神様、お願い!
初投稿、です…
深夜の孤児院前に若めの男性と老人の姿、男性の手には赤子が眠る。
「ここでよろしいでしょうか。」
「いいじゃろ、ここに害のある人は居ないからの。」
「ありがとうございます… 元気に育ってくれよ!じぁな…」
男は寂しそうに赤子を扉の前に置く。赤子が泣き出したが、その声を背中に2人の姿は闇に溶けた。
ーー(孤児院)ーーーーーーーーー
「おはようございます!」
早朝から少女の元気な声が聞こえる。
「あら、シーナ、おはよう。今日はいつもより元気ね。」
シーナに美人の35歳前後であろう女性、クレアが挨拶を返す。
「そりゃ、今日は12歳の誕生日だよ!元気じゃないわけが無いじゃん!」
「あら、もうそんな年なのね」
「もう、クレアさん!忘れないでくださいよ!」
「ふふふ、ごめんなさいね」
少し怒った様な雰囲気のシーナを他所に、クレアは嬉しそうな、しかしどこか暗い表情をしている。
この世界では魔法が存在し12歳になると魔法の属性検査を行わないといけない、という規則が存在する。
もし行かなくても罰は無いが、自分の属性が明確に分かっていないと魔法が使えないため、殆どの人は検査を受けている。
「じゃあ行ってくるね!」
「もう行くの?」
「だって気になって夜も寝られなかったんだもん…
てことで行ってきます!」
「行ってらっしゃい…はぁ、火の魔石代を浮かすために火属性なら嬉しいんだけど…なんちゃって」
シーナが出ていって静かになった孤児院内に、クレアの呟きが響いた。
ー(教会)ーーーーーー
「すいませーん、属性検査をして頂きに来ましたー!」
教会へ来たシーナは大きな声を上げながら扉を開いた。
そこには爽やかな青年がひとり居るだけ、その彼が優しくシーナに話しかける。
「よく来たね、こっちへいらっしゃい。すぐ始めるかい?」
青年が誘導するように奥の台へ向かう。
「はい!よろしくお願いします!」
遅れまいとシーナは奥の台へと歩みを進める。奥の台には中央に大きな石、そしてその周りを囲むように赤、青、緑、茶、白、黒の6つの綺麗な色の宝石が埋め込まれている。色はそれぞれ属性の火、水、風、土、光、闇を表している。
「では始めるよ、ここへ手を乗せて」
青年が中央の石を指差す。
「はい、分かりました」
シーナが石に手を置いた。
「………あれ?反応しないな」
「え?そんなことあるんですか?聞いたことありませんけど」
「僕も数年ここに務めているが、こんな事は起きなかったし、聞いたこともない。少し手を離してくれるか?」
青年はそうシーナにいい、彼女は了承し手を離した。
そして青年が石に手を当てると、緑と白の石が光り輝いた。青年が風・光属性に適性がある証拠だ。
「検査機は正常に動作している…と思う。非常に言い難いが、君はこの世界で極めて珍しいの属性が無い人間なのかもしれない」
「え…」
シーナは時が止まったかのように動きを止めてしまった。
「まあ、もしかしたら検査機の不具合かもしれないし、今日の所は帰って明日またおいで!」
青年は慰めるようにそう言った。
「はい、分かりました。ありがとうございます…」
青年は教会を出て行く小さい少女の背中を眺めた。
「属性が無いなんて本当に有るのか?明日またあの子の悲しそうな表情を見るのは辛いな。」
その言葉は誰に聞かれるでもなく消えた。
帰り道、シーナは暗い表情を浮かべていた。
「はぁ、神様。もしいらっしゃるなら私に魔法をお授け下さい!」
何の気なしに彼女はそんな言葉を口にした。
「………まあ、誰も返事な「ええぞ〜」んてしてく…え?」
「ええぞ〜」
そして突如現れた光に飲み込まれ、シーナはその場から姿を消した。