知らない天井
お待たせしました。
続きのお話です。
「なぜこうなった・・・・・・」
メラニーが呟いた。
「なんででしょうね?」
メラニーの後ろを歩くアトラが呟く。
「駄乳神のせいじゃろ」
次いでアトラの後ろを歩くルーシが呟く。
一行は今、古城の中にいる。
「私のせいなんですか?」
アトラが言った。
「十中八九お前のせいに決まってんだろぉー!」
薄暗い廊下に響き渡るメラニーの声。
「お前が人間達の話を聞いたからこんな事になったんだろぉー!!」
メラニーの叫び声が廊下に響いた。
村に着いた一行は、メラニーが助けた人間がいる宿屋に行き、助けた者達からの礼を言われた後、村人達からの困り事を聞いてしまい、傷が癒えぬ間に行こうとした為、メラニー達が行く事になった。
「しかし・・・・・・数百年前の城というのはやはり不気味ですね」
「長い歴史の中に埋もれて、今やその名前すら忘れされた英雄王の城という事だからな」
アトラの言葉にメラニーが答えた。
村人達の困り事とは、最近この城にモンスターが居ついてしまい、夜な夜なうめき声に悩まされていたという事だった。
実害が呻き声だけなので放置していても問題はないとメラニーは判断したが、アトラが行くと頑なに意見を曲げなかった事で行く事になったのだった。
「大方、どこぞのゾンビ系かアンデッド系のボスモンスターが迷い込んだとかいうのがオチじゃろ」
ルーの言葉をメラニーはすぐに否定した。
「それはないだろ。
その手のオチなら、実害が出て当然と考えるのが常識的だ」
「なら、傷ついて迷い込んで傷を癒してるという事では?」
アトラが間髪入れずに言ったがそれも否定されしまう。
「そもそも、その手の魔物なら、この城の中が静かすぎるのも問題だろうに・・・・・・」
それもそうかと納得する2人。
3人はしばらく無言で歩く・・・・・・そして定番の仕掛けに引っ掛かる。
「そこ、踏むなよ」
「えっ?」
カチッ!
それはアトラが踏んだ何かのスイッチ。
そして3人はバラバラになった。
「・・・・・・知らない天井だ・・・・・・」
仰向けになったメラニーの視線の先に見える天井を見て言った。
ツッコミはない。
アトラが踏んだスイッチは侵入者用のトラップか何かだろう。
踏んだ瞬間に3人はバラバラになり、メラニーはどこかの部屋のベッドの上に寝ていたのだ。
「さてと・・・・・・」
彼女はベッドから起き上がり、部屋を見渡す。
数百年経過してるのにベッドが使えるというのは劣化防止の魔法付与がされている・・・・・・
「そう考えると、中のほうも最低限の劣化で止まってる理由も納得できるが・・・・・・
あいつら気が付いてないだろうな・・・・・・きっと・・・・・・いや、絶対だな」
溜息を吐きながら部屋から出る。
「さてと・・・・・・あいつらはいいとして・・・・・・問題はあっちの人間達か・・・・・・」
手っ取り早く城を壊すという手もあるが・・・・・・色々と後処理が面倒そうだと思うメラニー。
実際、彼女の力はそれを実行できるし、最初に彼女が言ったように世界自体を壊す事も可能。
それをしないのはただ単に彼女がやっている仕事量からの逃避である。
なんせ彼女は神の中でも最高位である霊帝の帝位についてる。
仕事内容としては、書類整理などの事務的な事が多いが、その量は途方もない量である。
一日に2m以上に重なりあがった書類の山を2つ3つならばまだ仕事は軽いほうだろう。
多いとその書類の山は100を超える。
書類整理に、報告書の確認、決済処理だけならば、特に問題はないが、彼女を悩ますのは彼女の世界に住んでいる神々達だろう。
冒頭にアトラがゼウスの行動に触れたが、それはメラニーの世界にとっては日常茶飯事で、彼女はその日常的にトラブルが起きる事の処理まで担当してる。そして、さらに天帝、聖帝という彼女に対し嫌がらせという悪戯をする、最高位の2柱の神だ。
この悪戯というのが、水に塩を沢山入れて飲ますとか、大量のタバスコが入ってるミートソーススパゲティを食べさせるとかの子供の悪戯の感覚で、管理神の世界に干渉したり、今回みたいに霊帝を違う世界に飛ばすという事をやる。
(向こうで何かあればあの3人が対処してくれるだろうから大丈夫だろう)
「しかし・・・・・・あいつら・・・・・・迷い過ぎだろ・・・・・・」
部屋を出てから、メラニーは薄くした魔力をレーダーのようにして全員の位置を感知していた。
彼女が言った、あいつらとはアトラとルーの事である。
彼女が感知した場所、アトラは外の庭、ルーは地下深くにある地下牢と位置を特定し、古城の構造を頭の中でマッピングを終えた。
「マッピングはおわった・・・・・・あとはうめき声の正体だが・・・・・・」
メラニーは書斎になっている部屋のドアを開けた。
「考えても仕方ないか・・・・・・幽霊か亡霊かまだ時間はあるからゆっくりとするか・・・・・・」
書斎の壁に大きく描かれた仲睦まじい様子の王妃と王の絵を見ながら書斎を抜ける。
一方、ルーはというと・・・・・・
「あの駄乳神・・・・・・搾乳機で絞ってやる・・・・・・」
蟀谷に青筋を浮かべながら、そう言って薄暗い通路を魔力の灯りを頼りに進む。
「しまった・・・・・・ここも行き止まりじゃったか・・・・・・」
そう言って、来た道を戻り、新たな方向へと歩みを進める彼女であった。
そして、アトラはというと・・・・・・
「あれれぇ~・・・・・・先程まで、城の中に居たのに変ですねぇ~?」
見渡す限り垣根で作られた壁と壁の間の通路いた。
「これは迷路ってやつね・・・・・・」
彼女はそう呟いて、歩みを進めて行く。
そして・・・・・・日が暮れて、完全に夜になった。
ライトの魔法を使いながら、読んでいた本を閉じた彼女は呟いた。
「あいつら・・・・・・」
メラニーが眉間と蟀谷に青筋を浮かべて呟く。
アトラとルーの事である。
彼女達は数時間経ってもメラニーと合流できずにいた。
「方向音痴なのか? 方向音痴なんだな?」
迷ってるとか手間取ってるとかのレベルの話ではない。
アトラはこの世界の神であり、その気になれば、すぐにでもメラニーと合流できるはずである。
ルーに関しても同じである。
最悪、二人は置いていこう。
「亡霊ならそろそろ動きがあるか・・・・・・」
そう言って、魔力探知で場所を探り始める。
間取り的には玉座がある部屋と推測できる場所で反応があった。
「ふむ・・・・・・場所はわかったがあの2人を待つのは・・・・・・まぁ、いいか。
あいつが地獄から抜け出した理由はともかく、亡霊の正体もわかったが転生した理由は・・・・・・間違いなく、あの聖帝が一枚噛んでるな・・・・・・」
呟くと同時に、本を閉じて棚に戻すと、一瞬で姿を消して部屋を後にする。
「ここだな」
王の間の扉の前に着いた彼女はそう呟いて後、勢いよく扉を蹴り開ける。
衝撃で扉の蝶番が壊れて扉が吹き飛び、埃が舞うが、部屋の奥に亡霊がいる事を確信した彼女は口を開く。
「謀反を起こし、地獄に送られたにも関わらず、脱走し、この世界へ転生したとしても、恨みは忘れられないか、神農?」
メラニーを見つめ、神農と呼ばれた亡霊は声を上げた。
「霊帝っ!
本当に霊帝なのか!」
雄叫びとも取れない、言葉に少女は言い返す。
「叫ぶな、呼ぶな。
鬱陶しい、貴様は発情期か」
どこかのアニメで使われているセリフを言うメラニー。
「貴様のせいで我は・・・・・・我は・・・・・・」
神農の言葉に彼女が口を開く。
「私のせい? 違うっ! 自分のせいでしょ!
謀反を起こして失敗。
地獄送りにされて、脱走して、今度は伝説の力を借りて復讐するも失敗して、転生して、この世界の人間になり、武力が跋扈する世を治め王になり、平和な国を作り、功績を認められ英雄王と呼ばられるようになった。
その功績に免じて天寿を全うするならワンチャン、あんたを神に戻せる可能性もあった!
だけど、あんたはそれを棒に振った! 死の間際に取り戻した記憶と力で、あんたは神に近い亡霊となり、復活した。
次代に任せるべき治世を混沌に陥れた罪は重い! 同情も酌量も余地もない!
霊帝、メラニー・コリンが処断してあげる!」
彼女はそう言って、剣を抜き神農を睨みつけた。
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