プロローグ
『まもなく、2d-mssp-45星系 惑星エアリム宇宙港に到着します』
AIのアナウンスを聞き、ゆっくりとベルトを外す。
椅子から離れると、飛竜種自慢の翼を動かし、
体をぶつけないように操舵室へ向かう。
昔はあちこちにぶつかる事が多かったが、
今となっては壁や手すり伝いに移動するより、
こうやって飛んだ方が空気のある船内ではずっとやりやすい。
簡略ながらも、実は気密性を備えている扉を開け、操舵室へ入る。
窓やメインモニタを見ると、既に惑星エアリムが見えていた。
『あと15分ほどです、自動操縦を解除、
通信を宇宙港からの管制に繋ぎます』
艦長らしく、三つあるクルーシートの
一番ゴチャゴチャと機械に囲まれた席に座る。
「こちらは、Z1238-スカイアーク、入港許可を求める」
「エアリム宇宙港管制、a-9ポートへの入港を許可する、
宙域の安全を確保し、入港されたし」
「スカイアーク、了解」
管制との通信を終えると、
右手で全方操舵桿を握る。
これは、前後左右上下、どの方向にも動き、
上も下も無い宇宙で、船の姿勢制御や、舵を取る。
そして、左手でスロットルを握る。
これは単純にエンジンの推力調整だ。
ただ、飛行機などとは違い、宇宙空間には抵抗がない。
エンジンを逆噴射させ、船を減速させたりする。
ようするに、噴射と、逆噴射の割合を、
このスロットルで調整する。
基本的な操縦は、この二つで事足りるようにはなっているが、
あくまで最低限である。
『艦長、今年こそ、新人をゲットしましょうね』
「もちろんだ」
一丁前に会話もできるこのAIは、
なかなか、面白みがある。
ただ、やはり、人手というものは欲しい。
明日は、連合船科大学の卒業生が
一斉に就活をするイベントがある。
それを狙って、エアリムに帰ってきたわけだ。
今年こそ、新人が就職してくれることを期待しながら、
宇宙港へと入港した。