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Destino  作者: 一二三六
プロローグ
19/120

18話「レクリエーション」

 5限目が終わり、6限目までの中休み。いよいよレクリエーションが始まる。みんなが着替えている中、俺は相変わらずのブレザー姿であった。なんとなくこういう時に気まずい感じがするのは俺だけだろうか。それはともかくとして、面倒事が1つ俺の元へと舞い込んできた。『学年委員はレクの準備をする』というのだ。ホント、学年委員というのは損な役回りばっかりだ。こんなの体育委員にでもやらせればいいのに。そんなこと思いつつ、気分が乗らないが俺は一足先に体育館へとさっさと向かっていった。


「――秋山あきやまくん、だらぁーっとしてないで、シャキッとする!」


 それから俺は他の学年委員と共に体育館でレクの準備にあたっていた。男子はバスケをやるので特にこれと言った準備はなかったが、女子はバレーボールでそのネットを出さなければならなかった。まずそれを張るための専用の棒を出すのだが、それがとても重たく、やはり女子の意見で男子の担当となってしまった。それはただひたすらに面倒で、ダルい作業だった。そんなところをあのガミガミ言ってくるウチの委員長に目をつけられてしまい、俺に姑みたいに口やかましくお小言を言ってくる。


「はいはい、ちゃんやりますよー」


 それをやるの気ない感じであしらいつつ、相変わらず準備を続ける。後は得点のボードと、タイマーを用意するだけ。そんな準備をしているうちに次第に生徒が続々と集まっていき、準備が完了する頃にはもう既に生徒ほぼ全員が来ていた。


「はーい、全員しゅごーう」


 それからしばらくしてチャイムが鳴り、先生の掛け声で一旦みんなが整列して集まることに。そして先生はルールの説明を淡々と始める。クラス対抗のトーナメント形式で勝負をして、優勝クラスにはお菓子がもらえるみたいだ。なんか労力の割にはその程度か、と思いつつも俺は先生の話を聞いていた。


 そして話も終わり、いよいよ男女に分かれて試合が開始される。俺たちのクラスの試合はまだなので、コート脇でそれを観戦することとなった。その最中、


「なあ、一つ訊いていいか?」


 俺の隣でわざとらしく準備体操をして、いかにもやる気満々をアピールしているアイツに話しかけてみる。


「なんだ、れん?」


「なんでそんなにやる気なんだよ?」


 修二しゅうじは今日はやたらやる気のようで、めちゃくちゃ気合が入っているのが見てわかった。ただ、これはあくまでもただのレクリエーション。言ってしまえばただのお遊びだ。別に勝ったところで、きっとやっすいちゃっちいお菓子がもらえるだけだろう。だからこそ、俺は修二がそこまで本気になる理由がわからなかった。まあ考えられるとしたら元バスケ部のコイツだから、今日のバスケに気合いが入っている……と言ったところだろうか?


「ん? だってバスケで負けたくねぇだろ?」


「ああ、そういうことね」


 俺の予想はどうやら当たっていたようで、『バスケで恥をかきたくない』ただそれだけのためのようである。バスケットプレイヤーのプライドというやつなのだろうか。ただ、それでこれだけ熱くなれるコイツに、俺はほんのちょっとだけだけど感心していた。コイツの実力ならマジで1位を取れるだろう。


「それにさ、ここでカッコイイところみせれば、あっちで見てる女子が俺に惚れるかもしれないじゃん?」


 珍しく真剣だと思っていたら、やっぱり下心があったようだ。俺の感心を返せ。そう心の中でツッコみたくなるほど、その発言には失望させられていた。しかもコイツの顔、モテた自分を妄想しているのかアホみたいにニヤニヤした顔になって、鼻の下も伸び切っていた。もう気持ちが悪いことこの上ないそれだった。所詮は女のためか。コイツはよっぽど彼女がほしいようだ。コイツ明日美と他の女の子たち、どっちが大事なんだろうか。明日美のこと好きなはずなんだけどな。ホント、まさにこれこそがコイツがモテない理由だろう。


「アホらしい……」


 俺はそんなアホの修二に毒づきながら、試合を見ていた。でも、さっきの修二の発言で俺にもちょっとギアが入っていくのが分かった。遊びとは言え、ここで負けるのはちょっとに落ちない。やっぱりゲームは勝ってこそ意味があるからね。この間ぶりの俺と修二のコンビプレイで勝ってみせますか。俺はそう意気込み、自身を鼓舞し、俺たちのクラスの試合が来るのを待っていた。


「――続いての勝負は4組対1組です! 準備してくださーい!」


 それから数試合を挟んで、いよいよ俺たちの番が回ってくる。俺は修二に『絶対勝つぞ』という一言を伝え、俺のやる気をアピールした。それから俺たちは持ち場につき、試合がいよいよ開始される。流石は修二、素人とは一線を画するプレイでガンガンと相手を抜いていき、ゴールを決めていく。それを見て、俺も負けじとゴールをかっさらっていく。もちろん、1人だけのプレイではなく、俺と修二のコンビプレイで華麗に相手をかわしながらのプレイもせる。そんな試合内容で、俺たちは最終的に圧勝。そしてそれから第2試合、第3試合と余裕の勝利を見せ、なんと優勝をもぎ取った。


「やったー!!!」


 その結果に、クラスのみんなは喜び勇んでいた。テンションが上ったのか、胴上げなんてする始末。ただのレクとは言え、久々に熱くなった俺だった。女子たちの方はどうやら3組、つまり渚たちのクラスが優勝したため、残念ながらダブル優勝とはならなかった。そして優勝の商品として、クラス分のお菓子が授与された。もちろん予想通り、量産型の安いお菓子で、たいした量もないそれだったが、楽しかったのでよしとしよう。クラスメイトの歓喜の熱が冷めやらぬまま、レクが終了し、そのまま放課となった。

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