私をまるっと無視して、三人は既に扉を開けて部屋の中に向かい「失礼します」と挨拶をしていた。私もそっとその後に続く。


 急に何人もの生徒たちが入ってきた研究室の中では、ヘレナさんがビックリして慌てて立ち上がってる姿が見えた。


「き、急にこんな、どうしたの? あっ、あなたソフィアちゃんの彼氏クン? ……! もしかしてソフィアちゃんに何か――」


「「彼氏じゃないです」」


 カイルとハモった。

 でもでも、急にそんなこと言われたらハモりもするって!


 てゆーか、いるから。私、ここにいますから。見えづらいかもしんないけどちゃんと居るもん!! いくらなんでも見逃すほどちっさくはないでしょ!?


 思わず睨んでしまった視線を受けても、ヘレナさんは「あ、いたのね」と安堵した顔。ヘレナさんはそれで良いかもしれないけど私は良くない。私を見逃したことに関して納得のいく説明を貰おうか!!!


「ねぇ、今のどういうこと?」


「はわ、あわわわわ……」


 しかし今の彼氏発言により、ミュラーとカレンちゃんに謎のスイッチが入ったようだ。ミュラーの目が若干据わっていて見られてるだけでちょっぴり怖い。


 ……まずはシャルマさんさんの美味しいお茶を頂いて、落ち着いてから話をしようか!!


ヘレナの中で、カイル少年はソフィアちゃんの想い人ということで結論した。

ソフィアにとっては良い迷惑である。

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