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物のついでに各所へ通達


 とりあえず神殿騎士団のメンバーを招集して、「近々ヨルよりも上位の神様と会うことになるよ〜」とだけ伝えておいた。


 戸惑いと驚き。そして困惑。


 あらかじめ私が突拍子もないことを言うと予測していたカイル以外は総じて予想通りの反応を示したけれど、その中でただ一人、ミュラーだけが他とは違う感想を抱いていた。


「彼女よりも上位の……。……フフ、フフフ。それはさぞかし挑み甲斐がありそうね……」


 ストップですよ、そこのスットコドッコイ。


 ミュラーが戦い好きなのを否定する気は無いけど、神様の格と戦闘力の高さは別にイコールで結ばれてるわけじゃないからね!? そこんとこ誤解して無闇矢鱈に襲いかかったりとかしないよーにしてよね!?


 ミュラーは私の相手をし過ぎた影響で見た目の幼い少女にも容赦なく襲い掛かりそうな予感がしたので、その旨注意を促すと、なんとも不思議そうな顔で「強くないの?」と聞かれてしまった。


 たとえ強かったとしても襲うなよと言いたくなるのを何とか堪え、素直に「戦いは素人だと思うよ」と答えたところ、ミュラーは見るからに消沈して「そうなの……」と物凄く残念そうにしょぼくれてしまった。


 ……キミは神様を一体なんだと思っているんだ。


 まさかとは思うけれど、武門の人にとっての神様とは崇めるものではなく戦いを挑む対象なのかな?

 そこんとこどーなんですかねとカイルに視線だけを向けて問いかければ、「そんなわけないだろ」と呆れ顔で溜め息など吐かれてしまった。


 だが残念。お前が呆れた相手はそちら側の人間なのだよ。


 そもそもミュラーの暴走はカイルに任せるって、こちとら神殿騎士団のメンバーが決定した時から心に決めているんですよね。

 カレンちゃん共々是非とも彼女たちを正道に導いてやってくれたまえ!! 期待してるよ常識枠さん!



 一般人やるのも大変だよねーと責任を丸々放り投げつつ、私が招集した報告会は、こうして終わりを告げたのだった。



◇◇◇



 授業を挟んでの次の休み時間。


 ――そうだ、ついでにヘレナさんにも報告しとかないと。今日は唯ちゃんの為にすぐ帰んなくちゃいけないからね。


 そう考えて教室から出た私の後ろを、一定の距離を保ったまま着いてくる影。


 今日はどこの変態に見られてるのかと思ったら、ストーカーの正体はカイルでした。


 まあとっ捕まえて尋問するよね。親しい友人が変態にでもなってたら困るからね。


 初めから隠れる気も無かったのか、手招きしたら普通に近寄ってきた。

 もうちょっと女子を尾行する行動に罪悪感を持って欲しい。


「なんで着いてきたの?」


「着いてこられると都合悪いことでもあるのか?」


 いや無いけど。無いけど、お前もし私がトイレに行こうとしてたらどうするんだ。トイレに向かう女子に着いてくるとか変態の謗りを免れないぞ。


 勇気あるチャレンジャーだなと思って見つめていると、その視線をどう勘違いしたのか、カイルは揚々と語り出した。


「どーせあの研究室に向かってるんだろ? あそこなら報告する相手は大人だし、美味しい菓子が出ればお前の口も緩むし、さっき聞けなかった話も出てくるかもしれないと思ってな」


「そーですか」


 てゆーか結局話すんならなんで一回無駄に突っかかってきたんだ。一回目で言えばいーじゃん、素直によぅ!


 反抗的なのも背が高いのも全てがムカつく。

 今日はやけに自白が早いし、むしろ私の背が低いことを当てこする為だけに着いてきたのではないか、なんて事すら思えてきた。


 カイルと並んで歩くと心がミシミシと悲鳴をあげる音が聞こえてくる気がするんですよね。同級生の影に顔まですっぽり収まっちゃうのって、結構心にくるものがあるんですよ。


 分かってる。気にするだけ無駄だって理解してる。

 それでも悲しんじゃう心の動きは止めようがないというかね? 出来れば直視したくない現実というか……。


 だ、男子と女子に身長差があるのは自然なことだもんね! 私がカイルよりもちょぴーっとばかし背が低いことくらい、特別気にするようなことじゃないんだもんねー!


 何かに耐えきれなくなった私の心が、精神を守るべくそんな言葉を胸中で叫ばせた。


 心を守る為に思い浮かべたはずの言葉は、しかし、私の心に平穏をもたらさなかった。余計に惨めさが際立っただけだったよ……がっくし。


「なにしょぼくれてんだ? ほら、着いたぞ」


 カイルはいーよねー。背が高くてー。順調に着々と成長しててさー。


 私なんか、私なんかなぁ……!


 ふーんだ!!!


 身長差のこと考えていたからか。はたまたカイルの身体をじっくりとっぷり眺めたせいか。なんだか段々とカイルのやつが長身のイケメン風に見えてきた。これが気の迷いってやつかな。


 いや元々顔はいいんだ、知ってるけどさ。


 てゆーか、片足に重心を乗せて立つな。無意味に首筋を撫でるな。「ただしイケメンに限る」で代表されるようなポーズを次々と取るんじゃないよ! カイルのくせに生意気な!


 お前なんか腹掻いて女子に幻滅でもされてればいいんだ!! うわーん!


「失礼します!!」


「えっ、おい!」


 荒ぶる感情のまま、礼儀も放り捨ててヘレナさんの研究室へと踏み込んだ。



 今日はおやつ貰うつもりは無かったんだけど……。

 この悲しみは、お菓子でも食べないとやってられないかも分からんね。


背が低い=手足が短い=短足ぅ!!

ソフィアさんは学院で毎日のように小ささをネタに弄ばれている為、鬱屈した思いが蓄積しているようですね。

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