15話「姉への事情聴取」
それから俺と凛先輩はバスに揺られながら、今度は学園近くのバス停で降りる。そしてそこから歩いていつもの並木道で解散することに。そのため俺と凛先輩は夕暮れの通学路を歩いていた。凛先輩は未だにテンションが高く、全くもって疲れていないご様子でいつもの感じで俺と話していた。改めて、凛先輩の元気さのすごさを実感させられた。俺の方はというと、結構クタクタだった。だいぶ疲れてしまっている。もちろん楽しかったことは間違いない。だけど、『楽しい』に伴うのは『疲れ』だ。楽しければ楽しいほど、体も精神も疲れるものなのだ。
「じゃあ、ここでお別れだね。煉くん、今日は楽しかったよー!」
それから雑談していると、ようやく並木道へと辿り着く。そこで、凛先輩は相変わらず元気な笑顔で、そう言ってくれる。
「はい、俺も楽しかったです」
これはホントの気持ち。ぶっちゃけ凛先輩とのデートはノリ気じゃなかったし、ちょっと嫌だった。けど、実際してみると案外楽しかった。俺も熱くなれたし。後は腕に抱きついてくる等の激しいボディータッチを辞めてもらえれば完璧なんだけど。
「よかったー! じゃ、また明日ねー!」
凛先輩は元気そうに手を振りながら、俺とは反対方向の道へと去っていった。俺はそれに手を振り返しながら、見えなくなるまでそれを続けていた。そしていなくなったところで、俺も我が家へと帰ることにした。今日は本当に疲れた。さっさと家に帰ろう。それにたぶん明日美もいるだろうから、とことん問い詰めてやらなきゃな。そう決意し、家への道を歩き始めた。
「――ただいまー……」
家に着くと、だいぶお腹が減っていたので、まずリビングへ向かうことに。おそらく今はちょうど夕食時なので、明日美が作って待ってくれているかもしれない。
「あっ、おかえり」
キッチンで俺の予想通り、明日美が夕食を作っていた。俺に気づいたようで、そう挨拶する。
「うん、ただいま」
「どうしたの? すっごい疲れてるみたいだけど……」
明日美は俺の事情を知っているはずなのに、白々しくそんなことを訊いてきた。
「分かってるくせに、一日凛先輩に振り回されてたの。すっげぇ疲れた……」
「ふふ、ごめんねーうっかり凛に言ったら『私もしたいなー』とか言うんだもん、断れなかったんだ」
できれば『うっかり』言わないでほしかった。凛先輩には悪いけど、どっちかと言えばホントは明日美とデートしたかった。もちろん楽しかったけど、その代償があまりにも大きすぎる。
「こっちはそのせいで、かなり疲れたんですけど……」
「ホント、ごめんね! その埋め合わせと言っちゃなんだけど、今日は煉の好きな料理尽くしだよー!」
明日美の言う通り、作っている料理や既に出来上がっている料理はどれも俺の好きな料理ばかりだった。
「そんなんじゃねぇー……子どもじゃあるまい」
でも俺はそんなにちょろい男ではない。好きなものを作ってくれたのは嬉しいけど、それで許せるかと言えばまた別だ。
「だよねーまあ、大丈夫だよ。ちゃんと私もデートもするし、お詫びとして一つだけお願いごと聞いてあげるから」
「いや、デートはもういい……」
もうしばらくはデートはいいかな。疲れるし、そもそも俺にお金ないし。
「ふーん、ホントは私とデートしたかったんじゃないの?」
「な、なな、なわけないだろ!」
思っていたことを見抜かれてちょっと焦っている自分がいた。別に明日美が思っているような理由じゃないけれど、でも本人にそう言われるとやっぱり恥ずかしい。
「ふふ、冗談よ、冗談」
「はぁー……疲れる……」
そんな明日美に翻弄されつつ、俺も疲れているが、夕飯の準備の手伝いをすることにした。そしてそれから俺はさっきの『願いごと』を叶えてもらうことにした。その内容は『クリパのための資金を貰う』こと。一応それを明日美は了承してくれたのはいいのだが、しかし『願いごとの内容』と『なぜ計画的にお金を使わないのか』について食事中に散々説教されてしまった。流石にお金の方については不可抗力だろう。俺は悪くねえ。デートだって本来は凛先輩じゃなかったわけだし、電話番号だって修二が悪いんだし。あと、願いごとの内容は別に本人の自由でいいと思うんだが。結局、食事も好きなものは食べれたが、明日美の説教で精神的な疲れがどっぷりたまり、風呂に入った後すぐにベッドインでそのまま就寝となってしまった。