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Destino  作者: 一二三六
プロローグ
15/120

14話「熾烈な対決」

 バスに揺られることしばし、りん先輩と雑談でもしながら過ごし、目的地の南部地域へと着いた。今日は日曜日だからか、人が多くごった返していた。ということは学園の人間に見つかる可能性が高そうだ。その心配だけが俺の頭に残りつつ、俺は凛先輩に連れられてゲーセンへと向かった。凛先輩の目はまるで子供のように輝いて、とても楽しそうにしていた。俺のなけなしの金を使うのだから、その分ちゃんと楽しなければ損だろう。俺もここでは思う存分楽しむため、遊ぶ気持ちにスイッチを切り替える。一応名目上はデートなのだから、楽しくいかないとね。


「ねぇーれんくん、まずこのゲームやろうよ!」


 凛先輩がそう言って指差したゲームは、格闘対戦ゲームだった。


「いいですよ」


 この手の対戦ゲームは一度やり込んでいた時期があって、かなり自信はあった。が、しかし思うようにはいかなかった。それは先輩の腕もまた確かなものであったからだ。ハメ技や、その他のテクニック、それを知り尽くしている。おそらく、先輩はこのゲームをやり込んでいるな。そうあっては俺も負けるわけにはいかない。そんなやり込んでいた時のプライドが再燃しつつ、俺は必死で凛先輩と戦っていた。


「よしっ! やりぃー!!」


 熱い接戦に勝利したのは俺であった。久しぶりにゲームで熱くなってしまった。でも、その勝利の嬉しさは確かなものだ。やっぱり強い人に勝つってのはとても気持ちがいい。


「あー! 負けちったぁー!」


 勝利に喜んでいる俺に対し、凛先輩はちょっと悔しそうにしていた。


「凛先輩、意外と強いっすね」


「うん、小学校のときかなりやり込んでたからねー」


「へぇー意外」


 やり込んでいた、というのはプレイ中にも予想はできていたけれど、そうやって凛先輩がゲームをやり込むというのが意外だった。


「そう? 結構普通だと思うけど」


「女子ってあんまりゲームしないイメージがあるじゃないですか」


 偏見かもしれないが、そんな感じがする。俺の周りの例であげれば、明日美あすみもあまりしないし、諫山いさやま姉妹もしないし。俺の女子基準が彼女らだから、そう感じるのかもしれないが。


「まあ、そうかもねー明日美もつくしもゲームあんましないし」


 そんな雑談をしながら、対戦ゲームを離れ、他のゲームに行くことに。そしてちょうどUFOキャッチャーのコーナーのところで、凛先輩はおそらくその中の商品に目をつけ、まるで子供のように早足でそちらの方へと向かっていった。


「ああー! このぬいぐるみかわいいー!」


 凛先輩が指したのは、大きめのクマのぬいぐるみだった。すぐにやる気になってようで、お金を入れてゲームを開始する。凛先輩は頭から引っ掛け、それを取ろうとしたが、掴み足りずに落ちてしまう。

そしてその結果、ぬいぐるみの体勢が横になってしまった。


「先輩、ちょっと1機やらせてくださいよ」


 先輩の許可を取り、俺はお金を入れて、ゲームを開始する。さっきのは横に倒れてより取りにくくなったので、別の同じぬいぐるみを狙うことに。幸いそのぬいぐるみには首輪がついていて、引掛けポイントがある。なので、そこにうまいことアームが入るように調整し、ボタンを押す。するとうまいこと俺の予想通りの軌道を描き、紐に引っかかる。そして、そのまま景品が持って行かれ、そのまま穴へと落ちていく。


「うわー! すごーい、煉くん! ありがとー!」


 景品口からそれを取って渡すと、凛先輩は子どもみたいに喜び、そのぬいぐるみに抱きついていた。


「そっ、そんなことないっすよ」


 俺はちょっと照れながら、その感謝を受け取る。それから俺たちはコインゲームやカーレースゲームなどなど様々なゲームをやった。凛先輩はおそらく結構ゲームをしているようで、中々に手強く、俺も負けることがしばしばあった。そして気づいた時にはもう既に財布の中身は殆どなくなってしまっていた。これではクリパでまともに遊ぶことは難しいだろう。まあ、楽しんだからいっか。


「一通りゲームもやったし、そろそろ時間だし、帰ろっか」


 楽しい時間は過ぎるのが早く、もう時間もいい時間となった。


「そうっすね」


「あっ、そうだ! 最後にフォトクラ撮ろうよ!」


 ゲーセンから外へ出ようとするところで、凛先輩はフォトクラのコーナーを見つけて、思いついたような顔でそんなことを言ってくる。


「えー……」


 ぶっちゃけ恥ずかしかった。なんとなくそういうのは女子同士とか、カップル同士がやること。あと俺はそんなノリの人じゃないし。


「そんなあからさまに嫌な顔しない! ほら行くよ!」


 そんな俺の意見も虚しく、俺は凛先輩に腕をつかまれ、強引に連行されていた。入った場所はあきらかに女子専用のものだった。そこで強制的にフォトクラを撮らされた。ホント、つくづく強引な人だなと改めて思った。それからフォトクラを撮って満足してもらえたようで、俺たちはようやくご帰宅することとなった。

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