リハビリ2
――なんでも聞こえる全知の力、というのはあまり面白いものではない。やる前から結果がわかっている勝負など、誰もやらない。それはたとえ、バケモノたる僕自身ですら同じことだ。
物心ついた時から僕の耳は6つあった。見た目だけならちょっと変わった奇形…だけど、実際はそんなもんじゃない。体の中身も僕は人間とは大違いだったし、そのことを僕は最初から知っていた。そして、それを受け入れてくれる人はまずいないことも。
そういう意味で、今の義父さんと義母さんにはとても感謝している。バケモノらしいことは何もしていないからだけど、でも僕を愛してくれる人達だ。
もちろん、本気を出したところを見られた日にはとんでもないことになる。何が起こるかを知ってしまうだけでも目の奥が熱くなる、くらいには。ああ、せめて身だけでなく心も怪物であれば、少しは楽な人生だったというのに。
「結局は、僕もヒトでしかないのさ。欲しいものは欲しいし、愛されれば幸せになれる。」
そして、愛することで救われる。