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ゲームの世界へようこそ!

 おいおいおい! どういうことだよ!

 夜の村の校外で地団太を踏むブリーフ姿のおっさんが1人。

 傍らにいる少女が呆れた顔でおっさんを見つめている。

 

 運営からのメッセージを要約すると以下の通りだ

 

 ・現在、原因不明のバグでログアウトすることができない

 ・人工知能(AI)を搭載したNPC(村人など)と同様のゲーム判定がなされていること

 ・但し、AIを非搭載のNPC( モンスター)からはゲームプレイヤーと判定されていること

 ・ログアウトに絡まないプレイヤー設定なら運営側で変更可能であること

 ・現在、ログを解析中だが、ログが途中から存在していないこと

 

 以上だ。

 他にもこまごまと言い訳がましい説明が書かれているが読む気が起きない。

 

 普段ゲームをやっていない俺からは摩訶不思議な単語の羅列に見える。

 俺は目の前の少女に助けを求めることにした。

 

 少女は俺との会話に飽きたのか地面に座り込んで草を弄っていた。

 ただ、足を広げて座り込んでいるため、下着がモロ見えの状態だ。いくら非人間の少女とはいえ、これはくる。

 おっさんの息子さんが


「おや、出番ですかい? 親っさん」


 まるでそう言っているようかのように股間がふっくらしてくる。

 

「いかん、何を考えているんだ俺は。相手はゲームのキャラクターだぞ。しかも年齢は中学生か高校生の半ばくらいの少女相手にだ」

 

 俺は必死に視線を逸らす。だが、男の生理現象の前に理性など役に立つわけが無かった。必死に逸らそうとするが目の端に白いモノが映る。

 ますます息子がやる気を出してしまった。

 

 その時、少女から声が掛かった。


「で? 話しはもう済んだの?」


 少女が立ち上がった


「すまない。ほんの出来心なんだ。俺は妻もいる身でなんていう低俗なことを、反省している」

「何の話?」

「へ? いや、その、何でもない……です。ハイ」


 良かったー。ばれていなかった。それならもっと目に焼き付けておくんだった。心の底から後悔する

 

「話が無いならもう戻るけどいい?」

「あっ、待ってくれ。これを見てくれないか」

 

 いやらしい意味ではない。

 べつに俺の息子の成長具合を見てもらおうというわけではない。運営からのメッセージの意味を教えてもらいたかったのだ。


「何よこれ、運営(神様)のお告げじゃない」

「神様?」

「そ、私たちの神様。で、何々……」

 

 少女が食い入るように運営のメッセージを読む。そして、

 

「どういうことよこれ、意味が分からないんだけど」

「俺にもサッパリだ。掻い摘んで説明してくれ」

「説明も何も書いてある通りよ」

「ゲームの専用用語はサッパリだ」


 胸を張るおっさん。無駄にムダ毛の手入れは万全だった。


「だから説明も何も、あなたゲームの世界に入っちゃったのよ!」

「VRMMOをやっているんだからゲームの世界に入り込むのは当然だろ」

「そういう意味じゃなくて、本当にゲームの住人になったって意味で、この世界に入っちゃったのよ!」

「? 意味がわからないぞ。説明してくれ」

「説明も何もそのまんまよ!」

「ハァ? どういうことだよそれ!」

「私に言わないでよ! 神様に連絡してみたらどうなのよ。あなたたちは神様と直接お話しできるんでしょ?」


 幼気な少女の肩を掴みブリーフ一枚で掴みかかるおっさん。現実に居たら即逮捕ものだ。

 

「それもそうか、運営と直接話しをすればいいのか」


 どういうわけか、運営と話をするという選択肢が浮かばなかった。

 早速、ウィンドウを開いてメニューからヘルプを呼び出す。

 

 その操作を興味津々で少女は見つめていた。

 

「ん? どうした」

「んーん、神様と直接お話しする人間って初めて見るからさ、興味が湧いてね」

「あ、そうなんだ」


 俺は少女の視線を無視して操作を続ける。そして俺はメニューから運営に直接連絡する項目を開いた。

 

 プルルル……

 

「今どき、コール音ってなんだよ」


 プルルル……

 

「おい、さっさと出ろよ」


 プルルル

 

「まだかよ」


プルルル


「もしかして繋がらない?」


 ガチャッ。運営との会話すらできないんではないかと不安が募った直後、コール音から通話状態になった。

 

「もしもし、渡辺裕介と申します。担当の方をお願いしたいのですが」


 怒りにこぶしが震えていようが、社会人の癖で丁寧な言葉が口から自然と出てしまう。

 

「フリーダイヤルでお繋ぎします。音声ガイダンスに従って――」


「フリーダイヤルってなんだよ?!」


 俺はウィンドウにツッコみを入れ、イライラから近場にあった野草をむしる。

 

『野草をゲットしました』とポップアップが何度も出て鬱陶しい。


 俺は辛抱強く我慢してオペレータに繋がるのを待った。

 

「はい、これより担当の者にお繋ぎしますので、もう少々お待ちください」


 ブチブチ。手に届く範囲の野草を全てむしり終えてしまった。

 アイテム欄の中身は使いようのない野草でぎっしりとしていた。

 

「はい、こちら運営チームのサイトウと申します」


 俺はすぅーと息を吸い、そして怒鳴った。ただでさえ意味の分からない現状に加えて、電話のたらい回し。クレーマーの気持ちが若干分かる気がした。


「渡辺裕介と申します! どうなってんだよ、このゲームは。いつになったら俺は現実の世界に戻れるんですか!」


 俺は感情と理性がごちゃ混ぜになった言葉遣いで荒々しく捲し立てた。


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