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青空のパレット  作者: あるみゃ
ラストサマー
27/29

小さな少女の小さな絆

あたしには友達がいる––––

仲間がいるんだ!

「海が静かだ……」

  師匠が亡くなって翌年。俺は一人水平線の向こうを眺めていた。

  波も立たない海は太陽の光を反射し、眩い光を放っていた。

「君もお願い事?」

  ふと、背後から聞いた事がない少女の声が耳に響いた。

  振り返るとそこには真っ白なワンピースを身に纏った少女が立っていた。

  腰まである長い茶髪が海風になびく。

「……君は?」

「私もお願い事。大好きな人に会えますようにって」

「大好きな……人?」

「うん……事故で……失くしちゃったんだ……」

  少女は悲しそうな顔で水平線の向こうを見つめた。

「でもこの青空見てたらそんな願いでも叶うような気がしてさ」

「青……空……」

  俺は少女が見上げる青空を見上げた。

  雲一つ無い吸い込まれそうな青空がまるで海のように広がっていた。

「例えるならさ……『海は誰よりも心が広い』ってね」

  少女は笑顔でそう言い残すと、町の方へ歩き去って行った。

「『海は誰よりも心が広い』か……」

  俺はそう呟くと大きく息を吸い込んだ。

「父さんっ! いえ、師匠! 見ていて下さいっ!」

  海に向かって叫んだ後、俺は駅に向かって走った。

  小学校六年の夏のコンクール前。俺はに大量の水色を入れ青空色一色だけ入ったパレットで、キャンバスに青空を描いた。

  海を見つめる純白のワンピースに身を包んだ少女と吸い込まれる様な広い青空。

  その絵は最優秀になった。




  車に揺られながら山道を走る俺たち。

「……寝てたの?」

  隣に座る木内は目を覚ました俺の顔を除きながら聞いた。

「ああ。少し疲れてたからな」

  さすがにあそこまで海でしゃぐと眠くなくても疲れで眠くなる。

「もしかして夢でも見てた?」

「何でだ?」

「いや、気持ちよさそうに寝てたからさ」

「まあ。半々だ」

  俺は木内に適当に返事し外の茂みを見た。

  今思えばあの少女は誰だったのだろうか。

「蒼太。どうした? 浮かない顔して」

  一つ前の座席に座っていた翔は心配そうな顔で俺に話しかける。

「ああ。ちょっと車酔いだ」

  当然、車酔いなどしてないのだが、そう言うしか無かった。自分でも分からないのだ。

「吐くなよ?」

「吐かねえよっ!」

  ただ翔のボケにはツッコミを入れざるを得ない。

「ここら辺でいいだろう」

  咲夜さんはそう呟くと、河原に車を止めた。

  そう言えば紹介が遅れていたが、車を運転していたのは成松のお兄さんで成松 咲夜さんだ。

  身長の高い好青年で、旅行会社で働いてるらしい。趣味は言わずしてもわかるキャンプだ。

「さて野郎共! テント張るぞっ!」

  咲夜さんは気合を入れトランクから折り畳まれたテントを取り出す。

「「おー」」

  俺と翔は疲れで元気が出なかったのかやる気のない声でテントを持った。

「これで良し! っと」

  立派なテントが河原の砂利の上に綺麗に張られた。

「はい。次はこれ頼んだ」

  テントを張った俺に咲夜さんは釣竿を渡した。

「これは?」

  俺は渡された釣竿を見ながら恐る恐る聞いた。

「蒼太は釣り。翔は俺と料理だっ!」

  何で翔だけ料理なんだっ! と言いたかったが俺は料理が出来なかったんだ。

「はい……分かりました……」

  と言うわけで川に足を入れ釣りに入った。

  すると木内が川のほとりにため息を吐きながら座るのが見えた。

「どうしたんだ? 木内」

  俺は水面の釣り針を見ながら木内に話しかけた。

「あんたか……居たんだ……」

  いや。気付けよ。

「そう言えば海で水着着てなかったな」

「……忘れたって言ったでしょ?」

  木内は呟きながら川に向かって石を投げる。

「そうか? さっきトランクの中の木内のバッグの横に水着入れがあったんだけどなぁ」

「あ、あんたどこに目つけてんのよっ!」

  あ、木内のだったんだ……

「どうした? どうせ来たんならみんなと泳げばいいのに」

  あ、掛かったっ!

  その瞬間、釣り竿は重くなり何かに引っ張られる。

「あんたに何が分かるっていうのよっ!」

  木内の大声でみんなの声が静まり、釣り竿が軽くなった。

「ごめん……少しだけ一人にして欲しい……」

  木内はそう言い残すとみんなに見守られる中、川のほとりを歩き何処かへ行ってしまった。

「木内……」



「木内ちゃん……帰ってこないね……」

  夜になり夕食の仕度が出来たが、木内は帰ってこなかった。

「俺、少し見てくるよ!」

  俺は木内の歩いた道を走る。

「俺もっ!」

  翔も俺の背後を走り付いてきた。

  無事だといいんだが……

「お前、由奈に何聞いたんだ?」

  辺りを見渡しながら木内を探す俺に翔は話しかけてきた。

「別に大したことじゃない……」

「大した事じゃないのに由奈はあんなに怒らねえよ」

  さすがにずっと一緒にいる翔にはお見通しか。

「聞いたんだ。今日、木内が水着を着なかった理由……」

「やっぱりか……」

  翔はそう呟きながら俯いた。

「何か知ってるのか?」

「ああ。でもそれは由奈に直接聞いてくれ。俺からは言えない……」

「分かった……」

「今は由奈を探す事が先決だ。俺は向こうを探すからお前は向こう頼む!」

  翔は分かれ道のもう一方を指差した。

「ああ!」

  俺はその方向を走った。


「何……やってるんだ……」

  見つけたのは森全体が見渡せそうな崖の上だった。

  木内はうずくまりながら崖の方を見ていた。

「みんな心配してるぞ。早く帰ろう」

  息を切らしながら木内に近寄る。

  だが何も喋らず、それどころか振り向きもせずにただ崖の方を見つめていた。

「なあ。木内……本当はみんなと海で遊びたいんだろ?」

  それでも木内は口を開けない。

「じゃないと水着なんて持って来ねえよ」

  木内の横に座り、俺も崖を見つめた。

「昔の事なんだけどさ……」

  長い沈黙が続き、木内の方から口を開いた。

「昔、あたしと付き合った先輩がいて。凄く憧れてた先輩だったから嬉しかったんだ……」

  木内は震えた声で話し出した。

「でも日が経つにつれて暴力を振るうようになって……どんどんエスカレートして行った……」

  木内は左腕の二の腕まで袖を捲り、俺に見せた。

  左腕には大量の痣が生々しく残っていた。

「心配されたくなかったんだ……みんなに心配させちゃったら折角のキャンプが台無しになっちゃうから……」

  木内の目から溢れ出る大量の涙が、頬を伝う。

「いいんだよ……心配させても……」

「……え?」

  俺はすっかり元気を無くしたアホ毛の乗る頭を撫でた。

「友達。だろ?」

  俺は笑いながら木内に一言そう言った。

  すると木内は俺に抱きつき大声で泣いた。

「みんなと遊んでいいの?」

「ああ」

「みんなと泳いでもいいの?」

「ああ。いいんだよ」

  だが待てよ……痣の後は女の子として恥ずかしいか……

「そうだな。明日水着じゃ無くて着衣水泳でいいんじゃないか?」

「え? でも……」

  木内は不思議そうな顔で俺を見る。

「危なくなったら俺と翔が助けてやる」

「……本当?」

「ああ。いいだろ? 翔」

  俺は木の陰に隠れる翔に話しかけた。

「うおっ! お前よく分かったな俺がここに居るって」

  翔はアホみたいな声を発しながら俺たちの前に現れた。

「お前、木内が話し出した時にはもうそこにいただろ……」

  ずっと後ろの方で木の葉がこすれる音が聞こえていた。

「翔……あんたまさか。あたしが泣くとこ見てたの?」

  木内は青ざめた顔で翔を見る。

「うん。もう隅から隅まで」

  馬鹿野郎。

「忘れろっ! 永遠に記憶吹っ飛べっ!」

「ちょっ! 無理だって!」

「じゃあ存在自体消えろぉぉぉぉぉっ!」

「何でぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

  木内は顔を赤くさせて恐ろしい事を発しながら翔を殴る。

「元気が戻って何よりだ」

  俺は呆れ返った顔で、ため息を吐きながら首を横に振った。

  元気になってなによりだ。

 

この頃……買ったゲームが面白すぎて……小説……サボり過ぎたとです……

こんにちは! あるまです!

ゲ、ゲームなんかじゃないよ! ただ勉強が忙しかっただけだもん!

嘘です。勉強なんて一切してません。

ずっと友達とオンラインでゲームしてました。

その時通話アプリを使っていて、友達に言われた言葉が––––

「お前、小説いいのか?」

の一言でした。

その瞬間、自分の顔にシグマの記号が付きました。



今話を読んでいただきありがとうございました!

ずっとサボってて誠に申し訳ありませんでした!

これから先こう言った事が多々あるかもしれないのですが、あるみゃをよろしくお願いします!


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