第4話 空中戦~ドッグ・ファイト~
メラニーついに大地に立つが降り立った場所は魔王の城の近く!?
すぐさま状況判断で魔王と会う事を避けようと飛び去る霊帝に魔王の魔法が迫る
メランいやメラニーは大地に再び立った。
「あんのアマァッー!」
降り立った瞬間に出た言葉がこれである。
メラニーの前に禍々しい城が見える。
メラニーが降り立った場所は、魔王が住むと言われている城の目の前である。
空には暗雲が立ち込み、雷鳴と閃光が不規則に鳴り響く大地。
アトラからの事前説明でこの世界の主要な場所の把握はしていた。
「ハメやがったな・・・・・・」
位置情報が狂ったとかずれたとかの問題ではない。
そしてすぐに念話でアトラに連絡する。
『一回目は大丈夫だったんですが、二回目以降に位置がずれるように何者かが細工をしていました』
弁明なら聞くと言い、返ってきた答えがこれである。
『その何者かにはすでに見当がついているのでこれ以上の詮索はしない事。
アトラはシステムの修復・修正をすぐにしろ』
手の込んだ嫌がらせにしかならない悪戯の犯人をメラニーはすでに知っている。
そして、今回、自分が騒動を起こすであろう事も予期し、この世界に来る事を予見していたのも。
「帰ったら、聖帝と天帝の処罰だな・・・・・・とりあえず、あのクソガキには尻千叩きだが、聖帝は・・・・・・だめだ・・・・・・思いつかん」
普段は公人として、人前に出ては凛々しい姿しか見てないが、近しい者からすればそれはただ単に猫を被ってる状態で、人が嫌がる事、特に霊帝であるメラニーに対して、色々な悪戯を仕掛けてきたのだ。
『メラニー様はどうするのですか?』
『今はまだ、魔王と会う機会ではないだろう。ここから脱出する。
システムの修復・修正前に、先程の連中のフォローを頼む。いきなり目の前で人が消えたのだから、かなり動揺しているだろうし、対応中に呼び出すアトラが悪い』
会話の内容は端折っているが、ここが魔王が治めている地だという事、魔神が出現してから、この地だけ天候システムに異常が発生し、今のような状況になった事それで念話は終わった。
「さてと・・・・・・こんな不気味な場所は立ち去るに限りますね」
そう言って、浮遊魔法を発動させ空高く飛び上がり一条の光となり去った。
ちょうどその頃。
魔王城の正門の上にテラスでカラスの様に漆黒の翼をもち、ドラゴンの角らしき物がこめかみから生えた少女がメラニーがいる場所を見ていた。
「あやつが言っていた神とはアレじゃな・・・・・・こちらに来るかとも思うたが、機ではないと察したか・・・・・・それとも・・・・・・」
普通の人間では見えるはずもないメラニーの場所を少女は真っ直ぐ見つめていた。
「儂に怖気づいた・・・・・・という事はあるまい」
そう言って、メラニーが飛んでいく方向に目を向ける。
「御館様、あの者はどうしますか?」
少女のすぐ後ろに控えていた、メイド服を着た妙齢の女性が言った。
「そのまま・・・・・・いや、ちょいと興味が湧いた」
御館様と呼ばれた少女はそう言って、席から立ち上がる。
「お気をつけてください」
メイドがそう言って、会釈をして下がるのを見届けてから、少女は大きく深呼吸すると地面を思い切り蹴り、空へと舞い上がった。
ビュンッ!
メラニーの後方から赤い一閃が走った。
「っ!」
間一髪で避けるメラニーはすぐに空中停止し、振り向いた。
「超長距離からの魔法っ?」
彼女の視界に移る者はいない。だが、追撃のように五本の赤い閃光が見えた。
「ええい、誰かわからんが・・・・・・こうなれば!」
そう呟くと同時に瞬時に、閃光に向かって直進する。
ゴォッ!
と迫る赤い光をバレルロールで避ける。
「あいつか!」
メラニーの視界に魔王城から飛び立ったあの少女がいた。
「ほう、あれを避けるか。ならばこれはどうじゃ?」
少女の視界にもメラニーが入るのと同時に、少女の周りに無数の氷の礫を生成し、それをメラニーに向かって放つ。
「なっ!」
向かってくる礫に思わず声を上げるメラニーだが、少女の手を読んでるが如く、真上に進路変更する。
「甘いのぉっ!」
少女はそう言って、左手を真上に振り上げると礫がメラニーを追いかけるように真上に飛ぶ。
「ちぃっ・・・・・・やってくれる」
言葉を洩らすと同時にメラニーは自分の周囲に炎の球を無数に生成し、追ってくる氷の礫に一つ残らず当てる。
「さすがじゃなっ!」
少女はそう言って、今度は水と火と石の礫を生成する。
「でたらめすぎるっ!」
生成されたそれらの礫を見たメラニーが声を洩らす。
「お主もなっ!」
聞こえる距離ではないのに、メラニーの言葉を聞いた異形の少女はそう言って、礫を放つ。
「面倒よ!」
メラニーはそう言って、少女に向かって急降下する。
「たわけめっ!」
少女はすぐに迎撃態勢を取り、いつの間にか手にした剣を構え、メラニーに向かっていく。
その様子を見たメラニーも剣を抜き、少女と剣を交えるかという距離まで詰めた瞬間だった。
「!」
メラニーが少女の前で消えた。いや、急上昇したのだ。
「ふざけておるのか!・・・・・なっ!?」
上を見る少女がそう呟くと同時に、メラニーを追随していた無数の礫が彼女を襲った。
「自分の魔法の味はどう?」
火と水と石の礫が使用者本人にあたり、土色の煙を巻き起こす様子を見るメラニーはその煙の中から自分に向かって出てきた少女の剣を受ける。
「さすがの儂も今のは驚いたぞ。さすが神の中の神と言ったところじゃな!」
「面白い娘だな」
メラニーの正体を知っていると思われる言動をする少女に動揺すらしないメラニー。
彼、いや、彼女も目の前の少女に正体に気付く。
「貴様は魔王だな?」
「いかにも儂が魔王じゃ。神の王よ」
鍔迫り合いをしながら言葉を交わす二人の少女。
「ならばっ!」
キーンッ!
メラニーが力を込めて魔王と名乗った少女の剣を弾き、距離を取る。
「聞きたい事がいくつかあるが、魔王よ、人と共に歩む気はあるか?」
「個人的に人は好きじゃ。あやつら生み出した来たものはなんでも面白いからの。
それにの、稀に儂とほぼ互角の力を持つ者が現れるからの。
しかし、最近、困った事が起きての、儂の頭痛の種になっとるんじゃよ」
「魔神か」
「あらかた、あの駄乳神に聞いておるじゃろ。
儂の大切な仲間を無理矢理、引き抜いて行きおったわ」
アトラの事を駄乳神と呼ぶ少女に一理あると思ったメラニー。
自分が管理する世界が不測の事態に陥っていて、その解決策が異世界人の召喚では、どこの世界のゲームかと思う。
「確かにだらしらない胸だが、あれでも私の部下で優秀な部類に入るんだ。悪く言わないでくれ
それと、他者と手を取り合わぬ者がいきなり神頼みなんかするなー!」」
数千、数万といる管理神の中でもアトラは五指に入るほどその能力は高い。
天帝であるメラニーもそこは評価しているが、抜けている所があるのも事実。
「余程、神の世界は手が不足していると見えるな?
儂は魔王、魔王ルーシ・フェル・フォールエンジェじゃ!」
ルーシと名乗った少女はそう言って、自分の周りに今までの中で一番厚い魔力障壁を張る。
「神の王よ。小手調べはこのぐらいとして、本気での力比べじゃ!」
街一つが無くなるほどの濃密な魔力が魔力が集まる。
「魔力を練るのに時間がかかり過ぎ。
それなりに時間をかけるならこのぐらい練ってみせなさい!」
メラニーはそう言って、ルーシが纏う魔力よりも、濃密な魔力を一瞬で練る。
「どこまでもふざけた存在じゃな!」
「お互い様でしょ!」
お互いの魔法が完成し、放つ。
メラニーとルーシの魔法がぶつかり、光が二人を飲み込んだ。
「で、あなた達はこの世界を壊す気満々で魔法をバカバカ撃ちまくりで、責任を感じてるのですか?」
アトラの顔色は怒りに満ちていた。
おなじみの白い空間のアトラの部屋である。
何故か正座しているメラニーとルーシ。
「で、お前は何をしに来たのじゃ?」
「まさか説教するためじゃないだろうな?」
ルーシの言葉の後にメラニーが続く。
すでに召還されてから10時間以上、アトラの説教を聞かされ、うんざりしていたいた。
「先ほど、助けた人間達から、お礼がしたいと言われましたのでお迎えに来たら、ルーちゃんと戦闘になっていて、世界が滅びそうになったので介入した次第です」
メラニーとルーシの魔法がぶつかった瞬間、アトラが二人の魔法の威力を消し、この場所へと召還したのだ。が、二人にとってそれは関係がない事だった。
「ふ、だらしがない乳の割にはそやつが言うように使えるではないか」
ルーシが立ち上がり断崖絶壁とも表現できそうな程の胸を張る。
「いやいや、お前が言ったように上司に対し、長時間に渡って説教かますような無能神だからな・・・・・・いっそのことお前を管理神にしたほうが良いかもしれん」
と、メラニーも立ち上がり、特盛な胸を揺らす。
「・・・・・・ほほう、お主、この駄乳神よりも我が管理神に向いてるとな?」
「向いてるかどうかは知らない。戦闘での判断からすれば、良いセンスをしているから、戦いという事に関しては、そこの管理神よりは有能とみているが、まぁ、いきなりしかけるような輩には世界を任せる器も力もないな」
睨み合い火花を散らす二人。
「よくよく見れば、お主の胸はあそこの駄乳神以上ではないか?
地位が大きくなれば、胸もでかくなるのか?」
「僻むなよ。
好き好んでこんな胸になったわけではない。
お前のほうこそ、大きなお友達に受けがいいし、希少価値だろ」
「ちょ・・・・・・二人共、私の話を聞いてますか?」
アトラが嫌な汗を掻く。
『あぁんっ!?』
二人でアトラを睨みつけると、アトラはうひゃっと声を上げ、二人から顔を背けた。
「先刻の勝負の続きをここでするか?」
「構わない。
ここでなら少しは力をしても問題はないだろうからな」
「なんじゃと!
あれで本気じゃないじゃと? お主、本当に化け物か?!」
メラニーの言葉に驚くルーシ。
「本気だったよ。
全力を出したらこの世界どころか全ての世界が消えるからそれなりに加減はさせてもらった」
それでも1%未満の力しか出していないと呟くメラニーにルーシは背筋が凍る。
読んで頂きありがとうございました。