思い出
ねえ、この坂道覚えてる……?
君が毎日笑ってた場所だよ……?
ずっと前、俺が小学生の時。
優と毎日のように帰った坂道。
そこで、こちらを見て笑いながら優はこう言った。
「私に勝ったら彼女にしてあげる!」
今ならすぐに遊び半分の嘘で言った事は分かったが、昔は判断能力がなかったので本気にしてしまった。
俺は一分一秒惜しまず特訓をして、優にどんどん近付いた。
そして六年生の頃ついに優を抜くことに成功した。
ただ勝ったのはいいが、特訓に無我夢中だった俺は優との約束の事を綺麗さっぱり忘れ、優が引っ越しするまで思い出すことはなかった。
今は覚えているだろうか。
そんな事を、学校までの坂道で思い出した。
子供の頃の事なので気が変わっていると言うこともあり得る。
それに、遊び半分と言うこともあるので、今そんな話を持ち出すと
「そんな事言ったっけ?」
で切り捨てられるであろう。
何故今になってこんな話を思い出したかと言うと、今歩いている坂道とすれ違った男女の小学生二人だ。
先ほどから男児の方が俺の方をちらちら見てくると言うことに気付いた。一人で帰っている俺に付き合っているのを自慢しているのだろう。
「ふざけるな小学生風情が」
と普通なら言ってしまうが今は別に気にならない。
あんな手も繋げない小学生カップルに、ご飯を食べさせた事のある自分が負けてないからだ。
多分、あの男児が食べさせようとすると一瞬で伸びてしまうだろう。
おっと大分話がずれたが結論から言うと、このまま友達でもいいんじゃないのか? と言うことだ。
長々な話に付き合わせた挙句、どうでもいい結論で申し訳ないが、今の俺じゃ何も答えが出せようにないのだ。
別に「彼女が欲しい」とかそんな意欲は無い。
つまり、今はそっとしておくのが最善だと俺は思う。
それが学校までのくだらない話から出した結果だ。
ただ、胸の奥底で何かがじんとしたのが少し気がかりだった。
ガララ。俺は図書室のスライドドアを開け、室内に入った。
クーラーの冷たい風が俺の体を包み込み、一瞬で俺に快楽を与えた。
「優……」
優は俺の方を向いて不思議そうに首を傾けた。
「ただいま……」
そう言うと優は満面の笑みを浮かべて首を縦に降った。
いや、今はこのままでいいような気がする。
優が俺のことをどう思っているかは関係無い。
一緒に居られるだけでも俺は幸せだから……
皆さんこんにちは! あるみゃです!
前回のお詫びに連続で投稿しました!
ほとんど前回に言ってしまって言うことはありませんが……
ここまで見てくれた方々、ありがとうございました!
これからも頑張ります!
(よし! 言えたぞ)