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ゲゼルシャフトの足跡

探索兵規則3:隊員の受験資格は23歳まで。受験は年度内に1回のみ受けられる事とする

呼吸を整え、武器の柄を握り直す。

右手にカトラス、左手に音振器(ピストル)

どちらも訓練兵に与えられる模擬刀、低威力品だが、今の俺にとっては大事な相棒だ。


この試験を終えれば一丁前に「探索兵」を名乗れる。

子供の頃からの夢が叶うのだ。ここまで来るのにだいぶ苦労した。だがあと少しなのだ。


「ふっ!」


吸い込んだ息を吐いて室内に突入する。

部屋の中央付近まで一気に駆け抜け、足元に向けて発砲。

トラップは無し。

索敵。

目的は赤い布の巻かれた丸太を見つけて持ち出す事。

目的達成までに「攻撃」を3回受けたら失格だ。

………敵、目標物ともに見当たらない。


大きく深呼吸して部屋の隅々に目をやればガラクタが積まれている。

「中か。」

摺り足でガラクタの山の1つに近寄る。

古い鎧や兜のようだ。

カトラスでその1つを突くと、やはり!

ガラクタの中から猛然と手甲が弾き出された。

避ける準備をしていたから良かったものの、3回も食らう前にノックアウトしてしまいそうな勢いだった。

「慎重にやらないとな。」

思わず浮かれていた気持ちを落ち着ける為に深呼吸。

現場では常に危険と隣り合わせ、少しの油断が文字通り命取りになるのだ。試験だからといって気を抜いてはいけない。


……

………

…………


あった。

4つ目か5つ目。

上下左右から鉈が襲ってくるガラクタ山の中に目標物は埋もれていた。

ピストルを仕舞って、丸太を抱える。

後は部屋から出るだけだ。

ルートは自分の足跡がある所、罠がない事が、確定、し、て

「あ、れ、?」




目を開けると、医務室で寝ていた。

状況が理解出来なかったが、傍に座っていた教官が取り出した鏡を見て、俺の全身から力が抜けた。

我ながら間の抜けた表情に、額に大きく書かれた3本線。

「結果聞きたい?」

「……結構です……」

「残念、規則なんで伝えるわ、不合格。状況としてはガス系のトラップにかかって昏睡した所を貪り食われた、って所かな。」

わざわざ言うなよ……分かってるよ。

起きているのもバカらしい。このまま不貞寝しよう。

「今回は惜しかったんだけどねぇ。詰めが甘かったよ。何回目だっけ?」

「6回。」

「あちゃー。まぁ、来年があるさ。そこでダメなら諦めな。」

気楽な声と椅子から立ち上がる音がした。


何かに挫折するというのは、つまりこういう事なんだろう。


立ち止まったらしい教官はきっちり追い討ちをかけてきた。

「あら、そういえば今幾つよ?」























「23」




「……えぇっと。何て言えばいいかな……うん、悪かったよ。おい、泣くな泣くな、泣くなってか吐くな⁉︎センセー!センセーいるかぁ!」



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