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Destino  作者: 一二三六
1.岡崎栞
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55話「答え合わせ」

 それから俺は自分の部屋でテスト勉強をしながら、父さんへ電話をする時間を待っていた。ちょうどあっちが昼時なら昼休みで時間もできるだろうし、こちらもそう遅くはない時間なのでちょうどいいと思った次第だ。なので21時半過ぎぐらいにかけて、あちらが昼の12時30頃になるよう調整する。だけれど俺は今にも真相が聞きたくて聞きたくてしょうがなかった。ぶっちゃけ、勉強も気がそぞろ。『工藤』関連のこと、俺のこのペンダント、そして岡崎おかざきのこと。訊きたいことがいっぱいある。俺はまだかまだかと焦燥感に駆られながら過ごしていた。


「――よしっ、そろそろだな!」


 いい頃合いになったのを見計らって、俺はいよいよ父へ電話をする。そして数コールして、父さんが電話に出る。


「もしもし、れんくん? 待ってたよ、どうしたの?」


「や、どうでもいいことなんだけど――」


 そんな前置きをして、今までの経緯を話す。父さんはどこかわかったような素振りで、俺の話に相槌あいづちを打っていた。


「ふーん、そんなことがあったんだ」


「うん、で、どうなの?」


「じゃあ、まずは『工藤くどうはじめ』からだね。肇くんは煉の言う通り、学生時代からの親友だよ。あと、士郎しろうくんも光也みつなりくんもね」


 まずは予想通りの答えが返ってきた。あれだけ一緒に写っていてただのクラスメイトだ、なんてなったら意外だけど、それはないだろう。


「へぇー、じゃあその最後の『光也』さんってもしかして――」


「うん、そうだよ。光也くんは煉くんの想像している通り、しおりちゃんのお父さんだよ」


「ってことは、岡崎は――」


「そう。昔ここにいて、つい最近そっちに帰ってきたの」


 まさかの俺の仮定が正解であった。やはり岡崎栞と俺は昔に会っているんだ。だから岡崎は最初にあんな反応をみせた、と。なんかとてつもないスッキリ感と当たっていたという優越感が湧いて出て来る。


「そうだったんだ……んじゃ、工藤肇さんも誰かの……?」


 そして、もう1つ不思議に思っていたこと。それは工藤だけはその子供がここにいないということだ。他の3人は子供がいるのに。もちろん未婚ということもあるだろうし、この島を既に出ているという可能性もあるけど。


「――言うけど、ビックリしすぎないでね」


 父さんはいきなりそんな前置きをして、まるでテレビみたいに引き伸ばす。


「ああ」


「肇くんはキミの親だよ。だから煉くんの本当の名前は『工藤煉』っていうんだ」


「えっ――」


 ホントに驚き過ぎて心臓が止まるかと思った。まさかここまで繋がってしまうとは。でもそう考えると、納得がいく。あの例のペンダント。なぜ俺が持っているのか。それは彼が俺の親だから。それを譲り受けたってわけか。


「じゃ、じゃあ、このペンダントは……?」


 でも、まだこのペンダントが何なのかまでは分からない。なぜ俺がこれを譲り受け、身につけているのか。俺の記憶が始まってからずっと、疑問に思っていたこと。その謎が今、解けるのかもしれない。


「それは答えられないね。自分で答えを見つけたほうがいいよ」


 と思いきや、意外にも父さんはその答えをもったいぶってしまった。


「ええー?」


「ハハハ、でも僕としては煉くんの力で答えを見つけてほしいな」


 それは人に訊かず、自分で見つけた方がいい理由があるということか。つまりは、俺はこのペンダントと記憶のない期間に何かしらの出来事があったと。なんとなく、今まで謎と思いつつも外す気になれなかったんだから、やはり何かあったんだろう。それはやっぱり自分で見つけてこそ、意味があるのだろうし。


「そうだ、工藤家の住所教えとくね……ええと――――だよ」


 俺はそれを適当なルーズリーフに、汚い字で書き留めた。やはり驚き過ぎていたのか、その書く手が震えていた。


「んじゃあさ、俺が解いたこの暗号の意味って?」


「その暗号も、工藤家に行けばわかるよ。後、先手を打っておくと『Destino』もね」


 父さんは次に俺の言うことがわかっていたかのように、そう先出しをしてくる。あの暗号も、『Destino』も全てはあの『工藤』が発端なのだから、やはりその家に秘密があるのだろう。


「わかった、ありがとう」


「僕にはいつでも連絡してきていいからね、じゃあ頑張ってね、煉くん」


「うん、そっちもお仕事頑張って」


 父さんにそう別れの挨拶を告げ、俺は携帯を切った。切った後もしばらく放心状態で、動けないままでいた。



 月光が窓からさす中、俺は自分のベッドの窓辺に座って考え事をしていた。正直、まだ心がドキドキしている。頭の中もぐちゃぐちゃで訳が分からなくなってきた。一旦、心を落ち着けて状況を整理してみようと思う。


 まず明日美の父は渚たち及び岡崎の父さん、そして『工藤肇』さんと同級生で仲が良かった。更に加えて、その『工藤肇』さんは正真正銘、俺の父親であるというわけだ。そして『岡崎栞』は最低でも、小学校から去年の12月までの間、島を離れていた。俺の記憶のない期間は知らないが、記憶のある期間から考慮しても、これで間違いないだろう。もちろん俺とは別の小学校に通っていたということもありえるが、そもそも俺と明日美が通っていたのが岡崎の家の方にある小学校だ。当然、彼女も俺たちの方面の別の小学校に通っていたという線もなくはないが、今はこれで結論とする。


 以上のことを踏まえ、そして父さんの証言を元にすると、どういう関係だったかまでは分からないが俺と岡崎は『小さい頃に会っている』のは確定だろう。そしてそれが俺の『記憶のない期間』の出来事だった。だから俺は覚えておらず、彼女は覚えていた。記憶がなかったとはいえ、最初の再会の時、彼女を傷つけてしまったのことが本当に悔やまれる。その時の岡崎はさぞ悲しかったことだろう。だからそれからの態度がああなってしまったんだろうし。ただ岡崎関連の謎はスッキリしたが、まだ腑に落ちない部分がある。


 俺と岡崎が持つこのペンダントは何なのか?

そして『Destino』とやらに関わりがある『工藤』という存在。

また、俺はなぜある一定期間の記憶を失っているのか。

それもこれも明日にでも工藤の家、つまりは俺の実家に『帰れば』わかるのだろうか。

今はただそうなることを祈りつつ、興奮冷めやらぬまま、ベッドに横になった。

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