みんなが幸せと思えるように
私はこのクラスにいる人全てを幸せにしたい。他の人が不幸せだと自分の気分まで落ち込んでしまう。今はこのクラスにいるのが楽しい。クラスの全ての人と話した。と思っていたが、話してない人がいた。窓際の席の佐渡君である。
彼はいつも休み時間は外を見てボーっとしていて、移動教室も一人で行っている。友達がいないのだろう。なら私が友達になろう!
「ねぇねぇ!佐渡君は何が好きなの?」
私が友達になろうとする人にはまずこれを聞く。趣味が分からないと話しずらいと思うから。佐渡君はキョドりながらもゲームやアニメが好きと答えた。私はゲームはしないがアニメは見る方だ。なので、どんなアニメを見るかとかを聞いた。
それから、佐渡君にいろんなときに話しかけた。休み時間、教室に移動するまでの時間、班行動で時間が余ったときでも。その度に佐渡君はキョドった。人と話すのが苦手なのだろう。落ち込んでいたように見えたので励ますこともあった。
最近佐渡君がおかしい。一緒に移動教室に行こうと誘おうと、佐渡君の席を見ても、そこにはいなく、既に移動教室に行っている。廊下で見かけて、声を掛けようとすると、逃げるように去っていく。そんなに人と話すのが苦手なのだろうか。
そして、とうとう佐渡君が学校に来なくなった。
一体誰が、いつ、佐渡君をいじめたのだろう。いつも佐渡君と話しているとはいえ、下校のときとか一緒にいないときもある。その時にいじめられたのだろう。とにかく、クラスの一人が抜けたまま授業を受けるのは嫌だ。私は学校に行くように説得するため、佐渡君の家に行った。
佐渡君の家は赤崎町のマンションの205号室。階段を登ってると、ばったり佐渡君にあった。声をかけようとしたが、私を見るなり自分の部屋へ逃げるように走って行った。そして乱暴にドアを閉めた後、施錠の音が聞こえた。佐渡君が人間不信になるほどいじめた奴が許せなかった。私はドアの前に立ち、ありったけの説得をした。
「元気だして!誰にいじめられたの?あなたは一人じゃないの!私達で居心地のいいクラスにするよ!どうしてほしい?あなたがいないクラスなんて嫌!苦しいと思うから苦しいの!心の扉を開いて!」
思いつく限り励ました。J-POPの歌詞も言ってみた。しかし、佐渡君は出てこない。
「じゃあ私、佐渡君が学校行くっていうまで、ここを離れない!」
思いきった行動に出たけど、これしかないと思った。
結局佐渡君は出てこなかった。いつまでも待つつもりだったが、佐渡君のお母さんが帰ってきたので、諦めた。
「心配して来てくれたのね。ありがとう。あなたお名前は?うちの子にも伝えておくわ」
「ありがとうございます。2年2組の高橋紗良です」
しかし、佐渡君のお母さんは眉をひそめた。
「えっ…高橋さん?うちの子はクラスに高橋さんがいるから学校行きたくないって…」