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青空のパレット  作者: あるみゃ
悲しみの青
4/29

絶望を経験した少女

過去は少女の心の中に

絶望として残る……

「アリサ! また負けたのか!」

父さんの怒鳴り声が部屋中を響かせる。

十歳の頃から何故かコンクールで毎回三位を取る私。

それを毎回、また負けたのかと飽きるほど怒鳴る父親。

一位には毎回の如く、柏木優と言う名前があった。

この存在を抜くことが出来ない。

そのせいで毎回、父親は怒鳴り続ける。

母は毎回、父に反論してくれ、私を守ってくれた。

しかし、怒鳴るぐらいならまだ良かった……

一年後。私が十一歳の誕生日に母が亡くなった。

死因は急性脳疾患だった。

思わぬ事件で私は絶望し、絵でさえも手を抜いてしまった。

そのせいで、私の順位はどんどん下がる一方だった。

父親は怒鳴りを通り越して、私に暴力までも加えるようになった。

それも何とか耐えることが出来たのだ。

ある日、父親は大勢の男を連れて家に帰ってきた。

どうしたのかと聞くと。

男たちは無言で私の手を掴み、乱暴に私の服を破り始めた。

男たちは私の手を縄で拘束し、目隠しをして、身動きを取れない状態にしたのだ。

父親のDVは何もかもを通り越し、性暴力へと発展して行ったのだ。

私はそのまま、半年間の性暴力を受けたのだった。

半年後の夜。男たちが寝静まった頃だった。

縄の手入れを一切してなかったのか、縛っていた縄は緩くなり簡単に解けた。

この家から逃げ出したい一心で私は外に向かって、無我夢中で走り出した。

しかし、玄関扉の前で不覚にも男の一人に捕まってしまい、元に戻されてしまった。

そのまま一年。暗い部屋で性暴力を受け続けた。

もう感覚さえも失い、絶望しか見えなくなった頃に、家で雇っていたメイドが私を見つけて警察に通報した。

それが、カトレアだった。

男たちは全員逮捕され、父親は無期懲役の刑を下された。

カトレアは私にとって命の恩人であり、私をあそこから救い出してくれた大事な人だった。

それでも、心の傷は癒えることはなく、絵にまで影響が出てしまった。

灰色という心の色がどうしても絵を浸色してしまうのだ。

それが、絶望を経験した者の色だと自分でも分かってしまうぐらいに––––––––


「お嬢様……それは、お母様の形見ですか……?」

カトレアは私が持っているブレスレットに目をやった。

「そうよ……この色が、私の心を癒すたった一つの宝物なの……」

明るい水色のブレスレットは清流のような輝きを見せ、私の心を水色に染めてくれた。




学校の放課後、俺と優は学校の図書室に居た。

理由は、優の付き添いだった。

俺も面白い本がないかと、図書室中を歩き回って居た。

–––ふと、図書室に置いてあった一つの新聞記事が目に止まった。

『ヘルベルト財閥。娘を性奴隷に』

その新聞は半年前の記事だった。

そう。半年前、この出来事が世界中を震撼させたのだ。

ヘルベルト財閥は世界中にあるチェーン店を経営していて、一番儲かる財閥だった。

その社長のクリス・ヘルベルトは娘を性奴隷にしていた。

娘の名は、アリサ・ヘルベルト。

絵の才に恵まれ、三回目のコンクールまでは、俺たちを圧倒的に抜き、一位を勝ち誇っていた。

クリスの動機は、一位から順位が落ちたかららしい。

ヘルベルト財閥はチェーン店と共に滅亡。クリスは無期懲役を受けたものの、一ヶ月後に地下牢で自殺。

今はヘルベルトと名の付く者はアリサしか残っていない。

それでもアリサは懸命に頑張りコンクールでは三位にまで浮上した。

一度だけアリサの絵を見たことがあるが、圧倒的な絵の上手さに一位を取られてしまうのではと思うほどだった。しかし、審査の結果は三位。

理由は絵自体は綺麗なのだが、全体が灰色で一色だったのだ。

–––––––待てよ……灰色?

頭の中を今日の出来事がよぎる。

今日ぶつかった少女の頬と手に灰色の絵の具が付いていた。

–––––––まさかっ!

「優、ごめん! ちょっと用事思い出したから、先に帰るね!」

「……用事?」

「そうだ。大事な用事だ」

「うん。分かった。行ってらっしゃい」

少し迷った優は、その後に笑顔でそう言った。

「ありがとう。行ってくる!」

図書館を飛び出し、俺は廊下を思い切り走る。

校門を抜け住宅街に入った所で、目的の少女は女性と共に居た。

「あんたがアリサ・ヘルベルトだな……」

アリサは俺の方を向き、静かに頷いた。

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