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青空のパレット  作者: あるみゃ
悲しみの青
2/29

再開

初めて出会ったその日から俺はあいつを不思議に思った。

初めて出会ったその日からずっと白は青に染まっていた。

初めて出会ったその時からあなたが好きになった。

それは青空と雲の話。

「ん……うーん……」

  目覚ましの金属音と窓から差し込む陽光に眩み俺は布団に潜り込む。

  ゴールデンウィーク最終日。最後の休みを楽しむために二度寝する。

  カチカチカチ。秒針の音が俺の心を騒がせた。

「言いわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

  デジタル時計にはでかでかと八時と書かれ、端っこの方には五月七日と書かれていた。

  ゴールデンウィークもう終わってるじゃないかっ!

「あ、蒼太。おはよう!」

「おはようおばさん!」

  リビングには朝食を取るおばさんが居た。

  俺を育ててくれた母親。今はおばさんと呼んでいる。

「行ってきまーす!」

  俺は急いで制服に着替えた後、パンを咥え、玄関から飛び出した。

  まあ。学校まで距離があるのでここで自己紹介。

  初めまして。桜 蒼太です。

  記憶もあるか分からない頃に親に捨てられた俺を師匠に拾われ、今は絵を描いてます。

  まあ。師匠の養子です。

  ちなみに師匠とは世界的に有名な画家だったけど、俺が小学生の頃に急性の心臓麻痺により今はこの世に居ません。

「桜くーん! おはよー!」

  遠くにある交差点の信号の前で、俺に大きく手を振る眼鏡を掛けた少女の姿が見えた。

「陽菜っ! 遅刻だったら待たなくてもいいのに!」

  俺は息を切らしながら陽菜に話しかける。

「まあ。約束だからねぇ」

  この腰まであるふわふわの桃毛が特徴の眼鏡少女は小鳥遊 陽菜。中学からの馴染みで、約束とは––––まあ色々だ。

「時間がまずい! 走るぞっ!」

  時計台は八時十五分と表示され、俺は冷や汗を出しながら走り出す。

「地獄の底まで付いて行くよぉ!」

  そこまでは行きません。


  山の中にひっそりと佇む高校。俺はそこに通っている。

  私立青空高等学校。芸術科と普通科の二つに分かれる学校だ。

  ちなみに俺はもちろん芸術科だ。

  担任がはずれだったが––––

「ほうほう。俺の授業の時に遅刻して来るとはいい度胸だなぁ」

  担任教師の栗須 達也。バリバリの体育教師で保健の授業も担当している。

  ちなみに先程はこの教師のせいで正門が綺麗に閉じられ、よじ登る羽目になった。

「いやぁ。道路が渋滞しちゃって」

  俺は頭の後ろに手をやり、笑いながらそう答えた。

  その瞬間、先生の後ろでメラメラと何かが燃えていた。

「あはは……」

「桜。暑いのなら廊下が涼しいぞ?」

「……はい」

  とまあ、こんな感じで廊下に立たされました。

  なんで俺だけ……


  俺が廊下に出てしばらくして、栗須が教室から出てきた。

「あれ? ホームルームもう終わったんですか?」

  まだ午前八時四十分。時間的にまだホームルーム最中だ。まさかっ!

「先生! 俺を迎えに––––」

「な訳あるか。これから転校生を迎えに行くんだよ」

  今、絶対飽きられた……

「転校生? こんな時期にですか?」

  俺の心臓の鼓動が期待で早くなる。

「ああ。まあ特別な転校らしいからな」

「特別な転校?」

  それって転校生と恋に落ちるタイプのシチュエーションかも。転校生の席が俺の隣でぇ……って……

  廊下だったの忘れてた……

「まあお前には一生転機が訪れないぞ」

  栗須はそう言い残し、背を向け職員室へと笑いながら歩く。

「先生の馬鹿野郎ぉ!」

  俺は栗須の後ろ姿にそう叫んだ。

「ははは! 何度でも言うがいい!」

  あれでも教師か……?


  そのあと、しばらくして 栗須が女子生徒を引き連れて戻ってきた。

「先生……まだですか……?」

  どうせこんな所にいても転校生との恋はもう終わりですよーだ。

  それに立ちすぎて足が悲鳴をあげてきた。

「一時限目が始まるまでお前はそこだ」

  そう言い残し、栗須は教室へと入っていった。

  その時、溜め息を吐く俺を転校生の少女は横目で見た。

「––––ん?」

  まさか、俺に気があるのか……?

  ……ん……違う。

  あの白髪と顔……どこかで……いや……まさかな……

「では先程言った転校生を紹介する」

  栗須の声と生徒のざわつきが教室の中から聞こえてくる。

「ではみんなに自己紹介を言ってくれ」

  俺は教室の戸に耳をすませた。

「初めまして––––私の名前は––––」


「柏木 優です」


  俺はその場で目を丸くした。

  今、この教室の中に優がいる。東京に行ったはずの優が––––

「優っ!」

  体が居ても立っても居られなくなったのか、気付いた時には教室で優を抱きしめていた。

「優……会いたかった……」

  俺は泣きながら優を強く抱きしめる。

「蒼太……離れて……」

  その瞬間、優に体を引き剥がされた。

「…………優?」

  俺がそう聞くと優は目を逸らした。

  その時見たくなかった物が目に映ってしまった。

「お前……右手どうしたんだよ……」

  優が着る制服の右袖に右腕が通ってなかったのだ。

「先生……私の席はどこですか?」

  優は俺の言葉を無視し、動揺する栗須に導かれるまま、自分の席へと移動した。

「優っ!」

「桜……今は止めておけ……」

  栗須は俺の耳でそう囁いた。

「じゃあ教科書の十二ページを––––」


  それでも俺は優が気になって仕方なかった。

  授業中も隣の席の優を見ては目を逸らされ、休み時間に話を聞こうと思ったが、話しかけた時にはすでに優は居なかった。


  そして、とうとう一言も話せないまま放課後がやってきてしまった。

「優っ!」

  俺はホームルームが終わった瞬間。立ち上がり、足早に教室から去ろうとした優の左腕を掴んだ。

「教えて欲しい。向こうで何があったんだ?」

  俺は真剣な眼差しで優を見た。

「蒼太……痛いよ……」

「あ、ごめん……」

  必死だったのかいつの間にか強く握っていた。

「ここじゃ話しにくいから……帰りでいい?」

  優は周りを気にしながら小さくそう言った。

  気付かなかったが、教室に残る生徒のほとんどが俺たちを気にして見ていた。

「ああ。いいよ……」

  俺たちはカバンを持ち、足早に教室から去った。



「事故にあったんだ……」

  帰り道の坂道で優はそう切り出した。

「事故?」

「うん……中学三年の卒業前に信号無視で突っ込んできたダンプに衝突して……」

  その言葉に俺の心がざわついた。

「でも大丈夫だよ……私には左手があるから……また蒼太と競えるね」

  優は笑った。しかしその笑みは少しだけ曇っていた。

  優の左手は師匠に拾われた時からペンさえ持つことができなかった。

「やめろよ……昔はそうだったかもしれないけど今は違うんだよ! 競うなんてどうでもいいんだ! もしお前がここから先絵が描けないなら俺がお前の右手になる!」

「蒼太……」

  俺は俯く優の左手を握った。

「だからさ……これからはずっと離れないでくれ」

  優は今まで見たこともない崩れた顔で泣いた。

「うん……約束する……絶対……」

  優は涙を拭いながらそう答えた。



  今度はこの手を絶対に話さない。俺はこの青空に強く誓った。




「完璧の仕上がりね。私って天才かも」

  その頃、あるアトリエでは一人の少女がキャンバスに絵を描いていた。

「カトレア。新しいキャンバスを持って来てちょうだい」

「かしこまりました。アリサお嬢様」

  少女の言葉で、カトレアと呼ばれたメイド姿の女性は、隅にあったキャンバスを少女の前に置いた。

「カトレア。どう? この絵。凄いとは思わない?」

  アリサはさっき描いた絵をカトレアに見せつけた。

「コンクールは完璧だと思います」

  その絵は全て灰色一色の海岸の絵だった。

  その絵をカトレアはいつも通りに褒める。

  絵自体は綺麗なのだが、一色なので見ていても何も楽しくはなかった。

「お嬢様、何をなさっているのですか?」

  いつもはそのまま壁に立て掛け、飾るはずの絵をアリサはゴミ袋に放り込んだ。

「お世辞だと言うことは分かってる。こんな絵じゃあの子には勝てないわ。やり直しね」

  アリサは台にキャンバスを乗せ、再度絵を書き始めた。

「カトレア。何か飲み物を持って来てちょうだい」

「はい! かしこまりました。お嬢様」

  カトレアはニコッと笑ってそう答えた。

「今度は絶対に勝つんだから。見てなさい、柏木 優……」


皆さんこんにちは! あるみゃです!

勉強が忙しいので理解に乏しい話を最初からリニューアルして回ってます!

良ければ見ていってください。


申し訳ありませんが次話はもうしばらくお待ちください。


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